読書

アリス「(ラフィー君、また寝転がってるわ。)あれ?カイル君。何を読んでいるの?」

カイル「かちかちやま〜。アリスちゃんも、読む?」

アリス「かちかちやま、ね…。」

カイル「うん。悪い狸さんがねぇ、おばあさんを殺しちゃうの。それから、兎さんに復讐されて、泥のお船に乗って、お船が沈んじゃって、ごめんなさいするの。」

アリス「ごめんなさい?」

カイル「そうだよ。ごめんなさい、もうしません、て言うの。」

アリス「ああ〜ら、おばあさんを殺っておいて、ごめんですめば警察はいりませんわよね〜。子供相手の絵本だからって、そのへんのところをぼかしちゃいけませんわ〜。断固追求しませんとね〜。」

カイル「わーん、なんかアリスちゃん、こわいよ〜。」

ラフィエル「待てよアリス。その前に、狸はばあさんに狸汁にされそうになっていたのだ。正当防衛が成り立つかもしれんな。おまけにじいさんから話を聞いて、変な義侠心にかられた兎は、頼まれもしないのに一人で盛り上がって復讐に走るんだろ。結局のところ狸を見殺しにするのだから、そっちのほうが問題だろうが。」

カイル「あーん、ラフィー君まで〜。」

アリス「ところで、鏡夜君はどこ?また夜を駆け抜けてるの?」

ラフィエル「鏡夜ならさっき、静かなところで本を読むと言っていたぞ。」

アリス「そう。」

アリス「あら?何かしら、これ。」

 ギギ〜ッ。

アリス「キャーッ!」

鏡夜「なんだ、君か。騒々しいな。」

アリス「失礼ですわね。そんなところで何していらっしゃるの?」

鏡夜「見ればわかるだろ?読書だ。」

アリス「そ、そんな暗いところで!目が悪くなりますわよ。」

鏡夜「だからこその眼鏡じゃないか。」

アリス「はいはい、それで、何の本ですの?」

鏡夜「京極夏彦の『小袖の手』だ。」

アリス「へえぇ。あの、みっしり、な作家ですわね。掌篇妖怪草紙、巻の二、小袖の手。あら、これ非売品ですの?」

鏡夜「ああ。だからといって、ヤフオクなどで売りに出したりしないでくれたまえ。」

アリス「そんなことしません!!」

鏡夜「ふっ。まあいい、よければ貸してもいいよ。」

アリス「お借りしますわ。」

鏡夜「ああ。利子はトイチだ。」

アリス「は?」

鏡夜「冗談だよ。」

アリス「まったく、鏡夜君ときたら…(ぶつぶつ。)。さて、と。探偵さん、出てくるかしら…。」

 (残念、アリスちゃん。探偵さんも京極堂も出てこんかったよ。)

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