Troublesome Tornado
オトコノコ・オンナノコ written by 純
壊れた城を修復すると、ハウルとカルシファーは二人揃って「ああ疲れた!」と言って、互いに見やると大きな声を出して笑った。
ソフィーは少し離れたところでこの様子を眺めていたが、立ち上がると今度は私の番ね、と腕まくりをした。
「それにしても、今度の城は随分とコンパクトなんですね!お師匠さま。」
マルクルはヒンを抱きかかえて大人しくしていたが、ハウルの「もう自由に歩き回っていいよ」という笑顔に、ヒンを床に降ろしながら言った。
「そうだね。必要最低限しか部屋はないよ。この家族みんなが集まるダイニング兼リビングと、マルクルの部屋におばあちゃんの部屋。物置に僕らの寝室。あとは家族が増える時に考えればいいかなって。」
さらっと言って、内心どきどきしながらソフィーを見つめたが、ソフィーは紅茶の用意に忙しく「疲れてるのにごめんね?」とカルシファーに気遣わしげな視線を送っていた。
ハウルががっくりと肩を落とすのに気づかずに、マルクルは怪訝そうにハウルを見上げ、子どもらしくはっきりと尋ねた。
「なんでソフィーの部屋がないの?」
あんまり大きな声だったので、言った本人と荒れ地の魔女以外は、思わずぴたっと時間が止ったかのように動きを止めた。
今度は流石にソフィーの耳にもしっかりと届いたらしい。
「?」
ソフィーは不思議そうに首を傾げ、カルシファーに「なんのこと?」と訊ねた。
「さあな?なんだろう?」
カルシファーはハウルが射るような視線を向けたことに、薪の下で思わずにやついた。
「それは、まあ、後でわかるよ。うん。」
ハウルはなんだか告げるタイミングを逃してしまって、しどろもどろになってリビングから続く広いテラスを眺めた。
「折角だから、今日はこのテラスでお茶にしようよ。こんな風によい天気には外で食事したり、お茶したりしたいからね!」
何か言いたそうなソフィーにとびきりの笑顔を向けると、ハウルはマルクルを抱き上げた。
「さあ、明日から、マルクルにはどんな魔法を教えようか?マルクル、何か希望はある?」
「わあ!ホント!?」
マルクルは嬉しくて思わずハウルに抱きつくと、瞳に涙を溜めて俯いた。
「・・・僕、ここに居ていいの?ハウルさんの新しい城に居ても?」
ハウルは不意に漏らしたマルクルの言葉に、一瞬驚いて、ぽんぽんと背中を撫でるように叩くと額と額をぶつけて見つめた。
「マルクルは・・・ここに居るのは、みんな僕の家族だよ?」
その言葉は、そこに居たみんなを温かな気持ちで満たしていった。
ソフィーはそっと涙を指先で拭うと、明るい笑顔を向けて声をあげた。
「さあ、みんな!お茶にしましょう!」
下に降ろそうとしたハウルに、マルクルはやはり腑に落ちないと言う顔で小さな声で訊ねた。
「でも、じゃあなんでソフィーの部屋はないの?」
ハウルは苦笑して、マルクルの頭をくしゃっと撫でると「まだ秘密」とウィンクして見せた。
夕食の仕度を始めたソフィーは、カルシファーがうつらうつらしている姿に鍋を持ったまま困ったように首を傾げた。
朝からいろんなことがあったことから考えれば、無理からぬことなのだ。
「本当に、今日一日で・・・全部起きたことなの・・・・?」
ソフィーは鍋を抱えたまま、呟いて目を閉じた。
夜明け前、あの星降る過去の湿原から戻ったことも、ハウルの心臓を無事に戻したことも、本当に全部今朝の出来事なんだわ・・・。
もう幾日も経っているかのような、そんな気がした。
「本当だよ。ソフィー。みんな今日ソフィーが起こしてくれた奇蹟だよ?」
いつの間にか、ハウルがソフィーの目の前でかがみこむように覗き込んでいて、ソフィーは驚いて息を飲んだ。
ハウルはソフィーの抱えていた鍋をふわりと持ち上げると、何か呟いてウィンクした。
鍋の中からはコトコトと音がして、湯気があがっていた。
「カルシファーは、本当に疲れたんだね。あれだけ自由になったら空を飛びまわりたいって言ってたのに」
二人で見つめた先では薪の上でまどろむカルシファーが、本当に気持ちよさそう見えた。
気がつけば、ヒンも暖炉の前で丸くなり、荒れ地の魔女もマルクルも、みな居間には居なかった。
「みんな自分の部屋を片付けてるうちに寝てしまったみたいだよ?」
ハウルは鍋を空中から鍋敷きの上に移しながら告げた。
無理もない、一晩中とてつもない緊張感にさらされていたのだから、ようやくゆっくりとできるベットの誘惑には勝てなかったのだろう。
「今夜の夕食は、僕とソフィーの二人きりだね?」
不意に、ハウルが耳元で囁くように言ったので、ソフィーは胸を高鳴らせてしまった。
「ソフィー・・・」
ゆっくりと顔を近づけてきたハウルに、思わずソフィーはぎゅっと目を閉じた。
・・・・キスされる!
しかし、閉じたソフィーの唇には、ハウルの温かな唇は降ってこなかった。
ゆっくりと瞳を開けると、ハウルは俯いてソフィーの前で跪き、そっと手を握り締めた。
「ソフィー・・・本当にありがとう。僕の心臓を元に戻してくれて・・・・カルシファーを自由にしてくれて。」
「あ、うん、でも、私がのろまなせいで・・・・」
ソフィーは自分が勘違いしたことを気づかれまいと、必死に笑顔を作ると慌てたように立ち上がった。
ハウルも手を握り締めたまま立ち上がると、青い瞳を潤ませて見つめた。
「・・・僕は、ソフィーに会いたかった。ずっと、ずっと、あの星降る夜から、ソフィーが未来で待ってて!と叫んだときから。」
君に恋してた・・・。
最後の一言は言葉にできず、ただソフィーの手を握る自らの手に力を込めるしかできなかった。
それは、静かに語られながら、胸に熱いものが潜められたような・・・そんな告白だった。
ソフィーはハウルに見つめられて、瞬きも出来ないくらい胸がいっぱいになり、その言葉を聞いていた。
「・・・・・だから、ソフィー。」
ハウルは握っていた手を胸の前に引寄せて、指先にキスを落とすと、誰よりも魅惑的な瞳で囁いた。
「・・・・今日から、僕たち一緒に眠ろう?」
「・・・・え!?」
どこか夢心地で聞いたいたソフィーが、そのうっとりとした表情を一気に青ざめさせたのを、ハウルは残念なことに瞳を閉じて唇を近づけていて気がつかなかった。
「ソフィー・・・」
ハウルは片手をソフィーの腰に置き、ぐっと引寄せた。
「やっ・・・!」
あと少しで唇が触れ合う、というところで、ソフィーはハウルの手をふりほどき両手を伸ばしてハウルの顔に手を充てた。
「ソフィー?」
驚いて目を開け、ソフィーの耳まで赤くなって俯く姿をハウルは照れているのだろうと、そう思った。
だから、まさかそれがその反対の感情からきているとは、夢にも思わなかった。
「僕らは、もうずっと一緒だよ?今日から僕たちは一つのベットで眠るんだ。さあ、ソフィー恥ずかしがらないで顔をあげて・・・」
ハウルが長い指先でソフィーの顎を掴み上向かせると、ソフィーは静かな怒りを潜めて呟いた。
「私の部屋は、別に作ってちょうだい?」
「その必要はないだろう?僕たちはもう夫婦なんだから」
くすくすと笑うハウルは、ソフィーの言葉にはまったく耳を貸さずに指先をソフィーの華奢な身体のラインに沿わせて首筋に唇を寄せた。
「・・・ソフィー、可愛い・・・」
ぞくっと体中を突き抜けるような感覚に、ソフィーは身体を強張らせて身を捩った。
「いやっ!」
「・・・ソフィー」
唇に降りてきたさらさらの黒髪に、ソフィーは弾かれるように、どこにそんな力が潜んでいたのかわからない力で、ハウルを思い切り突き飛ばした。
「うわっ・・・・!」
「ハウルのっ馬鹿っ!私たちは、まだ夫婦じゃないわ!」
バランスを崩したハウルは、そのまま暖炉に思い切り倒れこみ、うつらうつらしていたカルシファーは驚いたように口を大きく開けた。
「ああぁっ!?」
おいら消えちゃう!?
カルシファーが目を閉じ、ハウルが何か呟くと、ぱあっとカルシファーの中心が光った。
「ハウル!?」
ソフィーがまばゆい光りに驚いて目を開けると、そこにはんぐっと何かを飲み込んだかのように喉を鳴らしたカルシファーしか居なかった。
「ハウルを飲みこんじゃった・・・・」
カルシファーが小さな手で口の下に手を伸ばして、放心する。
「ハ、ハウルーーー!?」
ソフィーはペタンとその場に座り込むと、カルシファーを見つめて・・・・同じように放心した。
「ソフィー!ソフィー!」
どのくらいの時間が過ぎたのか、呆然とするソフィーの傍らにカルシファーが漂ってきていた。
「・・・・・・カルシファー・・・・・!」
ソフィーはのろのろとあたりを見回し、それからやはりハウルが居ないことを再確認すると、大きな瞳に涙を滲ませた。
「私、私!ハウルを突き飛ばしてしまった・・・・!」
「落ち着いて、ソフィー。ハウルは生きてるよ。おいらにはわかる。ごめんよ、思わず飲み込んじまったんだ・・・!おいらに倒れこむ瞬間、ハウルも何か呪いを掛けたんだけど、悪いことにコレに反応しちまって・・・・!」
カルシファーは自らの、ハウルの心臓を預かっていた場所を見つめて呟いた。
「反応って・・・?」
ソフィーは涙を拭ってカルシファーに手を伸ばすと、掌の上でカルシファーは困ったように眉を顰めた。
「・・・多分、あいつは・・・あっちに行っちゃったんだ・・・!」
それがどこかはわからなかったが、今、この城に、ソフィーの傍らにハウルが居ないことにはかわりがなかった。
「何かに引きずられるような感じがしたから、多分もう一つの・・・」
両手をあげて説明するカルシファーの声が、ソフィーには酷く遠くに感じた。
私が・・・ハウルを拒絶したから・・・!
あの時のことを思い出して、ソフィーは唇を噛んだ。
私はなんて馬鹿なんだろう?
たった一言がなかったからって、あんなに大人気なく突き飛ばさなくてもよかったのに!
ソフィーは掌にまだ残るハウルの感触が、少しづつ薄れていくのを感じて慌てて両手を握り締めた。
「ただ、・・・・って言って欲しかっただけなのよ」
ソフィーは呟いて胸にその両手を仕舞いこむ様に涙を流した。
「ソフィー!おはよう!新しいベット、今までよりずっと気持ちがよかった!」
マルクルが嬉しそうに起きてくると、ソフィーは顔をパンと両手で叩いて振り向いた。
「おはよう、マルクル!さあ、顔を洗ってらっしゃい、朝ご飯にしましょう。」
ソフィーは何事もなかったかのように、笑顔で言った。
「おばあちゃん、ヒン、おはよう!今日は早いんだね。」
「おはようマルクル。あたしゃこのテラスが気に入ったんだよ。」
荒れ地の魔女がゆっくりと揺り椅子を揺らしながら呟くと、マルクルは不思議そうに辺りを見回した。
「カルシファー、ハウルさんは?」
その問いにカルシファーがわざと眠そうに欠伸をすると、皆が一斉にソフィーを見つめた。
「ソフィー?」
「ハウルは、ちょっと出かけたのよ。多分、すぐに戻るわ。」
ソフィーをまじまじと見つめていたら、きっと頬に幾筋もの涙の跡とひきつる口元がわかっただろうが、ヒンが慌ててマルクルに飛びつき頬を舐めたので、マルクルは気がつかなかった。
「じゃあ、僕たち散歩してくるね!」
カルシファーが穏やかな草原に城を降ろすと、マルクルとヒンは元気一杯に駆け出して行った。
「・・・ソフィー、そんなに気に病むんじゃないよ?」
荒れ地の魔女が、机の上できっちりと手を組んだまま俯くソフィーに、溜め息混じりに囁いた。
「でも、私が突き飛ばしたりしなければ・・・・」
ソフィーは指先が白くなるほど握り締めて、微かに震えて言葉を紡いだ。
「あの子は大丈夫よ。きっと今頃、何で突き飛ばされたのか考えてるでしょうよ。」
くすくすと笑う荒れ地の魔女に、ソフィーは歩み寄り、その足元に座り頬をすり寄せた。
「大好きなのよ?・・・だけど、どうしていいか、わからなかったの。」
魔女はやれやれとソフィーの頭を撫でると、ゆっくりと噛み砕くようにソフィーに告げた。
「オトコなんてね、一番大事なことは『もう言ったつもり』でいたりするもんなんだ。『言わなくてもわかる』とかね。
あの悪評高き魔法使いハウルも、例外漏れず、ただの男だったというわけさ。ソフィー、お前の前ではね。」
ウィンクする魔女に、ソフィーはくすっと笑みを零した。
「しばらく、帰ってこないほうがいいんじゃないかい?ソフィー、あんたも気持ちの整理をつけられるだろう?」
わざと明るい声でそう言う魔女に、ソフィーは首を傾げ少し考えて、寂しそうに瞳を閉じた。
「・・・・・もう、本当は心の準備・・・できてるのよ。」
ただ、言葉が欲しかっただけなの。
「ソフィー、あんたもただの女ってことさ」
荒れ地の魔女はそれは嬉しそうに、ソフィーの頭を撫でた。
カルシファーが夕食の片付けをするソフィーの頭上に近づき、そっと耳打ちした。
「多分・・・今夜、ハウルは戻るよ。」
行き先はどうやら「ハウルと同業者のところらしい」とカルシファーはしどろもどろに教えてくれていた。
すぐに戻りたくても、戻れない。
そんな近くて遠い場所なのだと。
ソフィーはバスタブに身を沈めながら、深呼吸した。
「こだわるのは・・・言葉にこだわるのは、やめよう。」
気持ちが、本当にわからない訳でも、見えない訳でもなかった。
私を、ずっと待っていてくれた。
その想いが、どんな感情からくるものか、疑う余地なんてないはずなのに。
あの戦いの中で、彼が私にしてくれた・・・命をとして守ってくれた、それだけで、充分すぎるほどのはずなのに。
でも、ただ、言って欲しかった。
それは我儘なことなのかしら?
湯にぶくぶくと沈み、ソフィーは心の中で呟いた。
きっと、恋をするとみんな我儘になるんだわ・・・
肌が桜色に染まり、頭がくらくらとしてきてソフィーはゆっくりと立ち上がった。
念入りに磨いた身体も、髪も、ソフィーの密かな決心だった。
タオルで髪を拭き取りながら、ソフィーは浴室のドアを閉めた。
時間を忘れて浴室に籠ったので、急にハウルが戻ってきたかも!と心配になっていた。
「これじゃハウルと一緒だわ!」
戻ってきたハウルに、笑顔で「おかえり」と言いたかったし、何より「ごめんなさい」とちゃんと言いたかった。
ソフィーは逆上せて上手く歩けないことに舌打ちしながら、居間へ向かった。
その時、昨日と同じ、まばゆい光りがカルシファーから溢れ出した。
「カルシファー!!」
ソフィーは思わずんよろけて、その場に転んでしまった。
タオルがソフィーの目の前を覆い、それを外そうとソフィーはわたわたと手を動かした。
コツと、ソフィーの前で靴音がして、ソフィーはそのまま抱き上げられた。
体中でその力強い腕の力や、息遣いを間近で感じソフィーは一瞬息を飲んだ。
それはほんの一瞬であったが、永遠に続くかのように思われた時間であった。
ゆっくりと、ためらいがちにタオルが外されて、ソフィーの瞳に、寂しそうなバツの悪そうな・・・でもやっぱり嬉しくて仕方ないというような、そんな複雑な表情をしたハウルが居た。
「・・・ただいま、ソフィー」
情けなく苦笑したハウルは、申し訳なさそうに目を閉じた。
「ごめんね、ソフィー。僕・・・」
ソフィーは急に、腕を伸ばしてハウルの首にしがみ付くと、驚くハウルの耳元で真っ赤になって叫んだ。
「おかえりなさいっ・・・・!つ、疲れたでしょう?は、早く一緒に寝ましょう・・・?」
ごめんなさいって言い忘れたわ!
ソフィーがぎゅっと腕に力を込めると、ハウルは真っ赤になって立ち尽くして言葉を失った。
心臓が肌を突き破って飛び出してきそうな気がして、ソフィーは泣きたくなって来た。
ハウルはゆっくりとソフィーを引き剥がして額をぶつけると、固く瞳を閉じたソフィーが恐る恐る瞳を開けるまでの間、同じように激しい鼓動に息をなんども止めた。
やがて、ソフィーの瞳とハウルの瞳がぶつかると、ハウルはもう一度「ただいま」と呟いた。
ソフィーは何か言おうと口を開いたけれど、言葉が出てこずに益々赤くなった。
ハウルはくすっと笑みを零すと、まるで今までソフィーが悩んでいたことを知っているかのように、ゆっくりと囁いた。
「ソフィー、大好きだよ。」
それは、ソフィーが聞きたかった、たった一つの言葉。
「大好きだ。僕は、ソフィーが大好きだよ」
ソフィーの瞳から、涙が溢れて頬を伝った。
「・・・初めて聞いたわ」
ソフィーが呟くと、ハウルは心底驚いた顔でソフィーの鼻先に顔を近づけた。
「ウソ」
「本当」
ソフィーが微笑むとハウルは絶句して、抱きかかえたまま座り込んだ。
「・・・とっくに伝えたと思ってた。」
だからソフィーは突き飛ばしたんだ。順番が逆だから!
ハウルは肩を落として・・・まるでねばねばを出しそうなくらい顔面を蒼白にした。
「ハウル!?」
しかし、頭の中で先ほどのソフィーの言葉を思い出して、勢いよく顔をあげた。
「・・・ソフィー、さっきの・・・空耳じゃないよね!?」
「え?」
ハウルのきらきらと輝く瞳が覗き込み、ソフィーはあまりの変わり身の速さに目をぱちくりさせた。
「さっき、僕が帰ってきたら・・・『一緒に寝ましょう』って・・・・!」
「あっ!」
ソフィーは両手で口を押さえて、再び真っ赤になって俯いた。
ハウルはソフィーを抱きかかえたまますくっと立ち上がり額に口付けすると、呆れた様に薪の下に潜り込んだカルシファーに声を掛けた。
「お前のその中に入っているもの、もう壊さなくちゃね。」
指先を動かしてカルシファーの口の中から、キラキラと輝く小さな珠を取り出し掴むと、ハウルは掌で握りつぶした。
「あっちはもう1ヶ月も経っていたんだ。戻ってきて同じように時間が過ぎてたら、どうしようかと思ったよ・・・。」
そして、ちょっと心配そうにソフィーを覗き込んで付け加えた。
「・・・・・やっぱり、今日はやめておこうか・・・・・?」
ハウルのその顔を見て、ソフィーは思わず笑って口付けた。
「覚悟はできたわ!」
貴方が居ない間の一日でね!
January ,22, 2006