ちょびっと大人向け?いやや、生ぬるいです。
雨の檻
「雨ばっかりでイヤになるわ。」
「僕は大歓迎だね!あんたが朝早くからベットを抜け出さずに居てくれるからね!」
「んんっ・・・、でももう起きるわ。やっぱりお店を開けなくちゃ。荒地は今日は雨が降っていないかも?」
「しばらく雨が降り続いたほうがいいんだ。荒れ地に引いた温泉だって、無限じゃないんだから。」
「でも・・・、お店はあ、あけなく・・・ちゃ・・・!」
「それでも、まだ早いよ。」
「掃除も・・・朝食の準備も・・・」
「ソフィー、もう少し動くよ」
「ハウっ・・・!もう・・・!ん・・・ぁ・・・・」
嬉しそうに指にあかがね色の髪を絡ませ、気持ちよさそうに眠るハウルの頬をつつき、ソフィーは溜め息をつく。
「遅刻しても知らないんだから!」
むにっと頬をつねると、へにゃ、と笑顔を見せソフィーと呟く姿に思わず微笑んで、ソフィーはゆっくりとその腕の中に滑り込んだ。
「・・・雨は・・・やっぱりイヤ・・・。あたしまで怠けたくなっちゃうんだもの。」
寝室の窓の外はウェールズ。
「あっちも雨なのね。」
ああ、いやだ。洗濯物が乾きやしない!
そう呟きつつ、そっとハウルの胸に耳を寄せる。
トクントクンと規則正しく打ち付けるその音に安堵感を覚え、ソフィーは目を瞑る。
心地よい人肌の温もりと、気だるい湿った空気。
ベットがまるでもう一人のハウルみたいにソフィーを放してくれない。
「これは二重の呪いね」
くすっと笑うと、ハウルの滑らかな肌に指を這わせる。悔しいくらいに心地よい。
雨音が微かに響く。ハウルの鼓動と重なりあった雨音はソフィーを憂鬱な気持ちから開放し、程よく疲れた身体を癒すリズムとなる。
カルシファーはさぞかし出歩けないことを残念がっているわね・・・。
「奥さん、三重の呪いに換えてあげるよ?」
緩やかに眠りの入り江まで来ていたソフィーの意識は、まるで掬い上げられかのように甘い刺激が落とされた首筋めがけて引き上げられる。
「・・・?ハウル・・・?」
「・・・他のオトコのことを考えながら、僕を誘惑するなんて」
ヒドイ奥さんだ。
そう笑いを噛み締めたような声が耳元で囁かれ、唇が流れるように移動して、先程ソフィーが這わせたように指先がソフィーをなぞる。
「オトコって・・・カルシファーのことよ?」
あたしが考えていたのは。
ソフィーが吐息と一緒に言葉を紡ぐ。ハウルは小さなソフィーの身体をぎゅうっと抱きしめて、まるで凶悪な犯罪者のように、にやりと笑う。
「僕以外のオトコのことは、考えちゃダメ。でなきゃ・・・」
容赦しないよ?
雨は激しさを増し、窓を叩きつける。
城にぶつかる雨音も強くなり、雨の檻がソフィーをハウルに閉じ込める。
雨の朝は、ハウルの味方。
ハウルは太陽を独り占めして、誰より幸福な気持ちになり降り続ける雨に感謝した。
end