ままはお姫様
花畑で小さな男の子と年の同じくらいの女の子が、まだ思うように指先が動かないことを恨めしく思いながら、花冠を作っていました。
「モーガンはそれ、だれにあげるの?」
レティーに面差しの似たその少女は、自分よりも遥かに器用に花を埋め込んでいくモーガンに話しかけます。
ちょっぴり期待を込めた眼差しで。
「もちろん、ままにだよ!ほら、このおはな、ままみたいにきれいでしょう?」
うふふ、と可愛らしく微笑んでモーガンは少女に花冠を見せました。
少女はやっぱり!と内心がっかりしたのですが、それが何故やっぱり!だったのか、がっかりしたのかは上手く説明できないので、ただ、嬉しそうなモーガンに「そうね」と答えました。
「あのね、ままのおたんじょうび、あしたなんだ!みんなあつまるでしょう?きっと"ぷれぜんと"いっぱいもらうでしょ?」
「うん。ままがね、あしたはぱぱもモーガンのおうちにいくっていってた!」
「きっとね、ぱぱはすごいぷれぜんとあげるんだよ。いつもままのことおこらせてるから、きっとなにかびっくりさせるきだぜ!ってカルがいってたの。」
モーガンは花冠の繋ぎ目がほどけないように、そこに小さく呪いを掛けます。
「これね、カルにおしえてもらったの。」
目を丸くする少女に、モーガンは内緒だよと人差し指をたてて。
「ぼく、ぱぱにまけないくらい、ままがすきなんだ!だからね、きょう、ままにおたんじょうびぷれぜんとあげちゃうの!」
「ええ!?おたんじょうび、あしたなのに?」
「うん。だって、おたんじょうびのひに、あさからままがおはなのかんむりをつけてくれたら、うれしいんだもん!」
できた!
そう言って花冠を太陽に掲げるように持ち上げると、少女を見下ろしました。
「ままはね、ぼくのおひめさまなんだ!」
得意げに話すモーガンが憎らしくて、でもなんだかやっぱり大好きで。
少女は作りかけの花冠をモーガンに向かって差し出すと、怒り笑いのような顔で呟きました。
「モーガン、わたしにも、おひめさまのかんむりつくって!」
モーガンはきょとんとした顔をすぐに崩して、うん!と笑顔でこたえました。
「そのかお、ままがぱぱにするかおとおんなじだ!」
それから二人で手を繋いで、大好きなソフィーとレティーの待つ城へと帰っていきました。
翌日、ソフィーはモーガンの作った花冠を頭に乗せ、少女が作った小さな花輪を腕につけて、競うように起きてきたモーガンとハウルに微笑みました。
「おはよう、まま!おたんじょうびおめでとう!」
「おはよう!そして、お誕生日おめでとう!」
ソフィーは嬉しそうに抱きついてくる魔法使いとその息子から両方の頬にキスのプレゼントを貰いました。
「まま、おひめさまみたいでしょ!」
「モーガン、ソフィーはパパのお姫さまなんだよ?」
そんな二人に挟まれて笑うソフィーに、カルシファーも笑いました。
Happy birthday to you
end
大好きな妹ちゃんへ!お誕生日おめでとう!