いつも応援してくださる、イチさんがサイトをOPENなさったお祝いです。
大変遅くなりました。こんなものですみません。ハウル駄々こねてないし・・・。ごめんね!
イチさんに捧げます。






Asking importunately





「はい、モーガン。いいこね。次は反対よ。」
ソフィーはモーガンの小さな頭を膝に抱き、耳を覗き込む。
モーガンはむずがってイヤイヤしたり、上手になった寝返りでソフィーの膝から逃げ出そうと何度も試みる。
「もう少しで終わりだからね?モーガン。」
暴れだすと危険なので、ソフィーは助けを求めて周囲を見回す。
そんな様子を見て、カルシファーはふるふると細い腕を振る。
「おいらじゃもっと危ないやい!」
それもそうね、とソフィーは苦笑する。
参考書を見ていたマイケルが顔をあげ、慌てて駆け寄り、ソフィーの膝元で暴れだすモーガンに話しかける。
「モーガン、気持ちよくしてもらおう?ほら、見てて!」
マイケルはソフィーに目配せすると、ソフィーは微笑みマイケルの指先に集中する、モーガンの耳の掃除を始める。
マイケルが小さく何事か呟くと、ポンッと小さく空気が揺れて指先に人形が現れる。
モーガンは「ぱ!んーぱ!」と嬉しそうに手を叩いて見せる。
「モーガンくん、君はとてもよい子だね!ほら、ぼくとあそぼうね!いないいない・・・ばあっ!」
じーっと見たり声を上げて笑ったりしながらも大人しく掃除をさせてくれるので、ソフィーは満面の笑みでお礼を言う。
「ありがとう、マイケル。いつも助かるわ。」
ようやく開放されて、モーガンは嬉しそうにマイケルのもとへハイハイしていく。
「モーガンいい子だもんね?」
「ほんと、あんたモーガンに懐かれてるよな!」
カルシファーがようやく暖炉からふわふわと出てきて、モーガンを眺める。
マイケルが人形を渡しながらモーガンを抱き上げると、扉がばたんっ!と閉まり、みなが一斉に振り向く。
「あら、ハウル。早かったのね。」
ソフィーが驚いて立ち上がると、ハウルは性懲りもなく買ってきた包みをどさどさと足元に落として天井を仰ぎ見る。
「何てことだ!!」

また始まった・・・・・

みながそう感じたのは言うまでもない。
ソフィーは「長くなるのはごめんよ?」と前置きしながらハウルに歩み寄る。
「この城の主が、聞きたくもない王様の願い事を叶えるために身をやつして働いているというのに!それもこれも愛しい
奥さんとカワイイ子どもと居候の為だってのにさ!!」
「ヒドイですよ!ハウルさん!」
「おいらちゃんと働いてるぜ!」
マイケルとカルシファーが同時に抗議の声を上げるが、ハウルはまったく耳に入れずに嘆き続ける。
ソフィーはと言えば、いたって冷静にハウルの落とした包みを拾い上げ
「またモーガンの服を買って来たの?すぐに着れなくなっちゃうからって言ったのに。」
溜め息をつきながらも、愛息の為に洋服を選ぶ姿を想像して微笑んでしまう。
「で、なんなのよ?」
「なんなのよ?!ソフィー!僕の嘆きが伝わらないのかい!?あんたの愛する夫がなんで悲しんでいるのかが!」
むやみやたらときらきら瞳を輝かせ、その美しく整った顔を曇らせながらハウルはソフィーの肩を掴む。
「あんた悲しんでるの?」
ソフィーは呆れたように体中を脱力させて、ハウルを見上げる。
「そうさ!僕はとっても傷付いてるんだ!」

まあ、どうせ帰ってきたことに気がつかなかったとか。
マイケルのほうがモーガンに懐かれてるとか。
そんなとこよね。

「だから何に傷付いたのよ?」
ソフィーはイライラしながら、どうしようもない旦那さまを睨みつける。
「ああ、ほらね!愛しい奥さんは僕に冷たすぎるんだ!」
ハウルは堪えられないとばかりにソフィーを抱きしめる。
「ソフィー!あんたは僕の奥さんだよね?」
「まあ、そうよね」
「僕はあんたの伴侶だ」
「結婚しちゃったしね」
「そう!僕たちは結婚してるんだ!」
「わかってるわよ!モーガンっていう可愛い息子もいるもの。」
ソフィーはハウルの腕の中でジタバタしながら、きいきいと声を荒げる。
「それなのに、僕はあんたに耳の掃除なんてしてもらったことない!!!!」

「へっ?」
「けっ!」

マイケルとカルシファーは顔を見合わせ「そこか!」と声を合わせて叫ぶ。
「な・・・!何言ってるのよ!!」
ソフィーは一気に顔を赤くして、ハウルの腕から逃れようと先ほどより暴れだす。
「だって、モーガンはして貰ってるっ!あんたの膝枕で、気持ちよさそうに!!僕も気持ちよくして欲しいっ!」

「さ、モーガン!僕の部屋で絵本を読んであげるね」
「あ、おいらも一緒にいく!」

こんなこと、もう慣れっこになった城の住人はさっさと階段を上っていく。

「モーガンは赤ちゃんでしょう!あんたは自分で出来るじゃない!!」
ソフィーが両手でハウルの胸を押して離れようとすると、ハウルは耳元に唇を寄せ囁く。
「耳掻きしてくれなきゃ、離さないよ?」
「もう!どうしてあんたってそうなのよ!?」





「動かないでよ?」
ソフィーの膝に嬉しそうに頭を乗せ、ハウルはしっかりと太ももにしがみつく。
「うん。ソフィー優しくしてね!!!」





        end