エチャでお世話になった皆様へ愛を込めて!





夢オチ





働き者のソフィー・ジェンキンスは睡眠時間の確保が出来ず、眠い目を擦りながら日課である城の掃除をしていた。まだ外は空が白みだしたばかりだが、ソフィーは腕まくりすると二度目の欠伸をかみ殺す。
何故寝不足なのかは・・・この城の主、魔法使いハウルが寝かせないからと言う至極簡単な答えなのだが。

「ソフィー、あんたもっとゆっくり寝てたらどうなんだい?花を摘みに行くのだって開店時間を遅らせればいいだけだし、マイケルも子どもじゃないんだから朝食の心配なんてしなくたって大丈夫だぜ?」
だからちょっとくらい寝坊したって平気なんだ!暖炉から出てきた火の悪魔は床を磨くことに専念し始めたソフィーの顔を覗き込む。
ソフィーは急に顔を真っ赤に染め上げてフンと鼻をならすと、ますますその手に力を込めてる。
「あいつはまだ寝てるんだろう?ソフィーもゆっくりしたらいいんだよ!って、今日店休みじゃないか!まだ早いんだから」
青い炎はなんともいえないバツの悪そうな顔を作ると、ソフィーの頭上に浮かび上がる。
「いやよ。だって・・・」
ソフィーが一瞬床を磨く手をとめる。・・・と。
バタン!
2階の扉が開く音がして、ハウルが恥ずかしげもなく新妻の名を呼んだ。

「ソフィー!!」
バタバタと階段を降りてくる足音に、ソフィーはびくっとして立ち上がり、体を隠すことなんてできはしないとわかっているのに、 咄嗟にカルシファーの後ろへ回り込む。
「ソフィー、何で起きちゃうのさ!!!」
何段飛ばしたのか、あっという間に階下に下り立ち、髪を掻きむしりながらソフィーに手を伸ばす。
「さあ、ソフィーまだ眠れるよ。ベットが冷たくならないうちに!」
ちょっとイライラした表情は、ハウル自身も寝不足なのと、目覚めたときに愛しい妻の温もりが隣になかったせいだろう。
ソフィーは雑巾を胸の前に握り締める。
「今日は休みだから、ゆっくりしようって言ったじゃないか!」
ハウルはカルシファーをうるさそうに手で追い払うと、ソフィーににじり寄る。
「ハウ・・・」
「ソフィー・・・・、僕は休みまで待ったつもりなんだけど」
両肩を大きな手で掴むと上目遣いで涙目になるソフィーに、容赦なく迫る。
カルシファーは「まったく、見てらんないね!」と呆れ顔で暖炉に戻ると、ソフィーが真っ赤になってうつむくのを溜め息をついて見つめる。
「あんたが僕と一緒に朝を迎えてくれるのは、いつなんだい?毎朝あんたの温もりが腕にないことが、どんなに悲しいことかわからないの!?僕たち結婚したんだよ!ソフィー、店が休みの時は朝僕が目覚めるまで傍に居てって言ったじゃないか!」
「間違ったのよ!今日がお休みだって忘れてたの!それに・・・もう起きたんだから・・・!だからいいでしょう?」
雑巾を握り締めながら、ソフィーは俯いたまま必死に言葉を探す。

だって、恥ずかしいじゃない!朝起きて、何も身に着けていないのよ!?

「僕は眠る前にあんたにちゃんと言ったよ!休みだから、朝も愛し合おうねって!」
「!!ハウル!朝からそんなこと大声で言わないでよ!!」
慌てて顔をあげると、心底傷付いた!という顔をして碧眼を揺らしソフィーを睨みつける。

気を失うようにして眠りに落ちる直前、確かにハウルが嬉しそうにそう囁いた気がしたから、いつも通りに目が覚めたのをいいことに逃げるようにベットを出たのだ。ソフィーとて、毎晩疲れ果て、意識を失くすように眠るのだからたまにはゆっくり朝を迎えたい。でも、この旦那様を前にしては、ゆっくり朝を迎えられそうにないことを感じていたのだ。

「ソフィー、あんただって、こんなに眠そうなのに!さあ、掃除なんて後にして早くベットに戻ろう?」
「いやよ。あたし掃除するの!」
「ソフィーあんたって本当に強情だね!まったく掃除!掃除!掃除!旦那様より掃除が大事なの?」
「あたしが強情なのは知ってるでしょう!?掃除が好きなことも。さあ!あんたはまだ眠っていていいわ!手を離してちょうだい!!」
「・・・じゃあ、僕も手伝う」
「!!!!」
思ってもみない言葉にソフィーは絶句する。
「僕も手伝う。そして終わったらベットに戻る!そしたら今日はもう離さない。」
「な、何であんたはそうなの?もっと常識ってものはないの!?」
雑巾を思わず投げつけてソフィーは噛み付きそうに叫ぶ。
「常識?やっと夫婦になって、いつでも一緒にいたいと思うことがそんなに常識ない?じゃあ、ソフィーの常識って何さ?僕にどんな風になって欲しいのさ!」
ハウルは雑巾を手を使わずに空で止め、指を一振りするとバケツに投げ込む。ばしゃんと水が盛大に跳ね、床を濡らす。
「・・・・っ」
切り替えされて言葉に詰まるソフィーに意地悪な笑顔を向け、ハウルは「さあ!」と覗き込む。
「・・・・あんたみたいに子どもじみたこと言わなくて・・・」
ソフィーは一歩後ずさり・・・、ハウルは一歩前に出る。
「ふうん?」
「そうね、落ち着いていて・・・・」
きらりとハウルの瞳が輝き、口元が少し上がる。
ソフィーは魅惑的に微笑むハウルを見つめないようにぎゅっと瞳を閉じて、頭に浮かんだ言葉をただ吐き出す。
「そんな意地悪に笑わなくて!!困っているあたしをもっと困らせたりしなくて!」
「なるほど?」
「それで?」
「ソフィーって欲張りだったんだね!」
「口ではそんなこと言ってもさ」
「心の中じゃ迫る僕も好きなんだ!」

!?


ソフィーは何重にも重なるハウルの声に驚き、恐る恐る顔をあげる。
「な・・・・・!」
五人のハウルに囲まれ、それぞれがソフィーのあかがねの髪に口付けたり抱きしめようとしていることに気がつき、ソフィーは眩暈を感じる。
「さあ、ソフィーあんたの願いを叶えたよ?」
「・・・!あたし、こんなこと願ってないわ!」
「そんなことないさ」
後ろから囁かれ、ソフィーは思わず身体を強張らす。
「ソフィーのこれが本心さ」左右から髪に口付けされ、ソフィーはますます赤くなる。
「これのどこが常識ある行動なのよ!!」
「おや?ソフィー・・・あんたは僕と平凡な結婚生活を望んでたのかい?」
優雅に腕を組み、静かに佇みながら誰より瞳を輝かすハウルが呟く。
「違うね!あんたはこんなぞくぞくするような生活を望んでたんだ!さあ、ソフィー僕をこんなに増やしてしまって!もちろんちゃんと愛してもらうからね?」
ソフィーは足元が掬われる様な感覚に思わず腕を伸ばす。
「ソフィー、みんなあんたの愛する旦那様だよ!」
朗らかな声が響き、ソフィーはそのハウルの腕に落ちた・・・・。



伸ばした指先に滑らかな肌の感触があたり、ソフィーは慌てて飛び起きる。
そろそろと見上げた先には、どこかあどけなさの残る寝顔がありソフィーは頬を染める。

え・・・・夢・・・・?

毛布を手繰り寄せ辺りを見回すと、そこは寝室で。
隣にはしっかりとソフィーの腰にしがみつき、ハウルが規則正しい寝息を立てている。

何て夢を・・・・!一人でも大変だっていうのに、あんなにたくさんのハウルが相手だなんて冗談じゃないわ・・・

そっと溜め息をつきソフィーはそろそろとベットから抜け出ようとして、ハウルの腕を慎重に外す。
ハウルの寝息が肌に直接かかり、くすぐったさから逃げるようにベットから抜け出ようとする、が。
「ソフィー。今日は休みだから、ゆっくりしようって言ったよね?」
背を向けたソフィーの腕に、ハウルの長い指が絡み引き寄せられる。
「・・・っウル?」
ぎょっとしたソフィーとは対照的に、ハウルは片肘をつき碧眼を輝かせながら嬉しそうに微笑んでいる。
「休みだから、愛し合おうね?」
「・・・・・!!!!」
ハウルは体中を赤くするソフィーを抱きしめて、嬉しそうに囁いた。




「ねえ、カルシファー・・・どうしてここ濡れてるの?」
遅く起きてきたマイケルが怪訝そうに尋ねると、火の悪魔は呂律の回らない調子で答えた。
「夢の中のあいつらに聞いてくれ!」






        end




エチャから始まったお題でした。楽しかったですvv
ココさんお題「ハウル悪戯」編!