CGI
深夜の茶会から始まった妄想ゲーム!
素敵なお題のもと捏造いたしました(笑)
イラストを描いてくれた凛紅桜さんとお題提供の海が好きさんに捧げます
The first rival
優しい花の香りに満ちた城の朝。
ソフィーはフライパンの歌を口ずさみながら、カルシファーの上でスープを温める。
トントンと軽快な足音をたて、黒髪の少年が階段を駆け下りてくる。
最後の3段ほどを飛び降りて、ソフィーに後ろから抱きつくと頬にキスする。
「おはよう、母さん!今日もキレイだね!」
振り向くソフィーに父親譲りの極上の微笑を浮かべ、モーガンは反対の頬にもキスをする。
「おはよう、モーガン。よく眠れた?遅くまで明かりが点いていたようだけど?」
ソフィーもモーガンの額にキスをする。
「うん、呪文の復習をしていたんだ。・・・母さん、起きてたの?」
モーガンは怪訝そうな顔でソフィーに詰め寄ると、これまた父親譲りの淡い碧の瞳をきらめかせる。
「ええ、ちょっと繕い物をしてたのよ」
ソフィーは真っ赤になって、ふぃっと視線を逸らしいつもの元気な声でなくか細い声で呟く。
・・・ちっ!また父さん母さんを寝かせなかったな!
モーガンは少女のような美しさを保つ母親を独占する最大のライバル・・・ハウルの眠る寝室を見上げ睨みつける。
「ねえ、母さん。今日の予定は?花屋は休みだよね?」
カルシファーに「万年新婚夫婦!」と冷やかされ赤くなるソフィーのエプロンを引き、モーガンは笑顔を作り尋ねる。
「なあに?何かあったかしら?」
カルシファーに焼きたてのクロワッサンを食べさせながら、ソフィーはくるくると表情を変えて息子を見つめる。
「うん、付き合ってもらいたいとこがあるんだ。今日一日母さんを予約したからね!」
魅惑的な微笑みはホント誰かさんにそっくりね。
ソフィーは困ったように溜め息をつくとモーガンの黒髪をくしゃくしゃと撫で回す。
この魅惑的な息子に何人の娘さんが魂を奪われてることかしら・・・と自慢の息子に苦笑する。
この少年がそんな表情を見せるのは、母ともう一人、彼の従姉の前だけなのだが。
可愛いかっただけの子ども時代と比べ、モーガンも今度の誕生日で16歳だものね。
二人で並ぶと少し歳の離れた恋人同士に見える光景に割って入るように、大きな手のひらが伸びソフィーを後ろから
気持ちよさそうに抱きしめる。
「おはよう、奥さん。夫に内緒でデートの約束かい?」
「まあ!息子との約束まであんたは嫉妬するつもり?」
ソフィーは呆れたように肩をすくめると、ハウルに向き直り「おはよう」と背伸びして頬にキスをする。
モーガンは片肘をつきクロワッサンにかじりつきながら、幸せそうなハウルとソフィーを見つめる。
「僕以外の男はみんなライバルさ。あ、もちろんカルシファーもだよ?今日は僕も休みなんだよ?」
放って置く気?と、ハウルはソフィーを抱きしめてキスしにっこりと微笑む。
「・・・あのさ、年頃の息子の前で恥ずかしくないわけ?」
トマトをフォークに突き刺し面白くなさそうにモーガンは呟く。
「おやおや、モーガン。挨拶もなしとは悲しいね!仲のよい両親で幸せだろう?それに僕たちがお似合いだからって
妬いちゃだめさ!お前にもそんな相手が現れるからね。いや、現れたのかな?」
普段喧嘩ばかりしてるくせに!と火の悪魔が笑い声をあげるのを目で制止し、ハウルは爽やかにそう言うと、モーガンの隣に
座り意味深な眼差しを送る。
モーガンはふぃっと横を向き、ぶっきらぼうに呟く。
「おはよう、父さん!」
「ねえ、それってどういう意味?モーガン、好きな人でもできたの?」
スープ皿をハウルの前に置きながら、ソフィーの好奇心に満ちた目が輝く。こんな時のソフィーは出会った頃のままだ。
「年頃の子どもを持つと苦労するね!サリマンなんてここのとこ仕事が手につかなくて大変なんだよ!
女の子の父親って大変なんだね。」
ハウルはするりとソフィーの質問をすり抜けフォークを手に話し出す。ソフィーは釈然としないながらも、いつもは冷静だが
妻と娘のことになると取り乱す義弟を思い出し微笑む。
「ベンも気苦労が絶えないわよね?あんなに美しい娘に育っちゃね!」
「とんでもない!一番美しいのは僕の奥さんさ!だから僕が一番気苦労が絶えないんだよ?」
「はいはい、それはどうもご苦労様。で、ベンがどうかしたの?」
ソフィーは自分の席に座ると、おもしろくなさそうな顔のモーガンに疑問符を浮かべながらもハウルに尋ねる。
ハウルはくすくすと笑い、ちらりと憂い顔の美少年を見つめ可笑しそうに話す。
「サリマンはますます奥方に似てきた娘さんに
悪い虫
がついたんじゃないかって心配してるのさ。ほんと、自分だって
今くらいのレティーに惚れたくせにさ!」
「あら、あの時はあんたもレティーに夢中だったじゃない?ね?」
ソフィーはふわふわと暖炉から出てきてクロワッサンに手を伸ばす火の悪魔に、同意を求めるように笑いかける。
「僕はあんたの影を求めてたんだよ。それにしても、サリマンの慌てぶりをあんたにも見せてあげたかったなぁ!」
「ごちそうさま!母さん、じゃあ食事が終わったら僕に付き合ってね!あ、これに着替えてね?」
パチンと指を鳴らすとソフィーの腕の中に淡いピンクのドレスが現れる。
「まあ!どうしたのこれ?」
「モーガン!女性に服を贈る意味わかってるのかい!?」
両親のちぐはぐな声を無視して立ち上がると、モーガンはカルシファーに笑顔を向ける。
「カル!シャワー浴びたいんだけど、いい?」
「わかったよ!あんたはお湯を無駄遣いしないからな!」
『あなたは私を好きなの?それとも伯母さんに似てる私を好きなの?』
昨日突然言われた恋人からの台詞。
叩きつけるシャワーに打たれ、モーガンは苦笑する。
「やれやれ麗しの従姉殿は、人の気持ちを読むのがお得意なんだから。」
まだ、わからないよ。どのくらい君を本気でスキなのかなんて。
母さんに似てる君を・・・好きになったことがそんなに不満かい?
・・・これは父さんの血のせいかも。心を動かされるのはそのせいさ。
自嘲的な微笑を浮かべ、モーガンはカランを捻りお湯を止める。ぽたぽたと水滴が足元に落ちて行くのを眺め、
気持ちを切り替えるように頭を振りバスタオルに手を伸ばした。
「なんだよ!今日は僕が先約なんだよ!?父さんは大人しく城に居てよ!」
「何言ってるんだ!こんなに可愛らしいソフィーを外に出したら【悪い虫】がついちゃうだろう!?大体、モーガンがこんな可愛いドレスを出すのが悪い!!いいや、ソフィーを独占しようってのが悪い!!ソフィーは僕の奥さんだ!」
「ちょ・・・2人とも、やめなさいよ!」
ソファーに座る着飾ったソフィーを真ん中に、夫と息子が言い争いを始めソフィーは呆れた声をあげる。
「母さんに似合うドレスを選んだつもりだけど?おじさんは引っ込んでて!」
ちょっぴり八つ当たりと自分で自覚しつつ、モーガンはソフィーの右手をとる。
「おじさ・・!酷いよモーガン!それに今日は僕たち夫婦の記念日なんだからね!」
負けじとハウルもソフィーの左手をとり腰を抱いて自分に引き寄せる。
「五月祭だったわね!すっかり忘れていたわ!」
ソフィーが可愛らしくくすりと笑うと美しい父子は吸い寄せられるようにキスをする。
「母さん、今日は僕と楽しくすごそうね?」
「さあ、愛しい奥さん。運命の出会いに感謝しよう?」
くすぐったいような幸福感を感じるソフィーの背中では、夫と息子の指が熾烈な戦いを繰り広げているのであった。
end
凛紅桜さんが描いてくださった後半部の漫画はこちら→
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