とあるサイトマスターさまからリクされていた3姉妹SS。
微妙なお話で名前を出すのを躊躇して・・・(笑)
3姉妹でこんなお話してるのを・・・・考える時点で私のお馬鹿加減がわかりますね。
・・・・すみません。捧げものですが、返品可です。




無邪気な微熱    −3姉妹SS−



その日は、久しぶりに姉妹で過ごす昼下がりでした。
ソフィーとレティー、そしてマーサはサリマンの館のサンテラスでアフタヌーンティーを楽しんでいました。
「レティーもすっかり『女主人』ね」
ソフィーが相変わらず掃除の行き届いた見事なサンテラスを見回して溜め息をつくと、それまで珍しく黙り込んでいたマーサが口を開きました。
「・・・あの、姉さん!あたし、ひとつ聞きたい事があったの。」
もじもじと赤くなり俯くマーサに、ソフィーとレティーは顔を見合わせて首を傾げました。
いつもは口に手をあてておきたくなるほど、おしゃべりなマーサが『聞きたいことがある』とわざわざ切り出すなんて、どうしたこと?
二人とも少し心配になり、久しぶりのお休みにマイケルとデートしたかったのかしら?などと考えながら、優しく声をかけました。
「どうしたの?マーサ。」
「何かあった?」
二人に問いかけられ、マーサは紅茶の入ったカップをそっと机に戻すと、まだあどけないその瞳を輝かせて、ソフィーとレティーをちらりと見つめ、それからおずおずと呟きました。
「・・・あのね、ちょっと聞いておきたいことがあって。姉さんたちにしか、こんなこと聞けないから・・・」
そう前置きするとマーサはしっかりと二人を見据え、そして意を決したように口を開きました。
「姉さんたちは、ベットで、その、義兄さんたちとどうやって眠ってるの!?」
その問いに、レティーは思わずカップから指を滑らせ、ソフィーは椅子から滑り落ちてしまいました。
「ああ、これ、ベンのお気に入りだったのに」
レティーは床に転がった持ち手の掛けたカップを拾い上げると、さっと駆けつけた召使いに渡して「呪い粉はある?」と訊ねました。
ソフィーは同じく駆け寄った召使いに「ありがとう」と声をかけながら、その表情が気恥ずかしそうなのを見て、頬を赤く染めながら椅子に座りなおしました。
それからレティーが小声で床を拭いていた召使いに囁くと、サンテラスに居た召使いが皆恭しく頭をたれて扉の向こうに消えました。
きっと召使いたちはこんな話を急にされて、驚いたことでしょう。
今頃は扉の前で聞き耳を立てているわね、とソフィーは思い、いたたまれない恥ずかしさを飲み込むように紅茶を喉に流し込みました。
そんなことを考えているソフィーに、レティーがコホンと咳払いを一つして視線を送りました。
ソフィーは静かに頷いて、なんとか搾り出すように声を出しました。
「・・・マーサ、それって一体どういうこと?」
「まさか、マイケルがもう迫ってきたっていうの?」
レティーが好奇心いっぱに訊ねたので、ソフィーは思わずどきっとしてマーサをまじまじと見つめました。
真剣な目つきで見つめてくるマーサは、徒弟に出ているとはいえ、やはりまだ可愛らしい女の子のままに思えます。
昨日もその前も、マイケルにもとくに変わった様子はなかったというのに。
『マーサに宜しく伝えてくださいね!』そう笑顔で店番を引き受けたマイケルが、なんだか憎らしく思えます。
しかし、マーサはレティーの問いに、微かに頬を染め、忙しなく指をこねくり回しながら頭を横に振りました。
ソフィーはほっと胸を撫で下ろし、少しばかりマイケルを疑ったことを心の中で詫びました。
「・・・マイケルは、まだ何も。でも、知っておいた方がいいと思って。
チェザーリのみんなが『心構えはしておいた方がいい』って・・・その・・・イロイロ教えてくれたんだけど・・・」
ソフィーは頭を抱えこみたくなる気持ちでしたが、レティーは面白そうに身を乗り出して頬杖をついていました。
「それでね、あたし、その後のことが心配になったの。ねえ、姉さんたちはどうしてる?どうやって眠ってるの?
どうしたいいのか、これだけはわからないのよ。みんなの話はだいたいそこで終わりなんだもの。」
心配する場所が違ってるでしょう?と言おうとして、ソフィーは口をつぐみました。
マーサが言葉にしたことは、何とも大人っぽいものでしたが、この少女を突き動かしている感情は「マイケルに嫌われたくない」という気持ちに他ならないのです。その証拠に、大きく見開かれた瞳には憧れと不安が入り混じっていることに、ソフィーは気がつきました。
きっとチェザーリで様々な噂話を聞いて、さすがのマーサも混乱しているのでしょう。
レティーはうーんと唸ってから、にっこりと笑って答えました。
「ベンはそっと包み込むように眠ってくれるわよ?あとは手を繋いで眠ったり・・・・ああ、でも、忙しい時はベンはそのまま書斎で眠ってしまうこともあるわね。
ちなみに、昨日は義兄さんがベンに仕事を残して帰った所為で、帰りが遅くて。明け方近くにようやく帰ってきて泥のように眠っていたから、私、寄り添って眠るのも遠慮したわ。ほんの少しの睡眠時間を邪魔しちゃいけないでしょう?」
レティーはわざと溜め息交じりに言うと、困ったわというようにソフィーを見つめました。
「ソフィー、昨日は義兄さんどうだった?」
からかうようなレティーの瞳に、ソフィーはぎくっと身体を強張らせました。
昨晩は・・・。


恥ずかしそうに、ソフィーはベットの中で向きを変え、ハウルに背を向け瞳を閉じた。
一つ息を小さく吐き、まだ上気する頬を冷やそうと冷たさが残る場所を探してハウルから離れた。
お目当ての、ひんやりとしたシーツの感触に、ソフィーは気だるさを思い出したように身体を伸ばした。
心地よい眠りの入り口に辿りついたというのに、ソフィーに絡み付いてきた手が腰を抱き寄せ、ベットの中に意識を引きずりあげる。
「どうして背中を向けるの?」
その囁きは悪魔の調べ。
ソフィーは眠りを妨げる声に、イヤイヤと頭を振り自ら眠りの底へ落ちようと固く瞳を閉じる。
くすっと笑みを零したハウルは、ソフィーの顔を隠すあかがね色の髪を掬いながら、耳元で呟く。
「それは、満足してないってこと?」
拗ねたような口調は、でもどこか悪戯な響きがあって。
「満足してたら、ぼくに抱きついて眠ってくれるよね?」
ハウルの言葉にソフィーは驚いて目を開ける。
「満足してるわよ!」
ハウルは傷付いたような顔をして見せ、ソフィーの唇を塞ぐと抱きすくめた。
「いいんだ、そんな嘘言わなくて。背中を向けて眠られるなんて、僕の努力が足りなかったんだ。ごめんね、ソフィー。
もう一度、チャンスをおくれ。今度は満足させてあげるから。」
凶悪な笑みを浮かべて、ハウルはソフィーが呆気に取られている間に、キスをして体中に火を灯していった。


・・・。
昨晩から今朝にかけての出来事を思い出し、ソフィーは真っ赤になって俯いてしまいました。
レティーはそんな様子を見て、ますます好奇心でいっぱいの瞳を輝かせると「姉さん!ちゃんと話してよ!」と急かします。
「・・・・どうにもこうにも・・・・」
眠れなかったわ・・・
うんざりしたようなソフィーの言葉に、レティーもマーサも思わず赤面しました。
そんなことには気がつかず、ソフィーは昨晩ご機嫌で早く帰ってきたハウルにふつふつと怒りが込み上げてきていました。
「・・・・あの人・・・・またベンに仕事をおしつけて帰ってきてたなんて!」
「そんないつものことより、姉さん。私は姉さんがもうすぐ『ママ』になるんじゃないかってことの方が気になるわ!」
レティーが興味深そうにソフィーに訊ねる傍らで、冷めてしまった紅茶を口に含み、マーサはうっとりと呟きました。
「・・・そういうこともあるのね。」
それはそれは、少女とは思えないほどの美しい微笑みを浮かべて。


「くしゅん!」
「どうした?風邪か?」
「・・・今、寒気が・・・」
「?」
城で留守番をしていたマイケルは、何故か酷い悪寒が走り、カルシファーが不思議そうに見つめる先で、辺りを見回して首を傾げたということです。







end






こうしてマーサは最強になっていくんですね・・・。
マイケルファイト(笑)