青さんとのお約束SSです・・・が・・・。
なんだかソフィーでてきてませんね><
お待たせしたのにこんなんですみません><



待ちぼうけ



「よーくわかったわ!あんたにとって、あたしはいくらでも代わりのきく存在ってことよね! 」

それまで、どんなに言葉を尽くしてもうんともすんとも言わずに黙々と掃除をしていた少女の口が開き、足元に雑巾を投げつけられて、今まで喚き散らしていた艶かしいその口はパクパクと空気を噛み、エメラルドグリーンの双眼は、はっとしたようにあかがね色の髪の少女に張りつく。
そのあかがね色がまるで怒りに燃え盛っているかに見えたのは、彼女の瞳が怒りと悲しみで震えていたからだろう。
瞳だけでなく、体中を震わせているその少女のそんな姿までが、この長身の美麗な…魔法使いにとっては愛しくて仕方ないのだが。

「ソフィー・・・?」

思わずその小さな体を抱き寄せようとして、腕を伸ばすが、その腕を思い切り叩かれる。

「触らないで!あんたなんかもう知らない! 」

情けなく泣き喚いていた魔法使いは、今度は蒼白になり何とか少女の癇癪を治めようと、笑顔を作る。
少ない休日を喧嘩で終わらせるなんて、まっぴらだったのだ。
しかし、少女は・・・ソフィーは不安げに瞳を曇らせ、そしてついにはぐっと唇を噛み締めて、じろりとハウルを睨みつけて。
吐き出すように呟く。

「・・・あんたにとって、あたしは・・・それだけの存在ってことだわ!…今までと同じ。代わりがいるなら、どうぞ!その方にお願いするのね!」

そう言うと、ソフィーはくるりと背を向けハウルを置いてずんずんと足を踏み鳴らして店へと続く廊下を歩いて行く。

「待って、待ってよ。ソフィー、僕はただ一緒に居たかっただけなんだよ!?」

その背中に訴えるが、ソフィーは振り返らずに声をあげる。

「あんたが代わりを見つけるなら、あたしも見つけることにするわ!」

思いもかけないソフィーの言葉に、追いかけようとしたハウルは思い切り椅子に足を引っ掛け、その場に膝を折る。店先に消えるソフィーの背中に左手を伸ばしながら。

「そ、そんな!ソフィー、ちょっと待って!」

バタン!と思い切り扉を閉められて、ハウルはその場に固まってしまう。そんな情けない姿をあざ笑うかのように、暖炉から冷ややかな声が響く。

「あんた馬鹿だろう?イヤだってソフィーが言った途端 『あんたがそんなんじゃ、代わりに誰かを頼んじゃうよ!』 とか言うんだから。ソフィーが怒って当然だろう!」
「だって、それはちょっぴりソフィーを脅かすつもりで・・・だってあんまりじゃないか!僕のお願いを無視して、ソフィーったらさ・・・!」

憐れっぽく嘆くハウルに、火の悪魔は容赦なく畳み掛ける。

「だからって、あんな言い方ないだろう?今までのあんたを知っていれば尚更、あの一言は冗談に聞こえないね。あんた知らないみたいだけど、たまーに、あんたの昔のオンナが花屋に来てるんだぜ?昔に限らず、あんたが愛想を振りまいて、骨抜きにしたオンナたちがこぞってな!」

カルシファーは炎の勢いをあげて、跪いて動けなくなっているハウルの鼻先まで飛んでくる。お前って本当に情けないやつだなあ、と呆れた声をあげる。

「素直じゃないソフィーはいつだって黙っているけどな、あれで結構傷付いてるんだぜ?」
「・・・・!なんてこと・・・!そんなことがあったなんて・・・!」

ソフィーに言い寄る男性客にばかりに神経を注いで【虫除け】を施していたものの、ソフィーに悪意を持つ女性客・・・しかも自分が今まで振ってきた女性たちなんてものは頭になかったハウルは、がっくりと肩を落とす。

「些細なことで、我儘ばっかり言ってるからだ!お前、本当に捨てられちまったらどうするんだ?ソフィーの代わりなんて、そうそう見つからないと思うぜ!あんたの我儘に付き合えるやつなんて・・・」

カルシファーが楽しそうに言うのも、ハウルの耳には届いていない。

ああ、ソフィー!
あんたの代わりなんて見つかるもんか!
僕の心臓を動かした、唯一人の人。
そんなあんたの代わりだって!?
なんであんなことを言ってしまったんだろう?
どうしよう!どうしよう!
口から出た言葉はもう仕舞えないのに・・・!
もしも。ありえないけど、もしもソフィーが他の誰かと恋をしたら?
僕の変わりに、誰かを好きになったら!?

「うわー!!!!!!!!!!!なんたる絶望!!!!!!!!!!!!」

突然頭をあげて叫ぶハウルに、カルシファーは追い討ちをかける。

「お、店にソフィーのことを狙ってるやつが来たみたいだぜ!!」

【虫除け】の呪いはおいらが解いておいたからな♪なんとも嬉しそうにカルシファーは言い残し、煙突から飛び出して行く。
がしがしと頭をかいて慌てて起き上がろうとするが・・・緑のネバネバが体中から出ていることに気がつく。
自分で足止めをしてしまっていることにハウルは悲鳴をあげる。

「ソフィー!!!!!!!!!!!!僕以外のオトコを好きになっちゃイヤだー!!!!!!!」


・・・憐れでお馬鹿な魔法使いは、自分自身を呪いながら・・・ソフィーが呆れて戻ってくるまでの1時間を緑のゼリーの中で待つのだった・・・。




end






はて、原因はなんだったんでしょう?(笑)