A secret feeling - その後で -
ソフィーがいつものように夕食の準備を始めると、ハウルはそっと、弟子に尋ねる。
「・・・ところでマイケル?<ハウル>はソフィーに酷いことはしなかったかい?」
そう問われマイケルは、僕だけ知らなかったなんて!と再び悔しそうに呟く。
「最初は凄く冷たかったんですよ。僕、てっきりお二人がケンカされてるのかと思いました。」
ハウルは「ああ、やっぱり!」と悲しそうな声を上げる。
「ソフィーは泣いてしまったかい?まったく<ハウル>は僕のソフィーを傷つけるなんて!」
ひどく憤慨するハウルに、マイケルは驚いて目をぱちくりさせ、慌てて付け加える。
「いいえ!その後は、いつも以上に仲良くされてました。ソフィーさんがご婦人方に囲まれている<ハウル>さんを助けたり。
ヤキモチを妬くソフィーさんなんて珍しくて、僕びっくりしちゃいまし・・・あ!!」
「ヤキモチ!?僕が囲まれていたって無視してるソフィーが!?」
マイケルは「しまった!」と口元を押さえるが、もう遅い。
「マイケル、どういうことさ!<ハウル>にヤキモチって!!まさかソフィー、<ハウル>に心を奪われちゃったんじゃないよね?」
マイケルの袖口を握り締め、その碧の瞳には動揺が広がる。
『唇を奪われましたよ』なんて言えない!!!
ねえ、マイケルどうなのさ!と必死になる師匠に曖昧な笑顔を浮かべてマイケルは視線を泳がす。
「何たる絶望!なんたる悲しみ!ソフィーが浮気するなんて!!」
緑のねばねばを今にも出しそうなハウルを見て、マイケルは慌ててソフィーを呼ぶ。
「ソフィーさん!大変です!!」
「なあに!?どうしたの?・・・!まあ、ハウル今度は一体どうしたって言うのよ!?」
ソフィーは闇の精霊を呼ぼうとするハウルの頬をそっと包み、覗き込む。
「ソフィーは僕と<ハウル>とどっちが好きなのさ!」
「はあ?」
「あんたは僕にヤキモチ妬いてくれた事なんかないのにさ!ああ、あんたはなんて浮気者なんだ!」
「何を言ってるの?」
「そりゃ、<ハウル>は僕だから恰好いいのは仕方ないけど!」
「あたしがいつ浮気したって・・・・!」
しかし、ソフィーは急に黙り込み真っ赤になって口元を押さえる。
そんなソフィーにハウルは目を見開いて、わなわなと身体を震わせ、絶叫する。
「ソフィー!!」
「もうっ!そんなに言うならあっちに行って浮気しちゃうからねっ!」
フンと鼻をならし、フライパンを手にするとソフィーは暖炉に向かう。
「わあん、ごめんよソフィー!」
・・・・マーサ・・・ハウルさんと<ハウル>さんに振り回された一日だったよ・・・・。
マイケルは心の中で呟いた。
end