ハイネさんが描いて下さった素敵な挿絵のお礼に・・・・
ハイネさんリクは「お買い物→デート」だったのですが・・・?
あ、あれれ・・・!?全然リクに添えてないよ><
ハイネさんごめんなさい・・・・!!







手を繋ごう?




「ねえ、ソフィー!今日はキングズベリーに買い物に行くよ!」
魔女の食事の介助をしていたソフィーに向かって、ハウルは極上の笑みでそう言うと驚くソフィーを無視してヒンにパンを切り分ける。
マルクルはベーコンを頬張ると、ハウルとソフィーを交互に見やる。
「・・・何を買いに行くの?」
ソフィーは困ったように俯きながら、魔女の口にスープを運ぶ。
「いろいろだよ?城はようやく建て直したけど、まだまだ必要なものがあるだろう?」
ね?とマルクルの頭を撫でて、ハウルは黒髪をさらさらと揺らして立ち上がる。
「だから今日はマルクルとマダムは留守番を頼むよ?」
「あら、マルクルもいてくれた方が荷物を持つのを頼めるじゃない?」
ソフィーが懇願するようにマルクルに微笑む。魔女は溜め息をついて、ソフィーの手を握る。
「ソフィー、今日はあんたたちで行っておいで。なーに、ハウルだって昼間からソフィーに迫ったりなんかするもんか。ねえ、そうだろう?ハウル」
まるで歌うように朗らかに魔女が言うと、ハウルは苦笑して暖炉の中でパンを頬張るカルシファーに声をかける。
「カルシファー、お湯を頼むよ。ソフィー、一時間後には出掛けようね?」
「なんだよ!おいら食事中だぞ!」
カルシファーの抗議は無視して、ハウルの青い瞳はソフィーを捕らえてきらりと光る。ソフィーの心臓がどきんと跳ねる。
「・・・わかったわ。ハウル。」
どぎまぎとするのは、昨晩のことを思い出しているからで・・・。
ほっとしたような笑顔のハウルに、やっぱりときめく心を抑えられずに、ソフィーは苦笑する。

・・・意識しすぎよ。ソフィー!

ぱん!と両手で自分の頬を叩くと、驚くマルクルとヒンに「おかわりはどう?」と笑顔で尋ねた。




「今日は何を買うの?」
緊張した面持ちのソフィーが、ハウルの袖をちょんと摘みためらいがちに尋ねる。
「うーん、ほらお皿とかコップとか。家族が増えて足りないからね?」
その指先までが酷く緊張しているのを感じたハウルは、泣きたいような気持ちになりながら昨晩の自分の行動に舌打つ。

ああ、失敗したよ。僕としたことが、ソフィーを警戒させてしまうなんてね・・・!

昨晩、いつものように「おやすみなさい」と言いに来たソフィーに・・・強請ってしまった『おやすみのキス』。
恥ずかしそうに、それでも頷いてくれたソフィーに・・・つい深めてしまった口付け・・・。
思わず欲張ったのが裏目に出て、涙目で思い切り突き飛ばされた。

ほんの少し、前に進みたかっただけなのに。

ハウルは自分より少し遅れて歩くソフィーをちらりと見やり、ふうっと溜め息をつく。
もうなんの障害もない恋のはずなのに・・・いや、だからこそ、急激に接近した二人の間には微妙な距離が生まれていた。
お互いに意識し合い、距離を縮めようとすればするほど、上手くいかない。

でもね、ソフィー。僕は少しでも前に進みたいよ?

ハウルは深呼吸すると立ち止まり、ソフィーも驚いたように立ち止まると、その手を握り締めて口付ける。
「ソフィーが迷子にならないようにね。いや、僕が迷子にならないようにかな?」
おどけて笑うハウルが覗き込むと・・・ソフィーもようやく微笑を見せる。
「・・・ソフィー・・・昨日のこと怒ってる?」
おずおずと尋ねるハウルがなんだか可愛らしくて、思わずソフィーは吹き出してしまう。
「あ、何だよ。ソフィー、ひどいじゃないか!」
「だって、ハウルのその顔・・・!まるで捨てられた子猫のようで・・・、とても魔法使いには見えないわ!」
銀色の髪がお日様の下できらきらと輝いて、その笑顔が一層眩しくて。ハウルはそっと目を細めていたが、急に真剣な表情になり、立ち止まってソフィーの髪を撫でる。
「その魔法使いに・・・ソフィーは呪いをかけちゃったんだよ?だから僕は謝らない。僕はずっと待ったんだ!ソフィーとこうして過ごせる時を。」
はっきりとそう告げたハウルの瞳は、本当に・・・捨てられた子猫のようでソフィーの胸は締め付けられる。

ああ、この人は。・・・ずっと待っていてくれたんだ・・・。

ソフィーは自分の胸を締め付ける源が・・・ハウルへの愛しさであることから逃げていた。
気恥ずかしさと、初めての恋への不安。
この美しい魔法使いに不釣合いな容姿へのコンプレックス。
深められた口付けで、混乱した心は素直になれずに不安ばかりを募らせた。

- こんな私でいいの?

そんなこと、初めからハウルは気にしていなかったのに。ただ私だから、待っていてくれたのに。

「だから、もう離さないよ?ソフィー。昨晩のことも謝らない!だって、もっと抱きしめたくて、キスしたくて、ずっと、ずっと一緒に居たいから。ソフィー、そんな僕は・・・嫌い?」
苦しそうに吐き出す言葉は、魔法使いハウルとしてじゃなく・・・ただのハウルとして。
弱々しく消えた最後の言葉が痛いくらいで。
ソフィーの心を縛り付け、甘い痛みとともに刻まれる。

この手をずっと離せないのは・・・私のほうだわ。

「・・・魔法なんて使えないのに・・・どうしてかしら?私がハウルに呪いを掛けたとしたら・・・・それは私が心の中で強く望んだからかしら?」
ソフィーはどきどきと激しく暴れる胸に堪えて、ハウルの頬に手を伸ばす。
「この人が・・・私を必要としますようにって。」
両手でそっと包み込むと、はっとしたようにハウルの顔が強張る。
「・・・どうか、私を・・・・スキになってって」
ハウルの瞳から不安の色を消し去りたくて、ソフィーは目一杯微笑むと囁くように告げる。
「謝らなくて・・・いいの。私こそ・・・突き飛ばして・・・ごめんなさい。」
ハウルの瞳は大きく見開かれ、食い入るようにソフィーを見つめている。
その瞳には見る見るうちに輝きが宿り、ソフィーを優しく見つめだす。
「だけどね?あんまり好きすぎて、心臓が壊れそうなの。だから、ゆっくり・・・その・・・」
真っ赤になりながら必死に言葉を探すソフィーを不意に抱きしめて。
ハウルは銀色の髪に口付ける。
「嬉しくて、嬉しくて!僕は今、心臓が止りそうだったよ!ソフィー!」
ハウルは人目も気にせずぎゅうぎゅうと抱きしめると、ふと目にした看板にぱあっと笑顔を見せる。
「ねえ!ソフィー。次はあの店ね!」
上機嫌なハウルが指差したその先は。

【ベビー用品専門店】

「なっ!ちょっと!ハウル!?」
驚くソフィーをそのまま抱きかかえ、ハウルは嬉しそうに歩き出す。
「だってさ、ソフィー!マルクルにも早く兄弟を作ってやりたいじゃないか!僕らの間には最早壁はないんだ!ね、今夜から同じ寝室でいいよね?」
「ハウル、私の話聞いていた!?」
ジタバタと暴れるソフィーの耳元で、ハウルは囁いた。
「僕らのベビーは、きっとめちゃくちゃカワイイよ!」
パシーン、と小気味よい音が響いたのは・・・言うまでもない。





end