河村霜柿の短歌集W(2005年〜)

2005年(平成17年)
 宝達志水町青少年国際交流推進事業(派遣事業)8月17日(水)〜27日(土)
 
8/17
・漆黒の海に伸びる連絡橋車のライトの流れるように
・関空へと海上走るスカイゲートブリッジ52階の眺望楽し
8/18
・フライトは9時間40分フィンランドの旅の一日ついに始まる
・フィンランドの現地時刻に針合わす今日は一日30時間
・雲間より森と湖の広がり見ゆ今日2回目の機内食となる
・ヴァンターの入国審査官は日本語で良い旅をと言いキートスと答える
・9時すぎて外まだ明るいヘルシンキ夕食の後街を歩く
8/19
・少しだけニシンの酢づけ皿に取り食すはフィンランドの名物という
・文字言葉わからず朝のバイキングニシンの酢づけを少しとりたり
・森を行くフリーウエイの延々とイイタラの街でリスが出迎え
・灼熱のガラス塊から自在に生む金梃の技間近に見ゆ
・イイタラのガラス工房訪れて職人技の数々を見る
・タンペレのホストファミリーと対面する生徒らは皆笑顔固くも
・緊張しながらも笑顔で抱き合う生徒らはそれぞれの家庭に引き取られていく
8/20
・湖と森の広がる町並みが眼下に広がるピニッキ展望台
・サンタラ家のすすめでほおばるドーナツは森と湖の国の味する
8/21
・じゅわっと立つ白い蒸気を楽しまん石に水撒くフィンランド式サウナ
・柄杓手に石に水撒くその瞬間熱気楽しむ二度目三度目
8/23
・沸き立つ雲彼方に見えるハメ城の湖水に映える姿緩やか
・湖畔に建つ古城に入りて古人の思いを描き石壁にもたれる
・釣り人の湖畔に腰掛け糸を垂る遠くの城を眺めながら
 
8/24 お別れパーティ
・お礼にと日本文化を紹介する子ら真剣に英語を使って
 
8/25
・ポルボォーの赤い倉庫を背景に記念写真のシャッターを切る。
・青空に白亜の聖堂浮かびたるエンパイヤ様式の質素の出で立ち
 
 2006年(平成18年)
 
 入学式 4/5
*やわらかな小雨に濡れる学舎に新入生の笑顔輝く
*式場の和服姿も艶やかに父母(ちちはは)祖父母(そふぼ)の笑顔溢れる
*衣擦れの音のかそけく入場する子らは両手を大きく振って
・衣擦れの音させ入る新入生十一人の眼キラリと光る
*やわらかな雨音のなか式辞読む生き生きとした返事もらって
*うれし顔不安げな顔様々に個性の見える十一人の子
*歓迎の言葉を述べる二年生十三名が声をそろえて
 
 鯉のぼりあげ 4/16
*笑み交わし親子でロープに取り付ける七十一尾の大小の鯉
*風来たり腹ふくらませ泳ぐ鯉大空に向け歓声の沸く
*屋上より泳ぐ姿をとらえんとカメラ構えてよき風を待つ
 
 花見給食 4/19 
*一年の給食運ぶ上級生ありがとうと笑顔で受け取る
*満開の桜の下で給食を楽しむ子らにうぐいすの鳴く
*青空と桜と微風とうぐいすと七十一人の花見給食
*風そよぎ桜花舞う校庭に花見給食の談笑広がる
 
 田植え 5/13
*一列に並んで足を踏み入れる田面の揺らぐ喚声広がり
*ころがしも田植えも上手い六年生カメラに向かってポーズをきめる
*なかなかに田に入れずに立ちつくす一年生に手を貸す先輩
*足抜けず田に立ちつくす一年生顔や手足も泥にまみれて
 
 校長室の窓 6/2
*ホトトギス鳴く声耳に窓辺寄る空青く澄み緑目に映ゆ
*児童らの喚声去りて校庭にホトトギスの声山より聞ゆ
 
 晃子さん結婚式 7/8
*赤い糸結ぶ儀式の厳かに二人の愛の永久に続かん
*手を添えてウェディングケーキに入刀する二人にカメラのフラッシュ続く
*笑みたたえ八坂の塔を背景に佇む姪をカメラにおさめる
 
 校長室の窓 7/25
・空青く雲白く湧き木々緑校長室の窓キャンバスに
・空青く雲白く湧き木々緑校長室の窓で切り取る
・切り取らん十三重の石塔を窓キャンバスに青白緑
・青空に雲湧き山の緑濃き十三重の石塔浮かぶ
*スダジイと十三重の石塔入れ構図とりたり校長室の窓で
*スダジイの丸く茂れり十三重の石塔の背より青空に伸び
・緑濃き山を背に建つ石塔を校長室の窓で切り取る
・緑濃き山背景に塔の建つ構図とりたり校長室の窓で
*青白緑窓キャンバスにスダジイと十三重の石塔配す
*久々の夏の陽ざしに賑わいしプールの歓声窓辺に届く
*雨上がりハクセキレイの訪れて虫ついばみし庭緑濃き
 
 城崎温泉旅行 8/7〜8/8
・真夏日の涼を求めて店に入り出石(いずし)名物皿そばを食う
・岩肌に整然となす玄武岩柱状節理の洞窟に驚く
・艶やかな輝き優し麦わらの伝統技見る伝承館にて
・ゆかた着て柳の揺れる城崎を妻と歩む暑き一日
・城崎の柳の揺れてゆかた着の妻と巡る七つの外湯
・城崎の柳の揺れてゆかた着の妻と吾は石橋に立つ
・湯上がりに城崎ジェラート一匙をすくいて吾に差し出す妻かな
・コウノトリ玄武洞等巡り来て妻と語らん城崎の湯で
・湯巡りで足が楽だと妻の言う三十年の疲れも癒さん
・三十年連れ添う妻とカナカナの声に目覚める城崎の朝
・伊根湾を囲む如くに建ち並ぶ舟屋の影の海面に光る
 
 稲刈り・芋掘り 9/21
・鎌をふる手つきも慣れてザクザクと稲刈る子らの額汗ばむ
・稲束をリレーの如く手渡してコンバインの軽快に動く
・畝くずし懸命に掘る全児童大小のイモたちまちに積む
・掘ったイモかかげて微笑む一年生両の手より大きくはみ出し