牧師室'15.12

◎ 2015.12 ◎

「何を思い巡らしていますか?」
彼がこのことを思い巡らしていたとき、主の使いが夢に現われて言った。
「ダビデの子ヨセフ。恐れないであなたの妻マリヤを迎えなさい。
その胎に宿っているものは聖霊によるのです。
(マタイの福音書1:20)


  メリークリスマス!!
  私たちの救い主、イエス・キリスト様の御降誕を心から喜びお祝い致します。
そして、そのクリスマスをお祝いしているあなた、今年も素敵なクリスマスをお迎えになった事と思います。
  さて、貴方にとってこの一年はどんな一年でしたか?
  私にとってこの一年も、嬉しい事、辛い事、悲しい事、たくさんの事を経験させていただきました。「数えてみよ主の恵み」と賛美しますが、数えきれません。
  でも、何はともあれ、今、こうしてこの年もクリスマスのお祝いをする事が出来る、それが何よりも感謝です。しかも、熊本ナザレン教会創立(1915年)100周年を迎えたこの年に、ここにおかれている事は何にも代えがたい神様からのクリスマスプレゼントであり大きな喜びです。
  そんな中で迎えた2015年のクリスマス。今年も、最初に登場してくるのは、マリヤとヨセフです。マタイの福音書は、マリヤが聖霊によって身重になった事を、知った「夫のヨセフは正しい人であって、彼女をさらし者にはしたくなかったので、内密に去らせようと決めた。」(1:19)と記しています。そのように決めたにもかかわらず、「この事を思い巡らしていた」(1:20)のです。
  「思い巡らす」とは、国語辞典によると「あれこれと考える。思案する。」とありますが、ヨセフは何を考え、思案していたのでしょう。
そのことは何も書いてありませんが、マリヤはひとりで子を産んで、その後の生活はいったいどうなるのだろう。生まれてくる子はどんな子なのか。この子の将来はと、あれこれ考え、思案していたのではないでしょうか。ヨセフは正しい人であったとありますが、ただ、正しいだけではなく、きっと優しく、思いやりのある人だったに違いないと思うのです。
  そんなヨセフの事を、一番よく知っておられたのは、神様です。
  ところで、映画化され、今正に上映されている「杉原 千畝(すぎはらちうね)」は、日本の官僚、外交官です。第二次世界大戦中、リトアニアのカウナス領事館に赴任していた杉原は、ナチス・ドイツの迫害によりポーランド等欧州各地から逃れてきた難民たちの窮状に同情。1940年7月から8月にかけて、外務省からの訓令に反して、大量のビザ(通過査証)を発給し、およそ6,000人にのぼる避難民を救ったことで知られています。
  彼は日本の法に仕える身でありましたが、法に背いてでも、目の前に居る難民を、見過ごしにする事が出来なかったのです。本当の正しさは、優しさに通じるのではないかと思わされます。
  ヨセフは、「マリヤがさらし者にされないために」という優しい心から、離縁を決心したのです。
  それでもなお、「思い巡らせ」ていたのです。その優しさが伝わってくるのではないでしょうか。
  そんなヨセフに、神様は使いを送るのです。「20彼がこのことを思い巡らしていたとき、主の使いが夢に現われて言った。「ダビデの子ヨセフ。恐れないであなたの妻マリヤを迎えなさい。その胎に宿っているものは聖霊によるのです。21マリヤは男の子を産みます。その名をイエスとつけなさい。この方こそ、ご自分の民をその罪から救ってくださる方です。」と告げます。
  さて、ヨセフは、ダビデの家系でしたから、旧約聖書の人物伝などはよく聞かされていたのではないでしょうか。その中には度々「夢」の話が出てきます。奇しくも同じ名前のヨセフが、夢を見たそのことが現実になった話など、よく知っていたでしょう。それは、
「5あるとき、ヨセフは夢を見て、それを兄たちに告げた。すると彼らは、ますます彼を憎むようになった。」という創世記37章に記されている話です。
  ですから、マリヤの夫ヨセフは、夢に現れて告げられた事を、事実として受け止める事が出来たに違いないと思うのです。
  神様は、今も、思い巡らし、あれこれ考え思案する者に、必要なら夢の中に現れ、そのお心をお示しになる事もおできになるお方です。
  あなたは今、何か思い巡らしている事がありますか?
  「思い巡らす」という事は、自分では答が見いだせないからあれこれ考え思案するのです。だったら、全てをご存じであられる、神様にお委ねするのです。
  共にいてくださる、インマヌエルであられるイエス様は「恐れる事はない。」と今も、貴方に語りかけてくださるお方なのです。