Bonnie’s Smile

 199910月、かねてから行ってみたかったアメリカ南部のディープサウスと呼ばれる地域、ルイジアナを旅する。目的地はボニー&クライドがテキサス・レンジャーに待ち伏せされ、射殺されたその場所である。
 
 ハリウッド映画が“ニューシネマ”と呼ばれ出したのは、たしか『イージーライダー』と、このボニー&クライドをテーマにした作品、フェイ・ダナウェイとウォーレン・ビューティー主演、アーサー・ペン監督によって世に出された傑作『俺たちに明日はない』がきっかけだったような気がする。

 その頃好きだった映画『バニシング・ポイント』や『明日に向かって撃て』にしてもそうだが、ベトナム戦争が泥沼化していた当時、その閉塞感からか刹那的な生き方をする若者が増え始め、そんな若者たちに支持される形でこれらの作品は生まれたわけだが、田舎のガキだったオレは政治的なことなど関係なく、ただ単にアウトローが格好良く見えてしょうがなかった。

 その後、時を経てボニー&クライドが実在のギャング・スターであったことを知ると、いつの日か彼等が最期を迎えた“その場所に自分も立ちたい”と考えるようになる。その頃に読んだ東理夫氏の著作「ガラクタをめぐる旅」(早川書房)のなかにボニー&クライドの記述があり、それもかなり追い風になったような気がする。

 アルカディアの町の地元新聞社や図書館をまわったところまでは良かったが、当時の資料集めに手間取り、町を出たのは陽も傾き始めた時間帯だった。
 「ギブスランドを南へ8マイル」と聞いてきたのに、それらしい場所は見当らず、不安な気持ちで現場の手前を行ったり来たりしてしまう。(実際には約10マイル南にその場所はあったのだ)
アメリカ人はよく言えばおおらかだけど、日本人からみるとかなりアバウトにみえる場合が多い。(逆からみれば日本人は几帳面だけど、悪く言えばせせこましいということか?)

 話しを戻そう。集めた資料のなかに彼等が射殺された翌日の新聞があった。
その写真をみて、オレは全身が粟だってしまった「ボニーが微笑んでいる!」
気のせい?いや、たしかに微笑んでいる。あんな殺され方をしたというのに、何故なんだろう・・・。


    



Are You Happy ?

 鬱蒼とした林のなかを延びる片側一車線の、ルイジアナ州道154号線。

緩いカーブを抜けると一気に視界が開け、そこから緩やかな起伏が続く直線になる。ふたりの乗ったフォードV8が見えはじめた瞬間から、ヒットマンたちが潜んでいたこの地点まで時速40マイルで走行したとして、約40秒…。
この間、林の中に身を伏せていたレンジャー達の、緊張感と心臓の高鳴りはどれほどだったろう。そして、待ち伏せされ、銃を乱射されたその瞬間ふたりの目の前に浮かんだ風景はどんなものだったのだろうか?

 1934523日ボニー・パーカーとクライド・バローはここで殺された―

 ひとつだけ確かなことといえば、蜂の巣にされた瞬間、ボニー&クライドはヒーローになったということだ。ボニーの微笑みが意味するもの。そう、彼女は自分が死んでヒーローになることを、殺される前から知っていたに違いない!

モニュメントの前にたたずんだオレはボニーへ語りかける「Are You Happy ?…と。
ボニーはオレにこう言い返す「
So…What About You ?