WSeikoの九州爆笑ミステリー

WSeikoの冒険 その一

 2006年8月


北海道で不思議な体験をしてから1ヶ月過ぎようとしている

8月もあと少し 朝晩は随分涼しくなり うるさい蝉に変わり虫の声が心地よい。

山里の小さな団地は毎日ゆったりと時間が流れる。

平和で穏やかだけど「退屈」の文字が躍る。

あれほど熱中してたファイナルファンタジーのXUも終わってしまった。

昼下がり ぼんやりバソコンの椅子に座りこんでいたら玄関のチャイムが賑やかに鳴った。

誰だろう? 慌てて2階から駆け降りる

「は〜い どなた〜? えっ! まさかっ! 幻? Seikoさん?」

「来ちゃった〜飛行機乗り継いで 空港からタクシーよ 遠かったわ〜

急に遅い夏休みの休暇が取れたのよ ちょこちゃんびっくりさせようと思って黙って来たのそれに是非見てもらいたい物があるの」

Seikoさんは大きなバッグ3個と一緒にタクシーから下りてきた。

相変わらず色白で淡いピンク系の衣装が憎らしい位似合ってる。

「わ〜〜きゃ〜〜!!!!〜〜夢みたいよ〜今ねSeikoさんの事考えてたんだよ

上がって上がって〜はっきりいって豪邸じゃなくて悪いけど どうぞ〜! 我が家の特等席ウッドデッキへどうぞ! 雨が降らない

限りここで食事するのよ〜」

Seikoさん 物珍しげにきょろきょろ見回してる。

「ここへ座って眺めの良い場所に好きな花を植えてるのよ〜お金全然掛けてないのよ〜」

「うん 見ればわかるわ〜ウフフ 雑草も花のうちね〜お金かけた庭もすばらしいけど こんなぐちゃぐちゃな庭も面白いわね」

相変わら褒め上手なSeikoさんである

「そうそう どんな雑草でも花を咲かせるのよ〜通路の両側に並べた石は川から拾って来たの 冷たいきれいな川で好みの石を

見つけるのも凄く楽しいのよ」

「ね〜長旅で疲れたでしょう お飲み物何が良い? Seikoさんはハーブティがお好みだったよね?」

あそこ一帯がハーブ畑なのよ  今朝ねペパーミントの葉っぱ水に入れて冷蔵庫にいれてあるの〜水出しね これに氷蜂蜜入れ

とたの〜疲れた時にさっぱりして美味しいのよ どうぞ」

「冷たくてミントの香りが爽やかでおいしいわ〜」

Seikoさん美味しそうに飲み干してくれた。明日はレモングラス ローズマリーなどフレッシュハーブで入れてあげよう

「そうそう〜お土産持ってきたのよ〜」

Seikoさんバックから イクラの瓶詰め 干し貝柱 チーズなどどっさり

「生物のカニ 大間のまぐろ 甘エビ ホタテ ウニ サーモンなどクール宅急便で送ったからね」

「すっごい嬉しい そんな高級品食べた事ないわ〜」

あの「まいう丼」が頭に浮かんでぐっとつばを飲み込んだ。

 食いたい!!!



「ところでSeikoさん夕食まで時間があるから一風呂浴びて来ない? 直ぐ近くに長湯温泉があるのよ」

「温泉は勿論行きたいけどその前に見せたいものがあるのよ〜今度来たのもそれが目的よ今持ってくるね」

Seikoさんはバックから何やらゴソゴソ探している。

「え?まさかっ!・・・・いつかみたいな変な骨董ではないよね?」

「そのまさかなのよ〜今度は絶対お宝よ〜見て腰抜かさないでね〜」

Seikoさんはやや頬を紅潮させていかにも自信ありげだった。

「でもさ〜この間の平安時代の公家の「つげの入れ歯」とやらは偽物掴まされたのでしょう  あんな気色の悪い物 良く買ったわ

ね〜しかも500万円も出してさ〜」

「あれは失敗だったわね〜オ〜〜ホッホ〜」

Seikoさんは笑い方も上品なのである。

「まだあるわ〜ほら〜1年前のあれ! 中国の民の時代とかの蓋の付いた陶器制の不思議な容器 ・・・蓋が付いてるから清潔 

とってもレトロな感じでえらくお気に入りでしたよね〜確か美味しいミネラル水を入れて飲んでいたのよね〜それがさ〜中国の上

流階級の夜の部屋用の便器だなんてね〜!」

「ぎゃ〜〜〜もう〜それ言わないで〜胸糞悪くなるわ〜〜オエ〜〜〜!オエ〜〜ッ!」

「いや〜ん吐かないで〜〜! 今度の自信の品はな〜に? 早く見せて〜」

『慌てない! 慌てない!慌てる乞食は貰いが少ない!そう言えば乞食っていま死語よね〜」

「そう言えば乞食は見かけないよね?

Seikoさん大事そうにバッグから包みを取り出した。

油紙が幾重にも巻かれているのを丁寧に剥がしていく。剥がした紙はごっそりなのに中身がなかなか出て来ない。

「ね〜Seikoさん 中まで紙と違うの〜心配になってきたわ〜」

「大丈夫よ〜よ ま、見ていて〜」

最後の紙をめくると黄ばんだ絹の布に包まれた物体が出てきた。

上の部分に紐が付いている。 紐を解くとはらりと長細い布 フンドシみたいな雰囲気だ。

ん?何だかちょっと変な臭いがする。

中身は?

「ぎゃ〜〜な〜に これ!何だか見れば見るほどアレに見える」

死ぬほど可笑しくなった!でも 真剣なSeikoさんの顔を見るとぐっと笑いを我慢する。でも似てるんだな〜!

大体フンドシにくるまれてる事態が変なお宝だ。

また変な物掴まされたのではないかと不安になる。

大富豪のお嬢様に育った彼女は人を疑う事を知らないのである

「あのね〜表は一寸は変だけど問題はこの裏側よ 怪しげな呪文みたいな言葉が掘ってあるでしょ? この謎を解いたら物凄い

お宝ゲットかもよ〜我々ゲーマー 謎解きには努力と時間は惜しまないでしょう?」

それがさぁ ゲームの世界じゃなくて現実よ〜!!こんなスリルとサスペンスそうそう転がってるもんじゃないわよね。だから2人で

力あわせてね解いて見ない?」

「うん!うん!それはワクワク 久しぶりに鳥肌立って来たわ〜!やろうよ」

謎の物体をひっくり返すと裏は平らになっていて細かい文字が刻み込まれている

ルーペで拡大して見る。

・・・・・・・・・・これを持ちて薄暗き湿りたる穴掻き分け合体せよ しからば汝歓喜の声高らかに・・・・・・・


「ね〜なんかさ〜意味深なお言葉よね これどっかの穴へ突っ込めってことよね。

一番下の所に大きな文字で豊後の国って書いてあるでしょう。

だから大分と関係あると思うのよ〜!」

「その穴が問題よね〜〜湿りたる穴なんてどこにあるのよ〜? ここ!!なんちゃって〜(〃^∇^)o_彡☆あははははっ 」

「ちょっと〜ちょこちゃんふざけてる場合じゃないよ〜もっと真剣に考えて〜」

いつも優等生なSeikoさんである。

「あ、ここに紋章みたいなのがあるわ〜どこかで見たような?」

「どこ〜?どこ〜?どこ〜〜〜?早く思い出して〜〜ガンバレ〜〜〜!」

Seikoさんは目を輝かせて身を乗り出した。

「え〜〜と? う〜〜と? ダメだ〜!! まいう丼食わないと思い出せない! 宅急便 何時来るの?」

「こんな時に食い気に走るか〜〜? もう〜信じられないわ〜! ま、今夜は寝て明日改めて考える?」

「さんせ〜い! Seikoさんは2階 右側の部屋のゲストルームにベッドを用意してるからどうぞ ゆっくりおやすみなさいね」



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田舎の朝は賑やかだ

5時半だというのに大きなお世話の有線の目覚まし音楽 牧場の朝のメロディーおまけに どこかのにわとりがコケッココウー 牛

までモーモー鳴いてる

あら〜寝ボスケSeikoさんがもう〜起きてる どうしたんだろう?

「ん?Seikoさん 早いね 良く眠れた?」

「それどころじゃないのよ〜昨夜 出たのよ〜!」

「出たって〜何が? ここはゴキブリも蚊もいないはずだけど?」

「ちがう! ちがう〜!! これよ〜!」

Seikoさんは両手を前にだらっと出して・・・ウ・ラ・メ・シイ〜〜〜のポーズ!

「夜中にね〜あっちから気色の悪いうなり声がしたのよ〜!か細い声と太い声がね。怖くて頭から布団被って一晩中震えていた

の〜!もしかしたらこの部屋 曰く因縁のある部屋じゃないの〜〜こわ〜〜〜!」

「え〜〜〜っ! この部屋には寝たことないけど・・・・どっちの方角から?」

「あっちよ〜」

Seikoさんは東側の窓を怖そうに指差す

窓を開けて見るととお隣のまっさんのお宅 松田さんだけど皆さんまっさんと呼んでいる。

体格が良くいかにも好色そうな顔をしている。

まだお若いのに子供が12人! この少子化の時代に見上げたお方なのです

「Seikoさん 原因わかったわ〜ほらあの方よ〜近所の奥様方がうわさしてるのを聞いた事あるわ〜仲良きことは美しきかなよね

昨夜の気色悪い声の原因」だと思うよ」


「な〜んだ そういうことだったの〜羨ましいわ〜!」

二人とも同じ事考えていたので思い切り笑った

朝食を済ませてゆっくりしていたら待望の黒ネコさんがやってきた

旨そうな海鮮の数々! 今食べたばかりなのに我慢出来なくてSeikoさんにまいう丼作ってもらった。 もう一度 しつこく「まいう丼」




「ね〜Seikoさん 美味しいの食べたら頭が冴えてきたわ〜あの謎解き始めようよ Seikoさんもでしょう?」

「OK そう〜来なくっちゃ〜ハイこれよ〜!」

ルーペで丹念に調べる

一段と細かい文字で
・・・・・・・下より始まりて上にイズル・・・・・

「うそ〜〜順番は上から攻めて最後が下よね〜」

Seikoさん何かと勘違いしてるようだ うふふ。


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「閃いたわ〜!・・・・・らでまやのじくかんじ・・・・・・ これ下から・・・つまり逆ら読めって事ね 

じんかくじのやまでら 神角寺の山寺 近くのあるのよ

昔お城があったそうで とっても景色のいい所よ」

「凄い!!! 場所の目安が付いたみたいね〜お〜〜ドキドキする 早速行って見ようよ」

「そんなに遠くないから散歩しながら歩いて行こうよ 20分くらいだけどSeikoさん歩けるかな〜?」

「何おっしゃいますか〜わらわは30歳よ このカモシカのような足見てよ」

いきなりSeikoさんヤマンバ走りで猛ダッシ 小川沿いの山道 見る見る遠ざか

っていった。
    


やっとのと思いで後を追った。

岩清水の湧き出ている所でSeikoさん例の物体を持って何やらごそごそしてる

「ちょこちゃん何やらここ怪しいよ〜! じめじめしてるし〜もさっとしたコケが生えてお誂え向きな穴まであるわ〜」

「う〜〜やっぱりきれいに合体しないわ〜違うみたいね〜」

穴があれば気になって試したくなるSeikoさんです。

小川のせせらぎを左手にして緑の木漏れ日の坂道を登って行く。


遠くの森から かっこうの甲高い鳴き声が響きわたる。

汗ばんだ顔に川からの風がとっても心地よい。

目的地のお寺は直ぐそこ 周りの山や町 遠くに空と一つになった青い海がが広っている

神角寺の山門は仁王さまが出迎えてくれる。

以前は風雨に耐えて山門を守り続けていたけど『国指定重要文化財』になって

からは厳重なケースに収められて画像もとれない。

これはケース入れる前の画像です。

 鎌倉時代の木彫りの仁王像




上が口を開けた(阿形) 下が口を閉じた(うん型)

阿吽の呼吸とはこの仁王さまからきてるらしい。

「ね〜女性の仁王さまはいないよね〜」

「そうね〜女の仁王さまだったらこれピッタリはまりそうなのにね」

Seikoさんは女仁王様だったら何処にはめようと思っているのだろう〜(*´ー`) フッ

入れた途端 ガオ〜〜!なんて うなって両手あげられたら腰が抜けるね」

「その前に罰があたって石にされるかも〜」

確かにゲームではあり得る 直ぐゲーム感覚で物事を考える二人である。

この季節ここへ参拝する人は まばらだけど石楠花が有名なこの寺は花の時期だけは観光地と化して仁王さまも退屈しないだろう。

「随分時代を感じるものばかりだけど肝腎なな手がかり中々見つからないね」

「この上の所に祠や道祖神が無数に並んでる所が怪しいわ〜」

「わ〜〜!それよ〜早く行ってみようよ ワクワクするわ〜〜!」

お寺を下に眺めながら古木の生い茂ったを薄暗い石段を登って行くと開けた明るい場所に出る

そこは360度パノラマ 連なる山々 緑の田んぼ 街 絶景が広がる。

「わ〜〜〜やっぱり北海道とも青森とも違う雰囲気 ここが城跡ね ここへ立ってお姫様もこの景色眺めてたのね〜不思議な気分よ」

Seikoさんは遠い昔を見つめるような視線で見晴らし台に立っていた

見晴らし台の横でお弁当広げている集団がいる

良く見たらまっさんの一家である 子供が12人 その内双子が3組 

また奥様のお腹が大きい感じで13人目御懐妊の模様だ。

子供さん達 可愛くて凄い食欲!まるまる太ってるわ〜!

それに引き換え度重なる出産で奥様は・・・・! 

「ね〜昨夜の気色悪い声の方々なの〜?なんか〜場面とか想像すると今の生面目な顔とのギャップであまりにも大きいので・・・昨夜もあんな真面目顔であの・・・その〜〜・・・・」

「Seikoさん詳しく言わないでもアレでいいのよ〜あはははっ!」

「そっか〜アレは便利な言葉だね〜おほっほっほっほ〜〜」

「私達まだ未経験だから・・・・おっほっほっほっほ〜!」

まっさんちの一番大きい男の子が走ってきた。

「ね〜おばちゃん それ面白い形してるね ちょっと貸して〜」

「おばちゃんじゃないの! お姉ちゃんと呼びなさい あ、ダメ〜返して〜」

男の子はSeikoさんの大事なお宝持って走り去った

「待て〜〜〜このクソガキは〜〜返して〜〜〜」

Seikoさんはヤマンバ走りで追いかけて行った。

20分後に しょんぼり帰って来たSeikoさん

「どうしたの Seikoさん お宝は?」

「あの子が 古井戸のところでずっこけて その拍子にお宝が井戸の中に飛び込んだの もう〜取れないわ 随分深いみたいだし〜!

でも〜あの子が落ちなくてほっとしてるわ〜私が追いかけたのもいけなかったのよ〜」

「久しぶりにわくわくした分だけお得だったわ〜また何か探してくるからまた一緒に冒険しようぜ〜!」

「楽しかったわ〜ありがとうちょこちゃん」

「こっちこそ久しぶりに楽しかった〜〜♪

今夜はバーべキューして温泉いこうね」
  
その二に続く
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