
私は思った。こんな偶然ってあるもの?
思い出の場所に、思い出のボール……しかもベンチじゃなく、私がいつも本を読んでいた木の根元にわざわざ置かれたような読みかけらしき本……私は開いたままふせてあった本を手にとった。
―――え?
中身は真っ白。どのページも。どのページも……
―――どういうこと?
頭の中も真っ白になる。
「どーしたの?」
私はその声にふと我に返って、顔を上げた。
……男……?ッて!!!隣に馬ッ!!!?ただの男じゃない!何かのお祭りなの?
私は一度落ち着いて目を閉じ、ゆっくり開いた。状況はそのまま。
お祭りじゃない。そのことは周りの景色からも判断できる。さっきまでいたあのお気に入りの場所じゃない。
ただ一つ、あの大きな木をのぞいては。
―――もう、何が起きてるのよ……さっぱり訳わかんない……
私は地面に座り込んだ。
「おぉいッ!!大丈夫かよ!?」
―――あぁ。そういえば男が一人いたっけ。声かけられてたけど、パニくっててシカトしちゃった……
私は真っ白になった頭を起こした。
「大丈夫だと思います?」私は彼に尋ねた。
「……??」
明らかに困っている……
―――そりゃそうだ。彼に聞いても困るに決まっている。わかっているんだけど……
自分で自分に突っ込みいれている自分が虚しい。
「……ってことは、大丈夫じゃないんだ?」
彼は少し笑いながら言った。
「そうみたいです。」
もうパニックで自分でも何を言っているのか、さっぱりだ。
「あははッ。面白い子だね。俺の名前はアルタイル。旅をしているんだ。」
旅?アルタイル?ますますパニックだ……
「君の名前は?」
「あ……名前?曽山来夢……」
とにかくパニクってて、イントネーションがおかしいのが自分でもわかる。
「ライム……?」
「うん……来夢。」
「で?ライム。何が大丈夫じゃないの?良かったら話してよ。」
何が大丈夫じゃないのか?
それさえわからんのだよ。
しかも、何で初対面なのにこんなに気安く話しかけてくるわけ?親切心?確かに勢いで自己紹介はしちゃったけど……
私はとりあえずゆっくりと深呼吸をした。
辺りは森みたいになっている。もう、完璧私のお気に入りの場所ではない。ってことは迷子……??いや、迷子って誰かとはぐれたり、知らない道を歩き回っちゃったりしてなるものだけど、私誰ともはぐれていないし、そもそも歩いてもいないし。
でも、他にそれらしい言葉が見当たらなかった。
「迷子……みたいです……」
―――と、言ったものの、問題がもしそれだけだったら単純なのに。と、思った。
「そっかぁ……でも、どうしようもないけどなぁ。」
問題はたくさんある。それだけはわかる。
「ねぇ、そういえば、手に何持ってんの?」
突然聞かれてドキッとする。
「あ――――。これ?」
そういえば、真っ白の本を手に持っていた。
「…本ですけど。落ちてたんです。」
私はぶっきらぼうにそう言って、本をパラパラめくった。
――――あ。
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