なつかしい弛め弁の話

2008年3月27日

白井 昭(名古屋レールアーカイブス)

同じ自動ブレーキ付きの車両でも客貨車は電車とちがい切り離すと自力で空気ブレーキを弛めることができない。そこで切り難し、留置後移動、入換するには補助空気溜の上にある弛め弁を引いて空制を緩める必要がある。

緩め弁からは車体の左右に引棒ハンドルが出ていてどちら側からも扱える。

この扱いには経験を要し、ブレーキ管圧の高い時は制御弁が排気し始めればよいが、低圧の時や枝管コック締切時などは充分排気する要がある。貨車や井川線のK弁は一段緩めできる。弛めを忘れて車両を引きずると車輪を傷める。

かっては長大貨物が駅に止まりD51が引き上げ、B6をつなぐうちに操車係(カッポレ)達はコマ鼠のごと<貨車の間を走り回って空制を弛めていく。ジューというBCの排気音の消えぬ間に早くもB6はドラフトをとどろかせて入換を開始する。活気に満ちた駅(例えば浜松)の光景が目に浮かぶ。

弛め弁はJRワム80000、大井川オハ35、井川線などに生きている。写真のホキ700ではハンドル先を白塗りしているが、これは戦後のことで大井川のオハ35等は昔の黒のままが多い。井川縁はハンドル位置の車外に白のマークを記している。

この弁は保安上重要なので決してさわらないで下さい。


大井川ホキ989(昭和37年・浜松工場製)
中・補助空気溜、その上・弛め弁、右・K制御弁(三動弁)


白井 昭:
名古屋レールアーカイブス会員、産業考古学会会員,中部産業遺産研究会会員,鉄道友の会参与,海外鉄道研究会会員,日本ナショナルトラスト会員.


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