2007年8月3日
白井 昭(名古屋レールアーカイブス)
古い歴史を持ち、広く使われた磁石式電話機は減少したものの今も健在で、大井川鐵道では鉄道電話、『鉄電』として役目を果たしている。
磁石式電話機は手回しの磁石発電機で呼び出し符号を鳴らして送信するもので、戦前の木箱はプラスチックに変わったが機能は変わりない。木箱の電話機は新金谷駅前の展示場に展示している。
通信線は架線柱に添架した裸線からケーブルに変わったが、線路長500mおきの電柱に設けられた端子と携帯電話により列車防護など緊急時やエ事現場など臨時用に使用できる。大井川線金谷〜千頭の加入箇所は約30箇所で、列車との通話は無線も併用される。戦後まで通信筒も用いたが今はなく、列車便は今も現役である。以前は貨物輸送のため国鉄と大量の電信の交信があったが、両鉄道間は鉄電で中継したため、大井川線各駅に電信略号表(ウヤ:運休、シナヤ:新金谷など)を備えイロハのイとやっていた。
磁石式の呼び出し符号は手回しで発信するがその鳴り具合で相手が分かり、ベルの傍受で交信中の相手や異常の発生も分かった。
昔は長距離の鉄電もあり豊川鉄道〜三信鉄道など、雨の日は誘導の嵐の中のかすかな声は私には分からないが、職員は何とか聞き取っていた。今は送受話器の改善などで楽になった。情報システムの劇的な変遷のなかで鉄電は最も身近なもので、思い出はつきない。
写真1 現場の磁石式電話機(直下に符号表がある) | 写真2 木製の電話機(新金谷駅前 プラザロコ展示) |
図1 大井川線鉄電の呼び出し符号 |
白井 昭:
名古屋レールアーカイブス会員、産業考古学会会員,中部産業遺産研究会会員,鉄道友の会参与,海外鉄道研究会会員,日本ナショナルトラスト会員.
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