地方鉄道の再生を目指して
白井 昭
〜2001年9月30日開催 乗って残そう 北勢線フォーラム 基調講演より〜


 ご紹介を頂いた白井でございます。
 当年とって74歳になります。ちょうど先週イギリスでやっぱりこういう講演をして、「俺は74」、だったら「オー、若い」ってやられまして、まあ「サンキュー」ということで、それからぴたっと講演が上手く進み始めたわけであります。

 私は長年ローカル鉄道の存続に向けての実務をやって参りました。それからこの廃止問題についてもいくつも関わりまして、見事成功存続したものもあるし、見事失敗して無くなっちゃったものもありますので、そういう実例を元にお話をしたい。

 その実例を元に今考えますと、現在の北勢線の場合はですね、非常にもうあまり議論をあれこれやっておる時ではないと。対策をどんどん実施すべき時期であるということが、非常に強く感じられるわけであります。従って、今日の私の話もほとんどHOW TO、どうするかというようなところへ走っていってしまいますので、基調講演にしては非常に格調低く、相応しくないんですが、まあそんな基調講演だから一般論、理屈をいろいろ言っている段階では私は無いというふうに判定をしておる訳であります。

 この問題の根っこをどう考えていくかということについては、どうしてもやはり世界を見る必要があると。たくさんの国が長い歴史を持っている訳ですから、そこがどうなっているか、どうしても欧米はやっぱり日本の先生であると。
 要するに欧米崇拝ではなくして、やはり歴史的事実としてですね、何十年先をヨーロッパもアメリカも歩いております。モータリゼーションはアメリカでは大正時代から、ヨーロッパでも戦前から進みまして、さらには戦後は猛烈に進んで鉄道はどんどん廃止になると。ところが昭和50年くらいからいろいろ行き詰まってくると。例えばアメリカですと、「我々は月へ行くことはできる。しかし隣の町へ行くことはできない、車では」というようなことになってきまして、だんだん電車、特に北勢線クラスのちっちゃい電車が急速に新設、延長、復活が非常に盛んになって。まあ、今でも欧米でそりゃ廃止になる鉄道もゼロではないですが、大勢としてはどんどん新しい鉄道が増えておるというのが、今世界の大勢であると。こういうことを1つまず知って頂く必要があると思います。
 それはなぜかと言うと、ヨーロッパ、アメリカはモータリゼーションを卒業しました。日本ではまだING、進行形。まだまだこれからなんです。そのへんが、多分違っておりまして、国の政策が車中心だから、何を言われてもここへ来るにも車に頼るしかないように今は出来ております。しかし欧米では今は車と電車は共存、それからひとつ車としては少しでも車を減らそうと言うはっきりした方向付けに向かってきており訳であります。

 ひとつの町の例として、ロサンゼルスを挙げますと、この町はだだっ広い。愛知県全部くらいの所に町がパーっとあるんですね。そうして蜘蛛の巣みたいなインターチェンジとかですね。要するに車の町だと。車でロサンゼルスの町ができたと思って、間違って思っている人が多いんですが。実はこれは明治から大正に世界一の電車、要するにまあ、愛知三重県くらい蜘蛛の巣のように2000キロの世界一の電車が引かれて、それであの町ができたんですね。ところがモータリゼーションでご立派なことに全部やめちゃった。まあ、アメリカというのはやるときは徹底的にやるんですね。
 それをやめた結果はどうかというと、さっきの「しまった」ということになりまして。今まだ大したことはないのですが、ぼつぼつ電車をまた作りつつあるというのが今の姿です。その電車をなんと日本の日本車輌、豊川の工場で作ってるんですね。ところが日本人はそれをどう思っとるかと言うと、すぐそこで作っているけども、これでドルを儲けたと思っているんですね。そうじゃなくて、どうして今頃アメリカが電車を作るの。それは時代の先端を行っているわけですね。その意味は全然わからない。誠に残念だし、まことに恥ずかしいと。こういう状態であります。
 それでロサンゼルスの電車もちょっと10年くらい前に暴動がありましたね、焼き討ち。あれで僕は電車も焼かれたかなと思って、今度また行ってみたら、ひとつも焼かれていない。何でだったら、結局向こうの暴動起こしたコーリアンとかメキシカンとかの黒人の人たちが、この電車は俺れたちの電車だと。壊しちゃいかんと。それで暴動で町は焼けちゃったけど、電車は明くる日から走り始めています。そのくらいっみんなの足ということになっています。今日、スライドを持ってきて、自転車でさっと乗れるとかね、いろんなところを見せようと思ったけど、どうも時間見たらとてもだめなもんで、それはちょっとパスした訳です。

 それから、先進国では例えばまあ、これはきりがないんですが、スイスは先生の中でも大先生で、まあ言ってみれば、学べば学ぶほど福祉、公共、そういった点は本当によく工夫しています。全国に鉄道、リフト、郵便バス、郵便バスというのは面白いのね、郵便配るのに全国行きますね。全国バス行くのだったら、お客さん乗せて行けばいいじゃん。全国隈無くバスが行かない所はない。電車も同じように「よくこんなところで電車やってるなあ」と思うような所までやめないですね。ですけど、それはただこだわりでやっている。1つのポリシーを持ってやっている。スイスに過疎という言葉はありません。やっぱり終戦後日本は東洋のスイスになれたけども、今でもあれは理想の国だと。

 それから、そういうことでいろいろ外国をみてきて欲しいんですけど、そのときに観光バスでロサンゼルスだ、ピャーっと回って、ああディズニーランドだというんでは全然分かりません。やっぱり自分一人で自分で切符を買って、電車に乗ってもらわないと。それでどんなやつが乗っていてどんなふうかということを見ないと。是非この問題は国内でやってちゃだめなんで、やっぱり欧米がどうなっているかというのを見れば、それは我々が20年後くらいに歩いて行く道なんです。残念ながらね、事実ですから、それは。そういう見地は持って頂きたいと思います。

 欧米の新線の新しい電車を作るお金はどうしているかというと、普通の税とかあるいは目的税。ロサンゼルスは目的税の消費税ですね。電車を作るだけに消費税を、すごい、20%かな。もちろん市民投票をやってね。それから面白いのはバイパスをもう1丁作ろうと。これはやめたと。またすぐに満員だと。その銭で代わりに電車を作ろうと。都心の桑名の真ん中にどえらい地下駐車場を作ろう。すごい金だ。やめた。電車を作ろう。それからサッカー場欲しいけど、まあいいわ。電車にしよう。というようないろんな財源を考えております。

 そこからその経営主体は、まあここでも一番問題になる経営主体はどこかと言うと、私鉄は無いことはないが、本当の私鉄というのは本当に少ないのでありまして、大抵はトランジット・オーソリティーと言うんで。まあなんて言うか、交通何とかというような訳のわからんやつが多い訳で。中には名前は株式会社となってますが、見ると中身はずいぶんと、ほとんど県がやっとるようなやつとかですね、いうようなことになって。国は割合ノータッチです。だいたい州、日本で言えば県がほとんど丸抱えしているような。まあもちろん市も多少は。ロサンゼルスみたいな金持ちのでっかい市は、ほとんど市でやっています。ニューヨークもそうですね。

 それから新車とか設備の改良は州で100%くらい負担しています。それは道路を作るのと同じで、社会資本であるという見解であります。収支は黒字がまあ100に1つくらいあるかも知らんが、だいたい費用のはんぶんくらい収入があるというのが平均値ですね。それより悪いところもあるし、いいところもあります。もちろん良くなるように、一生懸命努力をしておると。その赤字の穴埋めは何をやっとるかと言うと、州と市で負担をしておる。それが世界の大勢です。どこも全部それが常識です。ですからそれを要求するときは、皆さんも胸を張って堂々と、これは世界の定番だよということでやってもらいたい。

 それから補助とは考えていない。
 ある時、ある株式会社みたいな社長さんに「あなたのところは州から手厚い保護を、援助があっていいですね」って言ったらものすごい社長怒りましてね。「僕はもう立派にやってると。そういうことはあってもそんな他人にヘルプを受けてるなんていうのは侮辱だ」ということで、どえらい怒られて訂正しました。そんな州や市が電車を新車で全部作るとか当たり前のことだ」と。「それを立派に無事故でやっているんだから誉めてもらいたい」といういことで叱られました。ああ、なるほど。だからそこらも聞きに行っても、議会なんかに聞きに行っても、下手に「補助金はどんだけですか」と。「補助金はゼロです」、「補助じゃない」と、そんなものはね。「おかしいな」というようなことでね。良く聞かんと分からない。

 それから運賃は日本より安い。老人割引、電車は増発、床の低い新車を入れると。サービスをして車からで電車へと。こういうことで今一生懸命やっている真っ最中ですね。それで車から電車へというのはですね、これは誰がやってるかというと、私が見ると、歴史が動かしていると、人がやってるんじゃないと。いわゆる歴史的必然というやつですね。誰かえらい人が考えてやっている訳ではなく自然に動いている。
 今は日本も車中心でも、やがて変わってきます。幕府がいくら頑張っても明治維新はやってきました。それから日本は、じゃ交通は遅れてる、そうじゃない。すべて日本は後進国です。
 まあそのことは確認して。その中でなんとか焦らずに追いついていこうと、こういう努力をして行きたいものだなあと。こんな風に思います。

 それからあとからも議論になると思いますが、電車はやめた方がいいのか、こういうことですが。
 まあやめるのは簡単でありますが、赤字だからやめるというのは小学生の答えである。本当にやめていいのか、次の世代への展望と責任を持った上で、大人の答えとしてどうか。これは一番大事なことです。これは皆さんもっともっと、まあこれから先生からいろいろ教えがあると思いますけども。これがぐらぐらしてると、最後にいってぽしゃっちゃうということは間違いないと思います。これはたくさんあってあとで、まただぶるので簡単にしますと、例えば交通事情だけが表立っているが、その余波はものすごく大きいですね。渋滞、公害、老人福祉、電車があれば電車で老人が出て行って活動できれば、病気だって減ると。医療費も減るよと。こういうようなことで、要するに欧米では鉄道というのは鉄道の問題では無くて、幅広い眼で見ておるということであります。

 次に北勢線について考えますと。

 まず全員でこの緊急性ということを確認して頂きたい。どうも皆さんのあれを見ていると、ちょっと大変失礼ですが、のんびりしすぎてるんじゃないか、もう時間は無いですよと。

 結論は何かったら、やめるしかないですよと。そのへんをしっかり認識してやったらんと、今日竹鼻線、揖斐線最後で、ものすごくみんな行って賑わってますけども、そういう時期はすぐ来ますよと。こういうことを確認しないと。近鉄さんとしては、届け出を出せばすぐ1年、今日出せば来年の今日には廃止できるわけでありますし。その赤字をどんどん続けとるのは、近鉄さんにしてみれば株主さんに対して、この中にも株主さんたくさんいらっしゃると思うが、まあ明らかに背任行為ですね、これは。ということですから、これはまあやめるしかない。

 それを存続するにはすごい時間がかかるんですよ。やめる方は届け出1年。残るようにするには時間がかかる。今、お祭り騒ぎ、何とかシンポジウムだとかね。乗って残そう運動だとかね、何とか総決起大会だとかね。そんなことやっとる場合ではないと私思うんですね。どうやったら残せるか。それでその方法をどんどん進めていかなきゃ、せっかく上手くお膳立ては出来たけど、そのときは振り遅れだよと、野球で言えばね。アウトだということになる可能性が大きい。なぜこんなにのろいかというと、住民の皆さんの緊急性の認識がちょっと足りないのではないかと言うことですから、まあ評論家なんかやっとっては絶対にだめだと。

 それから、当事者の確認、相手は誰かと、これを常にしっかり認識していって頂きたい。ここのところはまた一つ鍵になるが、多分相手は近鉄でないことは確かである。近鉄は法的に出せばすぐやめられるんだから、そういうところを相手にもうちょっともがいてくださいだとか、負担額を減らして下さいなんて言っっとっては、これはいわゆるピント外れであるということで、当事者は誰かというと、多分皆さん自身であるというふうに私は思う訳でありますが。どうも今のところでその形態がはっきり進んでいないというのは、これは本当は非常にまずい、危険なことだなと思います。

 まあ残す方法はいろいろありまして、自分たちで北勢鉄道をまた造ってやる方法と、近鉄さんに赤字の何億円かを全部補助してやる方法と。まあ大体2つだと思います。それでその補助を負けてくれという議論もありますが、これは通らん話でありまして。さっき言ったように、負けたらこれまたそれやった人は、近鉄会社では株主に背任行為になっちゃうわけですから。やるんだったら全額補助して。やってる所は群馬県、島根県、たくさん前例はあります。そういう方法もあるし、あるいは自分たちでやると。今、福井県の方は鉄道会社、これはまあ非常に鉄道会社の方がしっかりしてるんですね。とにかくやめさせて頂きますと。廃止届けも来月と言っても明日か、中旬には出しますと。期限が来たら廃止を致しますと。あと走らせてもいいし、やめてもいいし、ご自由に地元でやってくださいと。こういうことになっているんですが、ここも本質的には何ら変わりないんですね。そのへんがもしやるとしとる方が、かえって私はマイナスになるんじゃないかと。当事者がはっきりしないと、例えば電車にクーラーを付けた方がいいよとか言ったってね、誰に付けてくれと言うんだと。金竜はやめるよと言ってるよと。そんなことどこへ言ったって県を含めてね、ということです。

 その次に私の経験からいいくと、運動はあくまで正道でいくこと。常に俺は正道かどうか、これを確認してもらう。個人プレーあるいは政治利用、趣味的などに脱線した場合は必ず失敗します。それから進めていく上で一番大事なのは、県との直結大勢を固めると。これは県に見てもらうしかしょうがないです。「県も大変でしょ」なんて言う必要はありません。権利があります、皆さんはね。堂々と言えばいいんですね。今言った世界全部そうなんですからね。知事さんから議員さんから交通政策課まで、とにかく幅広く密接に協力して。だから県との協働歩調が乱れたところはみんな失敗してます。

 最優先事項は受け皿の確定。受け皿を近鉄にやってもらうか、何か作るか。こういうことです。受け皿の中で今イギリスなんかでやっているPFIというやつがあるんですが。これはちょっとね、これをやったらどうかという先生もあるんですが、ちょっと違う、馴染まないんですね。ただ仲間に入って頂く、株主に財界の援助、三重県の経済同友会がいいか商工会議所がいいか何がいいか知りませんが、企業の方にこんな時ですから、そんな大きなことはできんでしょうけども、何とか仲間で助けて下さいよと。そうすると県と市とと町と財界と、どういう組み立てにするのかということを、とにかく具体的にどんどん詰めてやって頂きたい。もし全金額を補助して近鉄にやってもらうにしても、近鉄がやっている限りは車両とか施設の国からの補助金は出ません。北勢鉄道になれば出ます。まあそこらいっぺんよく考えて。だが要はあまり長く議論している暇はないですよ、というのが問題点ですね。

 それからもし独立してやる場合に、線路、車両の資産を譲り受けるのは無料かどうか。あるいは条件はどうかと、このへんももう早く詰めておく必要があります。福井の方では鉄道会社は全部30億円かなんかで買い取ってくれと。それで県の方はそれはちょっと高すぎると。だいたい作ったときは全部おらのじいさんがここの駅の地所は全部寄付しただよと。もう度高い株も田んぼ売って買ったんだよと。そのときの恩義ををもって何言っとるだというようなことを言われるけど。鉄道の方は「では結構ですよ、裁判をたてましょう」と。まだたてるまではいってませんけどね。だけどこれは私有財産ですからね。まあ今近鉄さんはただでいいよと言ってらっしゃるようだけどね。そうだとすれば大変ありがたいことであって、銭よこせと言われても当たり前なんだけど。とにかくそれを一刻も早くはっきりしておく必要があると、こういうふうに思います。それから、もし自分でやるとしても、ノウハウとか技術の指導にはやっぱり近鉄さんにいろいろご面倒を多少お願いしたいと言うことを思います。

 それからもう1つは、鉄道をやっていく場合に独自の経営計画、資金計画、それから赤字の分担でもめるんですね、どこもね。今福井の方では某町長の一人だけね、「おら、電車なんかいらんで負担はしない」と。そりゃね、電車なくならんと見てるわけね。その町長は自分とこだけ負担を減らそうと思って。それでみんな怒っちゃってね。もめてるんですけどね。

 それからそのあとの今の対象ははっきり言うと、烏合の衆ですね。このあと鉄道をやる人、経営者、責任者、名前は知事参加なんかになるでしょうけども、本当にやるのは誰かと。これが大切だがなかなか非常に難しいと。だけどそれを決めない限りは今日出る・・・含めてこれを評論家にしか過ぎないと。何の実行発言権もないと。こういうことであります。

 まだいろんなアイデアたくさんありますけどね、それはみんな枝葉末節であって、一番大事なのは今まで申し上げたことである。そのアイデア先行でいくとね、 これは必ず失敗すると。

 例えば「お前、大井川鐵道でSLで成功しとるじゃないか」と。
 それはSLにしてもしっかりしたそろばん勘定があって、あらゆる検討をした結果成功しとるんであって、すなわちこれは数字が第一であると。それもなくてやたら何かやったらいいだろうなんていうのは、無責任極まりない話であって、また事実それでやってったのはもう必ず、まあうっかりすれば会社が破産に導かれる。こういうことは間違いないのであります。要するに夢も必要です。夢なくして歩みはありませんが、夢も必要だが、夢に酔ってはだめであると、こういうことです。それから鉄道ファンという世界、皆さん知らないかも知れませんが、こんな趣向でいったやつは、事実私自身が鉄道ファンでありましてね、そのために大変に何遍か大失敗をしている訳でありまして、これはだめ。

 それから軽便鉄道だからどうのこうのと、これもあまり関係ありません。そんなことは鉄道であるということは本質的に同じであります。あとは敦賀の小浜線というのが、ものすごい地元が大金を負担して電気に、電車にしたんですね。ですけども北勢線は今もう電化できている。ATSも付いている。こういう点からいくと、北勢線は非常にしっかり、まあクーラーが無いとかぼろっちいとか言うけどね、実は非常に。大井川鐵道はATSがありません。今日衝突するかも知れません。そんなのに比べればずっとしっかりしておりわけであります。あと何分でしょうか、係の方、もう終わりましたか? タイムキーパーの人、おりませんか? 何分だったかな? まだちょっとあるね。じゃあもうちょいといきましょう。

 それからもし、どういうふうにやるにしても、できれば独立して人件費の切り下げ、これはまだね、非常に大きくて。例えば人件費を全員給料3割下げてやればね、赤字が3割減るんじゃないんですね。支出がそれだけ減りますから、赤字はうんと大幅に急激に下がります。それから、一方は収入を増やすほうですね。「乗って残そう」は僕はやめちゃいかんですよ、一番原点、一番大事ですけど。中期的には何かやったら増えるかもしらんが、まだまだ減ります。それはモータリゼーションがアイエヌジーであるから、まだ必ず減ります。これはもう予言します。ずっと先になると、アメリカなんかヨーロッパも今増えてるんですね。だけどまだそれは20年とかなんとか、そんなスパンがかかるんじゃないかというふうに思います。

 ただ、すぐ見合いそうなのはハイキングで、随分町長さんいろいろやってるけどね、まだまだ工夫すれば沢山取れる要素はある。50分だったかな、はいありがとう、すいません。どうだかすごいハイキングブームでですね、ちょっとうまくやれば1000人、2000人と来ます。これは外から来たお客さんですからね。しかも地元へもいろいろ食い物や土産やお金を落として頂けて、地元を知って頂いて、こんなハイキングブームだったらどういう訳か、じきにぽしゃるだろうと思ってたら、ますます盛んですから、これはもっともっといろいろなメニューを考えてもらうといいと思います。

 また元に戻っちゃって、北勢線をどういう格好でやっていくといいかというと、赤字分を件で補助してもらうというのは、さっきの群馬県、島根県などがあるし、青森でもやってます。まあそれでもいいです。そういうことになればね、一番楽ちんです。ただこれは企業努力の方にちょっと問題があるんで、例えば赤字が5億出るよと、それを件が補填してくれると言うんだったら、私はそこの社長をやりたいですね。というのはもうそのいぐさはいくらでもつくんですよ。こういう努力、こうなったけどなおかつすいません、5億赤です、下さい、ありがとうございました。こんな楽な社長はないですね。どこにそんな会社ありますか。どうしてもこれは安易になりがちなんですね。このへんをどうやっていくかというのはね、実に難しい。

 特に鉄道というのは特殊部隊なんですね、経営が。欧米はそこをどうやってやっているか知らんがね。だからさっきの社長にヘルプ受け取るって僕はがぜん怒られたけど、非常に感心するんです。それだけ意欲持ってやってる訳ですね。必死に。モラルが非常に高い訳です。それはどういうシステムになっているか、聞いてもなかなかややこしくて分からない。それはもう昭和の初年に鉄道全部やめちゃって、それからよく考えたらこれはいかんなあということで、鉄道が来たから、まあ筋金入りというかね、焼き入りなんですね。そういういろんな、多分汚職もあったし、いろいろあったと思うんですね。そういうのを経て今日に来てるもんですからね。ただ、彼らにしてみれば今の制度は当たり前だと。こういうことになっているんですがね。どうもよく、なかなかどこを聞いてもよく分からないんですが、実はそこが問題なんだと。

 だから独立の会社でやればね、これも同じ問題出ますよ。今の3セクはやめましょうと、小泉内閣以下自治省もね、国の傍系の機関は全部原則つぶしましょうと。なぜならば効率が悪いと。安住しちゃってると、こういうことなんです。これは全部そうではないんです。3セクでも赤字でも本当にいるものはいるんです。それまで切っちゃったら自殺行為。角を食べて牛を殺すとこういうことになるから。これなんかいるんです、電車は。当然赤字です。お客は当然減ります。その辺はきれい事言わずにね、本当のところをやっぱりさらけ出してもらいたい。ヨーロッパの例を見りゃ、そんなものは明確に分かります。その中で残していくというためにはどうあるべきだと言うところを明確にして、毅然として3セクでも何でもいいから進んでいって頂きたい。

 日本の3セクの悪いのは、特にヨーロッパ、アメリカ以上に役所の悪いところが入って来ちゃうと。社長さんは副知事さんだと。それで実務をやってる専務は役所の古手だと。こうなるとなかなか上手く難しいんです。一番いいのはそこの樽見鉄道の亡くなった林社長さんって、これはJRから来た方ですがね、この人はすごかったですね。本当に命がけでやっておられたんですが、命がけでやり過ぎて現職で先年お亡くなりになったんですが。ああいう方が見つかるといいんですが、なかなかそういう方は少ないんですね。何年かたったら退職金もらって、はあどうもお世話になりましたというようなのが多いわけであります。

 それでこの存続問題で今本当の最高潮に来てるのが、まあ名鉄は今夜終車をもって廃止ですから。これはゲームセットですね。福井県は今盛り上がりで、国会議員の先生、知事さん、議会、市長必死です。行くともう北勢線で言うと、各駅にでっかいのぼりが立ってます。「残そう京福電車」赤いのぼり、黄色いのぼりいっぱい立ってる。町中にも立ってる。何万人の署名運動と言うことでやってますが、まあ私の見るところでは、存続組が烏合の衆であると。評論家みたいなことばっかり言ってるやつとかね。そういうことで今言った実務をてきぱき進めていない。いくらやったって、それは寝言にしか過ぎない。こういうことであればですが、今度はいよいよ鉄道会社の方がもう明日出しますよと、やめますよと、こう来たもんだからさすがに呑気な連中も、こりゃいかんというんで一生懸命やって。五分五分ですね、残るか残らないか。多分残りそうな。

 その会社はですね、何億円もらってもやることはまっぴらお断りしますと、絶対お断りしますと、こうはっきり。この方がいいんですよ、明確でね。うじゃうじゃ言っとってもらうと余計問題は悪くなります。従って、もう県でやるしかしょうがないと。こういうことで多分そういう方向で、今年中くらいには決まるんではないかなと。もしこれが決まったら、一つ主立った方は勉強に行って頂きたいと思います。もし失敗で無くなっちゃった場合は何で失敗したかと。もし残った場合はどうして残ったかと。これを学びに行って頂きたい。これは日本の地方鉄道の存続問題の1つの福井県はモデルだと思います。他の県は簡単に赤字補助、はいどうぞと補助しちゃった。今度補助する相手がね、まっぴらお断りと、何億円貰ってもと言うことでありますから。

 ひとつそういうことで、今頃こうしたらいいとか、こうあるべきだという夢を論じている段階はもう過ぎて折から、受け皿をどうするかとか、経済界との話し合いですね。そのためには、まず何か主体性を決めとかなければいかんですね。誰がやるだろうなんて言うんじゃね。それからアイデアだなんとか言ってる段階ではない。結論として私は次世代への責任を考えれば、結論として何とか残したいものと思います。従って、とにかくさっきから言った、全てについて正道に立って努力を進めて頂くことを願っております。

慌てたおかげでちょっと5分くらい早く終わったけど、これで終わりましたので、終了に致します。
ありがとうございました。


乗って残そう北勢線フォーラム 平成13年9月30日(日) 午後2時〜
東員町総合文化センター ひばりホール
近鉄北勢線利用促進協議会


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