パノラマカーの終焉とパッケージ式制御器

2005年4月7日

白井 昭(中部産業遺産研究会・名古屋レールアーカイブス)

 いよいよ名鉄パノラマカー(7000形・7500形)が全廃、産業遺産への道を歩むことになったが、1961年以来、長く使いこなした名鉄の補修技術陣に経緯を表したい。パノラマカーは全電動車という編成の上、精巧な制御器を使用していることから、保守の上では必ずしも楽なものではなかった。
 パノラマカーの中で特筆すべき技術に『パッケージコントローラー』があった。この方式はアメリカでは数多く普及したものの、日本では各鉄道会社とも試験的な採用に止まった。実車に大量採用したのは名鉄のみで、その成功は技術史上の意義が大きい。
 1940〜1950年頃までの電車の制御器は機能分散形で、抵抗制御、界磁制御、前後進、電制切替などの制御を独立した機器(例えばレバーサ)でやっていた。これを1セットの機械にまとめ、一箱(ワンパッケージ)化したものが『パッケージ式』で、この原型は米GE社により1937年頃から試用されていた。
 しかし名鉄ではパノラマカーなどの高度な機能が求められる電車に大量に採用した。これらはGEによる設計、東芝による製作の『MCM形コントローラ』で、5500形、7000形、7700形、8800形など200両以上に1959年以来長年に渡り採用され、成果を上げた。
 これは日本の電鉄史上特筆すべきことで、例えば国鉄でも最初の振子式電車(591系試験電車)にはスペースの生みだしのためMCMを使ったが、わずか1編成(3両)に終わった。
 MCMコントロールは、半導体による制御器が使われる以前における最後のシステムとしてコンパクトにまとめられ、アメリカらしくないスイス的な精巧さを見ることができる。さらにそこには抵抗器やブロワまでが1セットにパッケージされている。
 パノラマカーの全廃は、日本のパッケージコントローラーの全廃を意味しており、電鉄技術史上、一つの時代を画することと言える。


白井 昭:
名古屋レールアーカイブス会員、産業考古学会会員,中部産業遺産研究会会員,鉄道友の会参与,海外鉄道研究会会員,日本ナショナルトラスト会員.


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