大井川鐵道で歴史的鐵道部品を保存

白井 昭(名古屋レールアーカイブス)

 大井川鐵道では今回、空気ブレーキの部品5種類の保存を始めた。
 これらは現在では他には無い希少なコレクションで、電鉄技術史上、空気ブレーキの歴史を語る上で非常に重要なものである。

J−5三動弁(Triple Valve)
 米General Electric Co.(以下、GE社)の設計になるAMJブレーキ装置(原名はAVR)用の三動弁である。
 1910年頃開発され、名鉄では昭和10(1935)年のモ800形電車で採用され、その後デキ600形やモ3100形にも使われたが、後にAMMブレーキに換装された。

M−2−A三動弁(Triple Valve)
 米Westinghouse Airbreak Co.(以下、WH社)の設計で日本の私鉄に多く使われたAMMブレーキ装置用の三動弁である。
 AMMは名鉄では1923(大正12)年のク2000形から使われ昭和20年代には名鉄電車の主力を占めた。その三動弁にはM-1、M-2-A、M-2-B、M-2-Cの4種があった。

D−1非常弁(Emergency Valve)
 WH社のSMEブレーキ用の非常弁で、名鉄モ700形や瀬戸線、名古屋市電3000形、戦前の京王電車など小形の電車に用いられた。
 操縦性が良いため長く愛用されたが戦後は新型に変わった。保存されているものは国産(ライセンス生産)品である

砲金製B−3−A車掌弁(Conducters Valve)
 戦前より車掌や乗客が列車を非常停車させるために車内に車掌弁が設けられていた。日本ではWH社設計のB-3-A形が多く使われたが、ここに示すものはWH社製の輸入品で珍しいものである。WH社のマークの鋳出しが貴重である。

ME-23ブレーキ弁(Break Valve)
 省線電車は当初GE社系のブレーキを使ってきたが、1926(大正15)年頃よりWH社系に切り替え、かつ国産化を進めた。ここにあるものはその最初期の製品で奇跡的に生き残ったものである。歴史を示すメーカースプレートが貴重である。


 保存場所は大井川鐵道新金谷駅前のプラザロコ内である。見学と部品の説明には電子メールによる事前の予約が必要である。

【申し込み・問い合わせ先】
大井川鐵道株式会社 E-mail : d-sl@oigawa-railway.co.jp


白井 昭:
名古屋レールアーカイブス会員、産業考古学会会員,中部産業遺産研究会会員,鉄道友の会参与,海外鉄道研究会会員,日本ナショナルトラスト会員.


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