電鉄技術史情報(35)
白井 昭
2004/4/20
ED31の電気品について
- 元伊那電のED31形ELの電気品の現況情報こ電空単位スイッチとした本と、電磁単位スイッチの2種あり情報を集めていたが、現近江鉄道のED31は昔のままの電磁単位スイッチであることが確認された。
従って今後誤った情報が広まらないよう努めて戴きたい。
- ED31の電気品は芝浦製ではあるがその設計は殆ど省電モハ1と同一で、制御装置はGE社のMオートマチックコントロール(ノッチ進め付き)、空制はGEのAVR(日本国鉄名AMJ)であるが、これがED31が1923年以来80年の長命を保っている一因と考えられる。
スイスの保存トロバス アメリカを走る
- 昨秋スイスのバスファンクラブがローザンヌの古い連結トロリーバスをアメ リカのシーショートロリーミュージアムに寄付した。
編成は653(M)+950(T)で今春からは動態保存の目玉として活躍する。
- 連接トロバスは各国で活躍中であり、2階建トロバスはイギリスで保存されているが、連結トロバスは珍しい。
- ローザンヌのトロバスは1932年に始まったが、今回アメリカへ来たものは1963年製で、編成はトレーラを切り離してM車単行でも運転できる。
▲アメリカで試運転中の連結トロリーバス
釣掛モーターによる110キロ運転
- 1924年頃よりアメリカの一部電車は130Km/h(以下キロ)時代になり、ついで1927年頃より日本の関西私鉄の一部が110キロ時代となった。アメリカではショーとして飛行機と電車のレースが行われて電車は130〜140キロ出したことは有名で、1931年、ブリルの「ビュレット」(ブリル89E台車付き)は130キロで走るなど全般に高速化したが130キロ(80マイル)は大量に普及はし なかった。
- イギリスは昔から高速運転でSLは120キロから140キロで運転されたが、1940年頃からのサザン鉄道の急行電車は食堂車はあるものの120キロ級でSLより遅かった。
- 日本のEMUの高速化は専ら関西私鉄で実用化され阪急、新京阪、近鉄、阪和が110キロを実用したのに対し省電、関東、中部私鉄(名鉄、伊勢電)は一段のろかった。
戦前の電車には速度計がなく実測によったのでその速度は正確と思う。
但し阪神の100キロ運転はその騒音と小型車から他の110キロに匹敵する感じがした。
- 関西私鉄華やかなりし頃の「待たずに乗れる阪神電車、待っても早い阪急電車」は今も語り草である。
- 以上のように国鉄のSLが95キロの足かせで世界の時代遅れになつていたの に対し、関西私鉄は中々よくやっていたと言える。
常用と瞬間風速
- 戦前関西以外でも時に110キロを出すことはあったが、実用に普及したものでなく、この点誤り伝えられないよう書き残すこととした。
- 戦前の名鉄3400形は今より足が速く110キロで走り、3800形ですら条件(電圧と運転士)により110キロ出ることもあったが、決して関西のように普遍的に実用されたことはない。
常用か瞬速かよく見定める必要がある。
- 1942年製のエレクトロライナー(WN)が170キロ出したのも記録用で実用は140キロで走っていた、旧こだま、SEの145キロ、163キロと同様である。
これからの速度向上
- 」R西日本(WN)に次いでつくば急行やE531系(TD)の130キロ化など在来線も130〜140キロでないと時代遅れになる(特こ車に対して)であろう。
投資なくして増収なし、最高速度以上に余地の大きい曲線の速度向上にも努めるペきである。
以上
白井 昭:
産業考古学会会員,中部産業遺産研究会会員,鉄道友の会参与,海外鉄道研究会会員,日本ナショナルトラスト会員.
白井昭氏の論文・著作が含まれる書籍が中部産業遺産研究会の書籍販売のホームページから入手可能です。
http://www2.wbs.ne.jp/~t-long/tyusanken/syohan.htm
郵便による申し込みの場合は次の通りです。
〒439-0031 静岡県小笠郡菊川町加茂1607-1 中部産業遺産研究会 永井 唐九郎
(代金の振り込み用紙は書籍に同梱されます)
「12号蒸気機関車」(シンポジウム日本の技術史をみる眼第22回報告集)(共著)
「明治村東京駅転車台」(シンポジウム日本の技術史をみる眼第22回報告集)(共著)
「大井川鐵道千頭駅のイギリス製転車台に関する調査報告」(産業遺産研究第10号)(共著)
「電車用空気ブレーキの系譜−AMPからHSCまで−」(産業遺産研究第9号)
「大井川鉄道の産業遺産と千頭駅SL資料館」(産業遺産研究第9号)
「名鉄パノラマカーの開発と設計」(シンポジウム日本の技術史をみる眼第18回報告集)
「地名の交通と運輸-大井川鉄道の建設と地名駅」(シンポジウム日本の技術史をみる眼第17回報告集)
「大井川鉄道と電気事業」(中部の電力のあゆみ第6回講演報告資料集)
「大井川鐵道」(愛知の産業遺産を歩く)
「千頭森林鉄道と智者山軌道」(産業遺産研究第6号)
Copyright 2002-2004 SHIRAI Akira, All rights
reserved.