電鉄技術史情報27

白井 昭

1.サザンパシ300は電車列車か

 現在動態保存中の元サザンパシフィック鉄道300系は近鉄2200に似た所のある電車である。製造初年は1912年と古いが鋼製21m、2扉転換クロス、ALF制御、AMUブレーキを備え、近鉄2200の元祖にも見える。列車形電車が普及した早い方と思うが、列車形電車の始まりにつき情報をお待ちします。

2.PCMとPMコントロール

 ともにGEが開発した油圧式カムによる多段制御器であるが、PCMは1925年頃よりアメリカ各地の進歩的電車(軽量高加速)に用いられ、戦後すぐからNY地下鉄で大量使用された。
 しかしにほんにPCMはなく似た構造のPMコントロール(油圧多段式)が1937年より阪神70形に仕様、戦後は阪堺線に多く使われた。
 アメリカではPMを見なかったが、PCMとPMとどう異なるか不明。名鉄では始めPBもPMと呼んでいた。

◎戦後NY地下鉄でPCMを入れたR12〜17形車は床が高いので2軸の接触器はPA、PBのように上下2列の可能性あり、どなたかNYの保存車を見て頂けませんか。

3.阪堺のPMコントロール

 今も日本に残るPMコントロールは阪堺350形5両のみとなった。阪堺300形は廃車されたので、これはGEの設計を残す貴重な存在となった。
 何らかの方法で制御装置1セットでも残したい。
 なお、阪堺150形1両は保存の動きあり、これも数少ないMKの残ることが期待される。

4.電鉄技術史博物館

 日本にも今後電鉄技術史協会、電鉄技術士博物館の設立が望ましい−−遺言。近日某誌に私の遺言が載る予定。

5.電鉄技術史博物館

 GEのMCMコントロールは全体にPCMの流れを汲んで油圧から電動化している。アメリカでは大量のMCMがNY、ボストンなどに使われたが、日本でのオリジナルは阪神ジェットカー、国鉄591、神戸1150など僅かで、その流れを継ぐのは東芝MC、MMコントロールであり、名鉄パノラマカーもMCを使用している。従って、名鉄の場合のMCMの流れを汲むMC形パッケージコントローラと呼ぶと分かりよいかと考えるが、これでよいのかご意見を下さい。
 MCMシステムやパーツはPCMの流れを汲むノルマルクローズコンタクタ、カム軸2回転制御など日本のメーカーにも多く取り入れられて影響を与えた。
 またMCMでは逆転、界磁、電制制御を1軸で制御するKMCが特色で、これも日本のメーカーに使われたが、その特許についてやKMCの初年などは不明である。

6.大井川で見られる空制

 大井川鐵道には数少なくなった歴史的空制や部品があるので、ご来訪時は注目してください。
《空制》ET6、EL14、EL6、AMA、AV、KC、KD、AR(近鉄421形)、HSC
《Comp》HD25(6010)、D3F(421,16000、E100)、C1000(21000)、HB1500(京阪)、AK3(CP30)、311、312、E103
《ブレーキ弁》ME23、ME24C、ME36、ME38、K14
      C10はH6、S6(脚台なし)
その他、北陸6000はSLE(セルフラップ)をAMAに改造、今は廃車。

7.別件、珍しい写真を発見

 名鉄のDL、DC61の写真発見、昭和40年8月、東名古屋港で白井写す。昭和38年加藤製、3軸、25ton、DMH17、180PS、稀少ではないが名鉄の3軸DLはこれ1両のみ。昭和40年頃は名鉄貨物の最盛期。
 DB1〜DB75、GB1〜GBxまであり、これ以後DLは現象を辿った。

2003年2月24日


白井 昭:
大井川鐵道株式会社顧問,産業考古学会会員,中部産業遺産研究会会員,鉄道友の会参与,海外鉄道研究会会員,日本ナショナルトラスト会員.


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