岡崎南公園に保存中の名鉄401号電車

2007年5月9日

白井 昭(名古屋レールアーカイブス)


写真1 岡崎南公園に保存中の名鉄401号電車

■はじめに
 
 現在、岡崎市の南公園交通広場に保存、展示中の電車は、名古屋鉄道(以下「名鉄」という)のモ400形401号といい、名鉄史上最初の連接車(Articulated Car)として、歴史的に貴重な存在である。連接車とは、二つの車体の間を一つの台車で支えるもので、多くの特色があるが、ボギー車に比べ少数派に属している。しかし、最近、欧米では2〜6車体の長い連接車(列車)が新しい都市交通の主役(いわゆるライトレール:LightRailTransit)として活躍している。
 

■モ400形の生い立ち
 
 名鉄モ400形(2代目)は、第二次大戦後の揖斐・谷汲線(岐鼻地区)に多数あったモ70形(のちのモ120形)鋼製2軸電車の車体と機器を転用し、2両の70形を1組の連接車にする計画により生まれた。
 この2軸車は振動が大きく、スピードが出せなかったので、その全車を連接化してスピードアップを図ろうとした。 
 モ401号は1952(昭和27)年に完成し成績も良かったが、この頃、名鉄本線で多数のボギー車が余剰となり、このプロジェクトは1両の試作のみで終わりとなった。

写真2 モ400形の前身、モ70形(のちのモ120形128号)2軸電車 (写真撮影:白井昭・昭和32年)


写真3 揖斐線を行くモ401号連接車 (写真撮影:白井昭・昭和32年)

■イギリスから輸入した電気品
 1927(昭和2)年製造のモ70形電車はEnglish Electric(略称E.E.)会社の最新式電気品を使用した。この頃、多くの電鉄では国産の機器を用いたが、岐阜はイギリスから高性能の機器を輸入した。
 その制御器(Controller)はM-15-C形という自動加速式で、内容的にも当時として洗練された設計であった。M-15-Cは1925(大正14)年の名鉄モ450形から輸入され継電器、逆転器などもワンボックス化して小型化し、マスターコントローラー自体に手動加速のレバーがついていた。限流継電器は感度の良いバランス形を用いた。
 またモ70形は日本では数少ないイギリス製の電磁レールブレーキを備えていた。これは急勾配の谷汲線に備えたもので、一部の電車には戦後まで残っていた。このうちの5両程(75−79といわれる)は1939〜1943(昭和14〜18)年までウエスチングハウス社の大きなパンタをつけ、旧西尾線の岡崎新〜西尾〜港前を走った。この時運転士は電車は小さいが制御は自動加速で名鉄豊橋線より優れものだと自慢していた。この電車は豊川線を経て戦後岐阜へ里帰りした。

写真4 モ401号のEnglish Electric社製のコントローラ (写真撮影:堀幸夫・平成18年)
 

写真5 モ401号の主制御器 (写真撮影:堀幸夫・平成18年)

■保存車の重要性と今後
 この優れたイギリス製制御器も今日本に残るのは岡崎の1両のみで、モ401号の車両とも貴重な産業遺産であり、大切に保存伝承されることを願っている。
 M-15コントローラーのルーツについては今後イギリスの保存車の調査に期待したい。


白井 昭:
名古屋レールアーカイブス会員、産業考古学会会員,中部産業遺産研究会会員,鉄道友の会参与,海外鉄道研究会会員,日本ナショナルトラスト会員.


[ 白井昭電子博物館トップへ | 中部産業遺産研究会ホームページ | メールでのご意見・お問い合わせ ]

Copyright 2007 SHIRAI Akira, All rights reserved.