黄水晶(Citrine)
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| マデイラ・シトリン 2.35ct 12x7mm Rio Grande do Sul Brazil |
シトリン 8.43ct 14mm Bahia Brazil |
19600ctの黄水晶ルース 25.5x14.1x10cm |
ファントムを持つレモン水晶 12.6ct 26x15.6mm Brazil |
プラシオライト 33.55ct 28x19mm Dodo Ural Mtns. Russia |
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| 一般的な黄水晶の群晶 Irai,Rio Grande do Sul Brazil |
研磨加工された黄水晶 高さ 47mm Bahia Brazil |
Ox-Blood(牡牛の血)色 の黄水晶の結晶とルース Campo Belo Minas Gerais,Brazil |
煙水晶の上の黄水晶 3cm Lake George Colorado U.S.A. |
高さ 32mm Charcas Mexico |
シトリン(黄水晶)とはその色合いからラテン語の”Citrus:柑橘類”に因む命名です。
柑橘類に多彩な色合いがあるように,黄水晶にも冒頭の写真のように黄金,赤褐色,レモン色,淡緑と多彩な種類があります。
ただし,これらの殆どが天然のものではなく,紫水晶や煙水晶を加熱処理されたものです。天然の黄水晶は上の左側の写真にあるブラジルのIrai産のような小さな群晶のようなものが大半でとても宝石にはなりません。
写真のCampo Belo産のような数百kgもある大きな結晶は極めて稀にしか発見されません。コロラド州のジョージ湖やメキシコのチャルカスの3cm程度の小さな結晶でもこんなに美しいものは滅多になく,博物館級の逸品なのです。
バイア州産の黄水晶は恐らく加熱処理された紫水晶を研磨したものと思われます。水晶の紫や煙水晶の黒や墨色は主に不純物として含まれる鉄イオンによる発色ですが,加熱処理をする事で様々な色合いの黄水晶に変わります。加熱後の色は安定していて日光などで褪色しないため広く加熱処理が行われています。
その色合いにより様々な名称で呼ばれる事があります ;プラシオライト緑色の黄水晶はプラシオライト(Prasiolite)とも呼ばれることがあります。この呼び名はギリシア語で明るい緑を意味する”prasios”に因みます。1953年にブラジル,バイア州のMontezma鉱山産のアメジストを650℃で加熱したものが黄色ではなく淡緑色に変わったものがプラシオライトの商業名で市場に出るようになったものです。 この名は一般的ではありませんが,アフリカやウラル山脈の紫水晶も加熱処理で同様の淡緑色や淡黄緑色に変わるものがあり,プラシオライトの名で流通しています。
19世紀末から20世紀初頭にかけてティファニー宝石店が一連のアメリカ産のサファイア,クロム・パイロープ,淡水真珠等を使った宝飾品を販売した事があり,緑水晶の指輪が含まれていました。
アメリカではネヴァダ州Renoの近くに紫水晶と共に極めて稀ですが,人為的な加熱処理でなく,天然の黄水晶と緑水晶の産地が知られています。およそ3000万年前に起きた地殻変動による加熱作用で,紫水晶が黄水晶と緑水晶に変わったものと考えられています。リオ・グランデ・トパーズ(シトリン),マデイラ・トパーズ(シトリン)ブラジル,リオ・グランデ・ド・スール州の紫水晶は加熱処理によりガーネットのような赤みを帯びた色合いに変わります。その色がモロッコ沖合いにあるポルトガル領のマデイラ島特産のシェリー酒を偲ばせるため,マデイラ・トパーズ(シトリン)あるいは産地に因んでリオ・グランデ・トパーズ(シトリン)とも呼ばれています。
マデイラ・シトリンの吸収スペクトルはベンガラ(主に赤鉄鉱:ヘマタイト:Fe2O3を主成分とする赤い塗料)のそれとよく似ていて,赤橙色はこの地の水晶に含まれる酸化鉄成分による独特の発色のためです。シトリンとトパーズ
シトリンは色合いがトパーズに似ているため恣意的にトパーズ,あるいはシトリン・トパーズと呼ばれる事が一般的な慣習となっています。トパーズの方が稀少でより高価な事から紛らわしい呼称が一般的になったものです。
写真の宝石は似た色合いのトパーズとサファイアとシトリンですがいずれもそれぞれ魅力があって,美しさに優劣をつけるのは不可能です。ところが市場価格ではカラット当り,シトリンは5〜10ドル,トパーズは5〜300ドル,イェロー,ゴールデン・サファイアは60〜1000ドルと大きな差があります。この値差は美しさの違いではもちろんありません。供給量と人気の差であります。シトリンの供給量が圧倒的に多いのは事実ですがしかし公平に眺めれば100倍も高い最上のゴールデン・サファイアと比べても,カットの良い金色の水晶の煌きの美しさは決して劣るものではありません。
もっと見なおされて良い宝石です。左奥 : ブラジルのトパーズ 8.32ct 2列目左 : メキシコのトパーズ 2.53 1.43ct 前列 : アフリカのサファイア 1.85 1.15ct 右奥 : 黄水晶 : 4.45 7.22ct 水晶の加熱処理一般に水晶には微量のアルミニウム原子が珪素原子を置換しています。母岩の中で岩盤中に含まれるウランやトリウム等の放射性元素からのガンマー線を長い間受け続けると,結晶を形成する酸素からイオンが分離してカラーセンター(着色中心)が形成されて煙水晶となります。同時に含まれる三価の鉄イオンと酸素イオンとによる電荷移動が起こると黄色,黄金,橙色の発色となります。紫水晶の場合は不純物として含まれる四価の鉄イオンと酸素イオンによる電荷移動のためと考えられています。緑色の発色は二価の鉄イオンが形成するカラーセンターのためと考えられています。即ち,煙水晶と紫水晶,黄水晶とは微量に含まれる鉄とアルミニウムのエネルギーの状態の微妙な違いが異なった発色を起こしているわけです。天然には一つの結晶に紫と黄色の両方を含むもの,煙水晶と黄水晶とが一緒になったものが採れる事も稀ではありません。 放射線や加熱処理によって,含まれる不純物イオンのエネルギー状態を変化させて人工的に着色したり,褪色指せる事が可能となります。
とりわけ天然に宝石質の結晶が稀な黄水晶は,煙水晶の場合は300〜400℃に,紫水晶の場合は450〜500℃に加熱する事で得られます。 ただし上述のように,元となる水晶に含まれる不純物の鉄とアルミニウムとの割合によって,黄金,黄色,赤,緑など,産地によっては様々な色合いの黄水晶となります。
巨大な黄水晶
研磨された黄水晶
”The Golden One" 700kg原石を調べる
Lawrence Stall研磨中のStall セットされた結晶 天然には稀な黄水晶ですが,時には巨大な結晶が発見される事があります。写真はザンビアで発見された黄水晶で,元は810kg,高さ1.2m,幅が75cm,奥行き60cmの岩のような結晶でした。 研磨用に特別な工具やウィンチ等を設計し,3年程かけて外皮を削り取って磨き直し,最終的に重さ700kg,高さ93cm,幅60cm,奥行き45cmの完成品となり,2000年2月,ツーソンの宝石フェアで主会場のHoliday Inn Broadway ホテルに展示されました。 研磨したのはこうした大物の研磨では屈指のカッター,Lawrence Stallです。 アメリカにはこうした大物や稀少な宝石結晶専門のカッターが何人か存在します。世界の博物館や著名なコレクションにはこうした逸品が必ず展示されています。黄水晶のルースと宝飾品
シトリンのペンダント39ct 鏃型のルース 71ct フリーカットのシトリン 大きな黄水晶を中心に飾った
ビクトリア朝時代の黄金の宝石箱シャルル10世(1820‐24)時代の
シトリンの首飾り 全部で200ct
US$146,500 で落札されたイヤリング アールデコ風のシトリンの指輪 ティファニー製の
アメリカ産緑水晶の指輪
19世紀末〜20世紀初頭
シトリンの多彩な色合いとカット 2.68ct 2.12ct 2.65ct 9.39ct 4.45ct 12.12ct 7.22ct 6.03ct 4.62ct 21.51ct 7.57ct 8.35ct マデイラ・シトリン
2.9ct 10x8mmマデイラ・シトリン
1.86ct 2.35ctレモン・シトリン
12ct 22x14mmプラシオライト 76ct
アフリカ
大量に採れる紫水晶を加熱処理して得られる黄水晶は,その美しさにも拘わらず,余りにも安価なため,一般の消費者からは,とかく軽視される運命にあります。 しかしながら丁寧に研磨された黄水晶は最上のゴールデン・サファイアに匹敵する魅力的な宝石となります。 また大量にある事から,腕利きのカッター達が自由に技術を駆使して,他の高価な宝石には見られないような凝ったカットが試され,斬新なデザインの宝飾品に仕上げられる宝石でもあります。
1999年5月にジュネーヴのクリスティーズのオークションでシトリンとダイアモンドのイヤリングが146,000ドルと,破格の値段で落札されて話題となりました。
オークションでの値段は,需要と供給で決まりますから,必ずしも一般的な相場とは異なり,どんなに価値のあるものでも落札者がなければ値段がつきませんし,反対にどうしても欲しい人が競り合えば天井知らずで価格が高騰する事もあります。このイヤリングの場合は後者の典型的な例です。 しかしどんなに高く見積もっても素材としては数百ドルに足らないシトリンの宝飾品がこれほどの高値で落札された事実は,シトリンのような安価な素材も使い様では素晴らしい宝飾品に仕上がるという格好の例です。
合成黄水晶
ロシア製の合成水晶の結晶とルース 合成黄水晶
右上 51x37x29mm 112gオレンジ,ブラウン,金色,緑の結晶とルース 2.18ct 9.2x7.1mm 1.12ct ø7.1mm 水晶の合成は,20世紀初頭にイタリア,トリノ大学のスペツィアが熱水法による合成に成功して以来,各国で積極的な研究が行われました。 水晶の単結晶の圧電効果を利用すると極めて正確で安定した発振周波数が得られますが,しかし天然の水晶は大半が単結晶ではなく双晶なので,安定した単結晶の確保のために合成水晶の量産技術を確立する事が必要だったのです。
第二次世界大戦前にアメリカが通信と,とりわけレーダー発振用に単結晶の量産技術をいち早く確立出来た事が,戦争の帰趨を決着した一因となったとさえ言われるほどです。
戦後も主に軍事,通信と,産業用にアメリカ,ロシアと日本とで大型の単結晶の大量生産が行われ,こんにちでは年間1000トンを越える水晶が生産されています。その大半はエレクトロニクス用途で,時計,テレビ,電話,コンピューター,産業機器等,ほぼ全てのエレクトロニクス機器に広汎に水晶の発振子が組み込まれています。最近ではビデオ・カメラやデジタル・カメラにモアレ(干渉縞)を防ぐための光学フィルターとしても必須の部品となっているとのことです。
実は水晶がどのような仕組みでフィルターの役目を果たすのか分かりません。恐らくファラデー回転を利用して、干渉を起こす偏向波を遮断するのではないかと思います。 どなたかご存知の方がいらしたらお教えいただければ幸甚です。
かくして水晶無しには,現代の社会生活が成り立たないといっても過言ではありません。
しかし宝飾用途となると,天然に大量の水晶が採れますから,合成水晶の出る幕は皆無に等しく,せいぜい年間10トン程度の紫水晶,黄水晶,緑の水晶,薔薇水晶,また天然にはない青い色の水晶が細々と,主にロシアで生産されているのみです。