龍 神 藤
昔、日野中川原と言うところに花屋があり、盆や正月、春秋のお彼岸が近づくと近くの山へ仏様や神様に供える華を採りに行きました。
ある朝、花屋の主人は、仏華(仏に供える華や枝)を採って売りに行き、夕方家に帰ると急に体の具合が悪くなり、一晩経ったあくる日に亡くなってしまいました。
それから十数年が経ち、不動閣の住職が、世話になった信者さんを尋ねるとこんなことを話してくれました。
以前、花屋の後家さんがお私の爺さんを尋ね来て、主人を突然亡くなってしまったことを話そうとしたそのとき、お爺さんが「お前の主人は不動洞にある藤木を切っただろ」と言い、女房は言い当てられてびっくりしていた。
更にお爺さんが言うことには、「わしは死んで居ないが、十年後に偉いお坊さんが来て不動洞を切り開く・・・」と言うことを話していました。
その丁度十年目が祥海和尚が来て中興開山された年です。
住職はこの不思議な話を聞き驚きました。
あるお婆さんはお参りに来たとき、子供の遊びにでも・・・と思い、おはじきに似た藤の種を持ち帰り与えたところ、突然亡くなってしまい、またある人は忠告をしたのにも拘わらず枝を持ち帰りその晩倒れ亡くなってしまったことなど 住職も不思議な体験していたからです。
昔からこの境内にある藤には不思議な霊力が有るので崇りを恐れ誰も切らなかったそうです。
この龍神藤は奥の院へあがる階段の途中にあります。
幹周りは120cmあり、根元では150cmを越え、いくつにも枝分かれし上に伸びるツルは まるで木に絡む龍のように見えます。
けっして境内の木や枝は持ち帰らないでください。