汽水域で採集する

魚は「海水魚」「淡水魚」の二つの種類があると思われがちですが、実際にはそうではなく、その中間である汽水域にもたくさんの魚種を見ることができます。また、産卵のため、捕食のため、海と川を行き来する魚もいます。俗にこれらの魚は前者は「汽水魚」、後者は「通し回遊魚」といい、一般的には通し回遊魚は産卵場所の観点から3タイプに分けられています。
通し回遊魚を含め多くの魚が見られるのが汽水域。さて、その汽水域で採集を行なう場合のポイントなどをまとめてみました。

1.場所(地理的)
日本海側や瀬戸内海側でも汽水の魚は多く見られますが、種類は断然太平洋側が多くなります。琉球列島まで行かずとも黒潮にのってさまざまな魚が姿を現します。日本海側でも対馬暖流のあたるところでは、種類が多く見られそうです。北海道や東北地方ではサケやカジカなど、南日本では見られない独自の魚を見ることができるでしょう。


2.場所(ポイント)
小さな川でも面白い生物が見られることがあります。また、大きい河川の河口には干潮時に干潟が形成されることがあり、そのような場所では奇妙な生物を見ることができます。有名なのがトビハゼやチワラスボといったハゼや、シオマネキ、アナジャコなどの甲殻類の仲間です。
琉球列島ではマングローブ林とよばれる、マングローブ植物 (ヒルギ類など) により形成された「林」があります。このような場所にも独特の生物が潜んでおり、観察・採集をしてみるのは楽しいものです。
浜に流れるようなちょろちょろとした流れ込みには、あまり面白い生物がいないようにも見えますが、ところによってはヒメハゼの類やミミズハゼ属など、変わったハゼ類がみられたりします。


3.潮
潮が最もひく大潮がよいでしょうが、中潮でも十分に面白いです。時間的には完全に潮がひくころではなく、引きはじめ、満ちはじめのころが面白いでしょう。ただし満ちはじめると、完全に沈んでしまうポイントも有りますので注意しなければなりません。


4.季節
おすすめは晩夏から秋口です。このころになると汽水域には南方からやってくる稚魚が多く見られるようになります。

5.採集時の注意
汽水域にも危険な生き物はいます。アカエイやゴンズイなどは毒棘がありますので注意します。他にも汽水域にはハオコゼ、アイゴ、アミアイゴ、イケカツオ、クロホシマンジュウダイ、琉球ではツカエイ、ゴマアイゴなどの毒魚も多いです。
汽水には甲殻類も多く見られますが、ノコギリガザミの類は万力のような力強い鋏脚を持ち、指がちぎれるまではなさないともいわれます。
干潟など、泥がたまるような場所では泥に足元をすくわれないように注意しましょう。

高知の汽水域で採集された魚たち
(テングヨウジ、クロホシマンジュウダイ、ヒメツバメウオ)
汽水域は塩分が急変したり、ときに高温になったりします。
それに対応できるのが汽水魚、丈夫な魚が多いです
石垣島のマングローブの林。
満潮になると、マングローブの根っこの合間を魚が行き来します。
干潮時はカニ類やミナミトビハゼなどを確認できます。
汽水域に生息するニセクロホシフエダイ。
成魚は沖縄では食用にします。(写真は高知県産)
汽水域にはスズキやアジ類、ハタ類、スズキなど
食用魚の幼魚も育ちます。

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