あぁ、いい加減勉強なんてやめたいよ。
こんなことばかり勉強しても将来の役に立つとはとても思えない。
あぁ、なんか眠たい。
そう思っているとき、窓の向こうに旅人さんが見えた。
かっこいいなぁ、モトラドに乗って旅か。憧れちゃうな。世界を見て、世界を感じて。
こっちはいつも勉強。疲れちゃうよ。
そんなことを考えているとき、僕の耳に先生の声が入ってくる。
「えぇ〜、物質が状態変化する温度のことを融点といいます。これは個体が液体に、液体が固体に変化するときのことをいいます。つまり固体が溶ける温度でもあり、液体が固まる温度でもあるのです。水は零度で凍り、零度で固まります。このとき、水の融点は零度と言えるということです」
僕も旅人さんみたいに旅がしたい。自由を求めた。世界を知りたい。たとえそれが危険なことでも、正しくないことでも。
あっ、旅人さんが行ってしまう。
いいなぁ、これからまたいろいろなところへ行くんだろうな。
僕はこれからも授業を受けて、黒板の字をノートに写したりする日々が続くんだろうなぁ。あぁ、イヤだイヤだ。
バイバイ、旅人さん。
僕は一番窓際の、一番後ろの席から旅人さんを見送った。
「えぇ〜、セタノール、正確にはセチルアルコールの融点は――――――――――」
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