二次創作小説

都合により文章内容を変更・改正する場合がございます。
4      冬の湖にて ― Who is bad? ―
キノはチョコレートを食べていた。
円形で時計のように1から12までの数字が刻まれていた。
「キノ、それだけで足りるの?」
エルメスが聞いた。
キノは茶色の紙袋から最後の一個を取り出しながら言った。
「全く。全然足りないよ。まさかあの国でだまされるとは思わなかったよ。
腐りかけのものを腐っていないように見せかけて売っていたなんて想像もしなかった。」
 
雪が積もる森の中に湖があった。湖はとても広く、凍り付いていなかった。
その湖の畔にキノ達はいた。エルメスとスタンドでたたせ、キノはテントを張っている。
「まぁ、あの人が時計型チョコレートをくれてよかったね。そうでなきゃ、今頃キノは死んでただろうね」
「あぁ、本当にあの人には感謝してるよ。でも、これから次の国まではまだ結構ある。
それまで持つかどうかが重要なところ」
「でも、もう食料ないんでしょ?チョコレートも今ので最後」
「そうなんだよ。そろそろ冬眠から目覚めた動物達がいてもおかしくないんだけど、なかなか見つからないんだ」
「きっといつも食べ過ぎてるから神様が怒ったんだよ」
「まさか。だいいち、神なんているかどうかも分からないよ、エルメス」
「いるかもしれないけどね。あっ、それと――」
「それと?」
「テント張りながらチョコレートなんて食べてると落とすよ」
エルメスがそう言う数秒前に、キノはチョコレートを雪の上に落としていた。
「そうだね、エルメス」
「どうするの、キノ?食べる?」
「いいや、食べないよ。もったいないけど、細菌か何かが付いていたら困るから」
キノはとてもがっかりした様子で言って、そしてその後、空腹にうなされながら眠った。
 
次の日。
パースエイダーの整備・訓練を終えたキノはカップに雪を入れ、エルメスのエンジンで沸騰させ、お茶のパックを入れて飲んだ。
「キノ、角砂糖は入れないの?」
「あったら入れてるよ、エルメス。この前の国で買ったんだけど、他のものと同じくだまされた」
「ご愁傷様。朝ご飯はそれだけ?質素だね」
「寂しいなぁ」
その時、いきなりエルメスが叫んだ。
「キノ、ほら、湖に鳥が!!」
それを聞いたキノは、すぐにそちらの方向を向き、次の瞬間に撃った。冬の湖に銃声が響き渡った。
 
「お見事さん、キノ。これで少しは生き延びれるね」
戻ってきたキノは、両手で大きくて白い鳥を抱えていた。
「あぁ、よかった」
その後、キノはその鳥を少し食べ、残りを持ち運びやすいようにし、チョコレート等が入っていた袋の中に入れようとした。
そのとき、袋の底に手紙らしきものがあるのに気づいた。
「手紙、だね。あの人からだ」
「何て書いてあるの?」
「分かった、読むよ。
 
旅人さんへ
 
今の旅人さんから見て、この前話したことが全てじゃないんだ。この前話した場所が町中だったから全部は話せなかった。まだ言っていないことがある。
 
それを話す前に、まず知って置いて欲しいことがある。
 
この前話したときには貿易は行っていないと言ったけど、実は少しだけ行ってるんだ。
そして、その人は谷を越えた向こうにある国に住んでいる僕の友人。
 
さらに、その友人というのは向こうの国の王子なんだ。
 
前の話の真実を書いておくよ。
旅人さんは、国の近くにある神殿を見たと思う。そして、その中にあるものも。
僕は友人からそのことを教えてもらった。
 
そして、それを聞いたとき、僕の中で全てが繋がったんだ。今までもいろいろと話を生きていたから。
その全てをここに書く。
 
この国を逃げ出した男は隣の国に行き、事業が成功して、大富豪になった。そして、その国の人と結婚したんだ。
しかし、その奥さんは財産目当てで、いつもの食事に毒を少しずつ入れていた。
 
そして、男は祈祷師になってこの国を訪れた。
その時、王宮には手紙が届いていて、食事に毒を入れるように書いてあり、王はそれに従った。
 
その後、男は国に戻り、再び奥さんに毒を飲まされた。それにより、男は心臓病になり、医師にもう長くないと宣告される。
 
男は遺書を書き、建てておいた神殿へと奥さんと一緒に向かった。そこで数日過ごして、ついにその奥さんが大量の毒を一度に食事に入れた。
そのせいで男は死亡し、奥さんは男を王座に座らせて、国に帰った。
国に帰った奥さんは、自称祈祷師の男の死亡届を提出し、莫大な財産を自分のものにした。
 
これが全てさ。ちなみに他のこの国の人はこのことは知らない。
僕は、その祈祷師の人がたとえこの国に爆弾を仕掛けていたとしても、恨んだりはしない。いや、恨めないんだ。
両方の国から追い出された男の人が可哀想に思えてくるから。そして―――それは祖父のせいでもあるから。
 
僕は死んだ祖父を恨んでいるよ。でも、もう死んでいるからどうしようもないけどね。
 
そして旅人さん、お願いがある。
さっき話した、友人のことでだ。友人は自分の父を恨んでいる。殺めたいほどに。
どうかそんな友人を助け出してくれ!お願いだ!
行ってみれば、どんな父親か分かるよ。
 
当時の王の孫より
 
だってさ」
「なんか複雑だね。それとキノ、どうするの?助ける?」
「さぁね。行ってから決める」
「そうだね」
「………………」
「どうしたの、キノ?」
「いや、この手紙の内容について考えていただけ」
「誰が可哀想なのか、誰が悪いのか、わからなくなっちゃうもんね」
「あぁ、ボクもそう思うよ。さぁ、行こう」
「了解」
更新日時:
2005/02/13
前のページ 目次 次のページ

[HOME]


Last updated: 2006/9/13

誤字・脱字などがありましたら、下記までお知らせください。
また、掲載している作品はメディアワークス様・時雨沢恵一様等とは一切関係ありません。