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1.難しく考えすぎてはいないだろうか。
ここでは、ごく初心者のドイツ語での会話に関して少し考えてみたいと思います。たとえば、私は大学でのドイツ語の授業の時にちょっとした試みとしてDaF専攻のドイツ人留学生と二人で授業をしたりしました。授業の中で、生徒に黒板に書いてもらった答えをドイツ人に添削してもらい、ドイツ語で説明してもらうなどです。まだまだ初心者の学生にしてみれば相当面食らったかもしれませんが、少しは生きたドイツ語になじんでもらえたような気もします。
その際に、ちょっとした会話の練習もしたのですが、これがなかなかうまくいかないんです。ドイツ人の学生が話すことが聞き取れないのは、まあ仕方がないとして、何かを発言させようとするととたんに言葉が出なくなってしまうのです。よく見ると、複雑なことを言おうとするあまり、結局訳がわからなくなってしまって、頭がパニックになって何を言っていいのかもわからなくなってしまうようでした。ある程度のドイツ語の基礎はできているので、できないはずがないのにやっぱり何も言えないという状態です。
2.はじめは、ごくおおざっぱでいい
この大きな原因は、やはり、難しく考えすぎると言うことにあります。ドイツ語でのちょっとした日常的会話の場合、実際はそれほど多くの単語などは必要ありませんし、複雑な語法も必要ありません。問題は、本来言おうとしている複雑なことを「日本語で」どれだけ平易な表現にデフォルメできるかということです。
たとえば、ある生徒は次のような質問をしようとしました。
「日本のテレビのタレントの中でどのタレントが一番のお気に入りか?」
この文は日本語としては通じますが、まともにドイツ語にしようとしても、主語がありませんし、またテレビタレントという言葉は日本独特のものなのでその言葉でも詰まってしまうことになります。
ですから、それをきわめておおざっぱにデフォルメして、
「あなたは、日本のテレビの中でどの人物を好むか?」
と形を変えてしまうことです。若干意味は違いますが、その違いは後の会話で補っていけばいいんです。たとえば、上の質問で、仮に政治家の名前が出てきてしまったとしても、そうではなくてテレビのトークショーなどではどうか。などという風に絞っていけばいいわけです。とかく、会話においては複雑な内容を一発でびしっと言えれば、かっこはいいですが、そんなにうまくいくものではありません。別に公の会議の場でもないのですから、簡単な表現を使って、会話の中で少しずつ修正したりする方が、コミュニケーションとしてもずっと楽しいものになるはずです。
そうした意味で、伝えることはおおざっぱでいいんです。少し出来るようになると、とにかく正確で詳しく伝えようとするあまり、結局苦労して言ったところで、聞いたドイツ人にしてみれば訳が分からないということがよくあります。特に、文化の違いとか日本のことを伝えようとすると、よく知っているので逆にそういう状況に陥りがちです。何が言いたいのか分かってもらえないよりは、少しぐらい勘違いされても、思い切ってデフォルメする方がずっといいと思います。また、短い文で言うことも大切です。拙いドイツ語で、長たらしく話されても、聞き手は非常に辛いものです。それよりも、短い文を簡単にいくつかに分けて言った方がずっといいと思います。
ですから、初心者のうちは複雑な内容を、出来る限りシンプルな言い方で表現するようなそういう努力をするよう心がけることが大切です。これには、日本語でそのように出来る能力も必要です。また、説明の際に手振りや身振り、顔の表情を使うことも非常に役に立ちます。たとえば「大きい」という単語を忘れたり、「おいしい」という単語がとっさにでなくても、身振りや表情で何とかなるものです。ある意味、そうしたちょっとしたパントマイムのようなことを加えると会話というのは非常にうまくいくものです。もちろん、ドイツからの留学生などを見かけたら、積極的に話しかけて友達になるのも非常に近道です。
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