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南米人類学研究所 JOURNAL OF SARI

ブラジルVolume 2005, Number. 001
掲載内容の転載は不許可。

[発見へのアプローチ]
1万1000年前の謎を秘めた太古の地層地帯。
アマゾン河の支流から南へ250キロ、最後の村から馬での移動を開始して3日目、目標調査エリアに到達した。一帯は、恐竜の生息したジュラ紀より遙かに古い、先カンブリア期(46億年〜5億7千年前)の安定地塊帯(※1)にあたる。
博物学者アルフレッド・フォン・フンボルトは、南米大陸探検の際に中生代(2億4700万年〜6500万年前)大陸塊の分裂地帯、標高2500メートルの付近でマストドンの骨を発見している。
彼はマストドンの死因を、『広範囲において"原因の不明な例外的な出来事"』(※2)によると示唆している。分かり易く表現すれば、天変地異が原因ではないかと言うことだ。
事実、我々と共に地球上に生息する現世動物と、古代生物の入れ替え(※3)が1万1000年頃を境に生じている。
探索目的は古生物学での発見と発掘が目的ではないが、万一その"突起物"につまずいた場合はこの限りではない。
安定地塊帯を進んでいるうちに、見た目に真っ白な石英の砂漠地帯に出くわしてしまった。砂は通常、海岸で生成されるが、見渡した限り海岸線に該当する痕跡は確認できない。
緑の地平線を白く染めながら、グレー色の雨雲が近づいてきた。雲の上空は晴天で、雲の下では雷光が蜈蚣(ムカデ)の足のように幾筋も地上に向かって伸び、遅れて雷鳴とその震動が届いた。雷雨は10分ほどで通り過ぎたが、蹄鉄が滑りやすくなり馬の骨折を避けるために徒歩に変更した。
ブラジル中央部のマットグロッソ上空に、オゾンホールが出現していると言う環境レポートを見た記憶があるが、ここの空は黒味を帯びたダークな青色でヒリヒリする日差しだ。
礫岩(※4)が散乱する登り傾斜で、小さな堆積砂礫を見つけた。これは中東・ヨルダンのペトラ遺跡(※5)で採れる色の異なる砂礫がサンドウイッチ状態になっているものと類似している。ペトラ遺跡のそれとは美しさやボリュウム感などは劣るが、何故、この地域に同様の砂岩があるのか。辺りを見回しながら登坂したが、母岩に相当するものは見つけられなかった。
地質学者には興味深い場所だ。高地でありながら砂漠地帯を有し、更に多色サンドウイッチ状の砂岩がある。混濁したエリアだ。見上げるようにそそり立つ岩壁に間近まで迫った時、小規模な大地の亀裂と共に、問題の石英露頭岩の岩陰画に遭遇した。

隠された、混乱した絵柄。
当該の岩陰画は、その石英露頭岩の亀裂の向側の壁に描かれ、直接手で触れる事ができない。岩絵が描かれた時点で、既に亀裂は生じており、岩絵を描いた人々は亀裂に足場を組むことでこれらの絵を記録したと思われる。
この岩絵を描いた人々は、"櫓を組む"技術を有していたようだ。岩絵に"櫓"の絵柄が5〜7点認められる。
記録写真の右側に"ステージ"(仮称)があり、このステージに到達するには、"花道"(仮称/花道の長さ:約4トメール・幅1.7メートル)の、両側が崖の細い通路を辿る必要がある。


ステージの広さは11人目の大人が、亀裂か崖に落下する程度のスペースである。
亀裂底部へのルートは2つあり、一つは"花道"の手前から強引に亀裂へ降下する、今ひとつは迂回をすることで、写真中央V型から侵入する方法である。
露頭岩の頂部は、層理が水平に認められる幾つかの特徴があるが、ここでは詳細は述べない。
本件岩陰画の発見から3年を経過しているが、依然として未解明な部分が多くある。現段階で、古代文明世界のモチーフのプロトタイプと思われる絵柄を数十点確認している。
原始宗教(シャマニズム)をはじめ、当該地の神話伝承を反映させたと思慮される多くのダチョウ(ダウインレア)など、神話学者には垂涎の"神話伝承を示唆する図像"が散見されている。
ダチョウに触れたが、この動物は愛くるしい表情とは別に戦闘的で獰猛な性格がある。これを裏付けるように先住民のダチョウ神話(※6)は、人類を殺戮したと語っている。
壁を赤く染めた絵柄は250点に及ぶと推定され、中心部では"重ね描き"が認められた。シュメール神話を示唆する図像もあり、ますます興味深くなっている。

註/出典 :※1/安定地塊:ギアナ高地(盾状地)をはじめ先カンブリア時代に出現した大地。※2/Alexander von Humbolt. 『熱帯地域の自然図』 P335〜340. ※3/The Great journey (The Peopling of Ancient America) Thames and Hadoson Ltd,. London. 1987. Brian M. Fagan (境に大型哺乳類の80パーセントが、最後氷河期、ウィスコンシン氷期の終わり頃に絶滅している。肉食類5属、奇蹄類{ウマ、バク}の2属全て、偶蹄類{ラクダ、ペッカリーなど}11属、長鼻属{マンモス、マストドン、キャメラップス、ウマ、シャスタナマケモノ}5属がほぼ同時に姿を消している)。※4礫岩:大きさが2メートル以上の岩の破片。※5/ペトラ遺跡:映画インディージョーンズの冒険で登場した遺跡。岩をくり抜いた神殿などがある。この神殿群はその正面の大きな造りとは異なり、岩山を刳り抜いた内部は意外に狭く、外観と内部のバランスに違和感がある。※6/大林太良【銀河の道、虹の架け橋】「南米編」。

次回 : 岩陰画に描かれている図像について述べる予定です。 


(打鍵者/イオス・チャンドラー)
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