―おいおい、何だってんだ。
明らかに妙は先程迄とは別の次元で気分を害している。それまでの暑さによる不快感とは明確に異なる色を見せていた。そして原因はもしや、自分?
ぽりぽりと銀時は頬を掻く。
決して口にはしなくても、なんとなく自分が悪いことをしたんだな、と思うことは誰にでもある。この鈍くてデリカシーの無い、無神経な男にも、それくらいの分別は持ち合わせている。しかし何故に…。いや、考えるまでも無く、理由は分かっている。この男にも。
けれども。
銀時は言葉に迷いつつも言葉を紡ぎ始めた。
「…お妙さぁ」
「…なに」
 呟かれた言葉。
妙のその不快は怒りによく似ている、と思った。
唯まだ暑さというどうしようもないものが、彼女の拳から鉄拳を繰り出させることを許さない。
今日の暑さに対し唯一感謝することだろうか。
「つまりはさ、俺がつまんなそーにしてるから怒ってるってこと?」
「怒ってないわよ」
「でもま、理由はそんな感じ?」
「…さあね」
「…」
明確な言葉にしないことが何より雄弁に彼女の理由を語っていた。
 思った通り。
 ただ、不機嫌なのはお互い様だろ、と思ったけれど。 
 妙に暑さ以外の不機嫌の理由があったように、銀時にも真実があった。けれどそれを口にするのは面倒だし、非常に気恥ずかしいし、そして幼稚だし。
だからと言ってこのままではますます妙の機嫌を損ねるばかり。ご機嫌取りにいそしまねばならぬような女じゃないし、妙もそれを好まない。けれどもこれは何かきちんと、したほうがいいのかと思う。線引きであったり、弁明であったり。妙が何処までそれを信用するかは別として。
銀時はまたあーだの何だの勿体付けるようなことを呟く。この男の癖である。
「あのさ、例えばの話、テレビでハーゲンダッツのコマーシャルやるとするじゃん?」
あまりにも唐突な銀時のその言葉に、妙は思わずは、とあからさまに不機嫌な声を漏らす。それでも銀時は言葉を続ける。




「ニュー・シネマ・パラダイス」より