たまたま、その日の上がりが同じ時間で、

家が同じ方向にあっただけ。

特にどちらから声をかけたわけでもないが、

二人で夜道を歩いていた。




___ヴォイス___







「・・・む。」

「あら、雨。」

「予報では明日の朝まで晴れると言っていたんだが。」

「天気予報なんてそんなものですよ・・・っと。__大佐。」


ハンドバックから折りたたみ傘を取り出した。


「大切な時期に風邪を引かれても困ります。」

「ああ、助かるよ。ありがとう、リザ。」



『リザ』



その声は

それまでの私とは別の、

全く別の存在を呼んだようで。


声に、名に

これほどの力があるのだろうか

そう、思った。


「さ、自宅まで送ろう。中尉。」


さりげなく二人を傘に入れ

歩き出したその横顔。

何事もなかったように

笑みをたたえている。


「・・・そうやって、女性をオトしてきたんですか?」

「はっはっは。いつも家に送り届けるだけさ。」


傘に当たる雨音のように、軽やかな声。

“音”ではなく“響き”が、心地よく頭に鳴り続ける。




耳に残るその声に、落ちた。









2004.12.8(WED)


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