別に、どうという訳でもないのだけれど、
やっぱり気にかかってしまうわけで。


「…姉上ぇ」
「なぁに、新ちゃん」
「…今日の夜から雨が降ってくるらしいですよ」
「あらそう、じゃあ傘を持って行かなくちゃ」


期待していた答えとは別の答えが返ってきて。
むしろそれは聞きたくなかった答えで。








別に嫌という訳でもないのだけれど、
やっぱり胸騒ぎがしてしまうわけで。

「姉上ぇ」
「なあに、新ちゃん」
「…今日会うひとと、父上と僕と、誰が一番強いですか?」
「そうねぇ、皆弱い男ねぇ。私かしらね」


期待していた答えが返ってきたけど、
やっぱりそれも聞きたくなかった答えで。

今こうして着飾って、ひとりの女性として出掛けて行くあなたに、
僕はなんと声をかけてその背中を見送れば良いのでしょうか。

「行ってらしゃい」
「気をつけて」
「頑張って」

そう言えば良いのでしょう。
きっと。



それでも僕は言ってしまうのです。



「まだ僕だけの姉上でいてください」




叶わぬ願いと知っていながら。振り返る事はないと解っていながら。



そうして僕は、あなたの背中を見送るのです。




<END>










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