にじ・そら・ほし・せかい


ここ最近―特に、万事屋の彼らに出会ってから、時が経つのが早く感じられるようになった気がする。初めて銀さんや神楽ちゃんに出会ったのが一年前だとは思えない。
つい最近、まるで昨日のように思えるのに。
それでも彼らと出会ってから日に日にたくましい顔つきになっていく弟を、目まぐるしく移り変わっていく世の中を、そうしていつの間にか隣にいた彼のことをひとつひとつ知っていくたび、月日というものは刻々と過ぎていっているのだ、と気付かされる。
そしてそれは、明らかに私たちに何かをもたらしているのだ、という事にも。


「お妙さん、虹ですぜ」
彼の声に思わず空を見上げる。
きれいなきれいな虹の橋が空を経由して、山と雲の果ての間に架かっていた。
「きれいね」
「えぇ」
そうして今度は彼を見る。見上げる。背が伸びた、と思う。彼と出会った一年前は、私とそうは変わらなかったはず。当時はその顔にもまだ少年のあどけなさが残っていて―
同じ年ながら、可愛い。
というのが初めの印象だった。
ただの顔見知りだった。それがやがて、彼の事をひとつひとつと知っていくようになり、わからなくなり、そしてまた知っていって、わからなくなって。
そんなことを繰り返すうち、いつの間にか彼が隣にいることが当たり前になっていた。
「何か顔に付いてますかィ?」
「いいえ」
歩を進めた。私の隣を彼は歩む。同じ速さで、一歩、一歩。


ふと、以前どこかで聞いた話を思い出した。
確かこんな内容だったと記憶している。


ひとの感じる時間の長さは、その人の年齢に反比例する、と。
子供と大人では時間の流れが違う。大人の時間は子供の時間よりも早く流れてしまう。
私はまだもっとお年を召した方々が言うように、一年がどんどん短く感じられる、という事や時間の過ぎ行く速さに置いてきぼりにされる、というような事はまだ無い。
けれどこれからだんだんと年月を経て、齢をとっていくたび、時の流れる速さはより一層速いものへと変化していくのだろう。
それは自分自身の感覚的な感じ方であるから、その事を他の人と感じることは出来ない。新ちゃんですら私と二つ、違うのだから私よりも時の流れる時の速さはきっと遅い。まして銀さんや神楽ちゃんなんて、どれほど違うというのかしら。


だけど、ねぇ。
同い齢のあなたは?


ふと歩を止めてみる。彼も立ち止まる。
「私の歩く速さって、総悟さんのと同じくらいですよね」
彼は初め、少し面食らったかのような顔をしていた。きっと、何を言っているんだと思ったのだろう。
けれどすぐに、くす、と小さく笑って。
「ええ、すごく心地良い速さですぜ」
そう、嬉しそうに答えるから、私もつられて、口の端が緩む。
そう言ってまた、歩き出し…た。
たださっきと違っていたのは、すれ違いざまに私の左手を奪っていってしまったこと。
私の手はいつの間にか、彼の大きな手に包まれていた。
「ちょっ…総悟さん!?」
「暗くなる前に帰りやしょうや」
そう言われ、、強く引かれた手に導かれるかのように私も彼の隣を歩き出す。
ちら、と私の手を引く彼の横顔を見たら、その頬がほんのりと朱に染まっていて。それがおかしくて可愛いくて。思わずふふ、と笑ってしまった。


帰路を急ぐ途中、何気なく空を見上げた。夕焼けの彼方、ほのかに暗やむ空に星がひとつ、きらりと輝いていた。声には出さなかったけれど、彼もきっと気付いているのだろう。彼も空を見上げて、握った手に力を込めていた。


願わくば世界が二人を分かつまで、彼と二人、同じ時を感じていきたい。彼のその手は確かに、そう思わせてくれる手だった。
そんなささやかな願いを胸に秘めて、その手をそっと握り返す。


彼のその大きな右の手は、私の小さな左の手を、
その手のぬくもりは、私の心をしっかりと抱きしめてくれている。














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