| あたしたち、ずっと一緒にいたじゃない。 エドワードとアルフォンスが数ヶ月ぶりにリゼンブールを訪れた。 目的は破壊された機械鎧を修理するため。 今回は少し動きが鈍くなる程度の故障だったのだが。 「あんたはそんなにあたしの睡眠時間を削りたいわけ!? せめて事前に連絡くれれば予定あけておけるのに!」 「まあ・・・いつものことじゃん。」 「開き直るなっ!!」 ゴキン 「あだっっっ!スパナで殴るなっての!!」 整備中のエドワードの膝にあごを乗せ、まどろんでいたデンが片目を開ける。 「兄さん、あんまりウィンリィを怒らせちゃ駄目だよ?」 「こいつが勝手に怒ってんだろ。」 「エド!?」 「兄さん!!!」 いつも通りの会話。 いつものようにじゃれ合って、いつものように笑い合う。 「はい、おしまい!!ちょっとスプリングも弱ってるみたいだから、なんかあったらすぐに言いなさいよ」 「・・・・・・・。」 「エド?」 機械鎧の動きを確かめるように肘を曲げたり手首を回したりしているエドワードは 何かを考えている風で、ウィンリィの言葉に反応を示さない。 「・・・兄さん。」 「ああ。」 「何・・・?」 「ばっちゃんには後でちゃんと言おうと思ってんだけど・・・。」 普段はあまり見せないエドワードの真剣な表情に、ウィンリィは言葉を詰まらせた。 まっすぐに前を見て、決して目をそらそうとしない強い眼差しは なにか、悲しい事を決意したときの顔だから。 それは、国家錬金術師になることを決めたときと同じ顔。 自らの帰る家を焼き払い、ふるさとから旅立つ決心をしたときと。 そして、当時は気が付かなかったけれど、今になってわかる。 母を錬成しようと決めたときと、同じ顔だった。 「もう、リゼンブールに帰ってこない。」 「・・・え?」 「最近、今まで以上に兄さんをねらって攻撃してくる人が増えてきたんだ。 今のところはまだ大丈夫だけど、そのうちここにも追っ手が来るかもしれない。 そうなったらばっちゃんやウィンリィに迷惑掛けちゃうから。」 「迷惑なんて、そんな・・・。」 「実際、ウィンリィは何度か巻きこんじまったし。」 「一生帰ってこないって訳じゃないよ?ただ、この事件が解決するまでは・・・ 多分、兄さんと僕の体が元に戻るまでは、ここには帰らない。」 「・・・・」 「「・・・ウィンリィ?」」 「・・・・・・・・・あたし、二人が罪を背負ったあの日から、二人のこと全部聞いて、 全部受け止めようって・・・決めたの。」 うつむいて、手を強く握りしめてウィンリィがつぶやく。 あの日から、いつも笑顔で、二人の助けになろうと決めている。 「・・・だけど、何で?」 二人に向けられたウィンリィの表情は、溢れそうになる涙を抑えながら、必死に作った笑顔だった。 「・・・リィ。」 「・・・・・どうして。 ・・・どうしていつまでも『他人』なの?ばっちゃんは?あたしは?家族でしょ? ここがあんたたちの家なのっ。 ・・・認めなさいよ。 でないとあたしが・・・あたしが馬鹿みたいじゃない。 ・・・・・ずっと、ずっとここで待ってるあたしが・・・っ!」 こらえきれなくなった涙が頬を伝う。一度流れ始めてしまうと、もう、抑えることは出来ない。 ウィンリィは涙で滲んだ視界でなんとか目の前の兄弟をとらえ、二人に抱きついた。 「認めてよ・・・。 『まきこむ』とかじゃなくて・・・二人だけの問題にしな・・・で。 あたしも・・・ばっちゃんも、 デンだって・・・ここに居・・・るんだからっ。」 「「・・・・」」 「もう、帰ってこないなんて言わないで・・・っ」 「・・・・・」 抱きしめられた体は温かくて、柔らかい。生きた人間の温もり。 『家族』の温もり。 それはエドワードだけでなく、感覚を失ったアルフォンスにも感じられる。 二人は廻された細い腕にそっと力を込めた。 互いが互いを想い合う、キョウダイという三角関係。 ちょっと痛い話。 戻る |