「…チャイナ」
「何アル」
「この手は何だィ」
「ちょーだいの手」
「今日が何の日か知ってるか?」
「チョコの日!人が人にチョコレートただでくれる日ね!!」
「…」
「チョコちょうだい」
「(『他人』が『自分』にくれる日だと思ってやがる…)」

時間が空いたと言って、一人屯所から出てきたものの、出掛ける先があるわけでもない。
何となくいつもの道をぶらぶら歩いていると、紙袋を抱えた彼女にあった。
紙袋の中身は多分お菓子だと思う。あれだけ収入のない生活で一体どこから菓子代が出ているのだろうか。

「(その上、チョコよこせときた)」

彼のポケットには確かにチョコレートが入っていた。
国中が浮かれ騒ぐこの日に便乗した、可愛らしくラッピングされた小さなそれは、彼に贈られた物である。
ただし、女性からの物ではない。
誰よりも部下を愛する彼の上司が、隊士にまとめて配った物だった。

 近藤さんから貰った物は嬉しいけど…ぶっちゃけヤローからのチョコはいらねぇし。

行き場のないチョコを持ったまま、散歩に出てしまい、今に至る。

「まあ、やらねぇことも無いが」
「ほんと!?」
「ここに一つチョコがある」
「ちっちゃいネ」
「これをお前にやるよ」
「ちっちゃい」
「文句言うねィ」
「んー」
「しかし人に貰ったもんだからな。全部はやねれぇ」
「えー!」
「お前にこれやるから、半分俺によこしな」
「…」
「イヤなら全部俺が食う」
「…わかったよ。それで手を打ってやろウ」
「何だそのおーへいな態度は。やらねぇよ?」
「あーあーあーあー!!」



  こいつから、この日にチョコレートを貰うって事がどれだけ意味を持つのだろうか。
  相手は何も知らないと言うのに。

  むしろ、知らない事を利用している。

  卑怯だと思いながらも、自然と緩む口元を隠して、小さな小さな箱を差し出した。













「チョコの日」を吹き込んだのは銀サンだと思う。



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