まばらになった生徒。

グラウンドに響く運動部のかけ声。

中庭から聞こえる音楽部の演奏。


放課後の、生徒会室。







「兄さんっ!!!」

「んあ?」

「『んあ?』じゃないよ!!昼休みに頼んでおいた資料、ちっとも手をつけてないじゃない!!
 明日の定例に必要だから急いでって言ったよね?」

「あー・・・わり。すっかり忘れてた。」

「忘れてたじゃすまないよ。今日中にプリントアウトしないと先生のチェックもらえないんだから!」

「チェックっつったって、あいつほとんど内容読まねえじゃん。
 定例で読み上げられてから茶々入れるんだから意味ねえんだよ。」

「そうはいっても顧問のサインは貰っておかないと会議に出せないんだってば!」

「あーもう、うるせえなあ。そんなに言うならアルがやれよ。」

「兄さんの方がやれば早いんだよ。だいたい、会長は兄さんなんだからね!!!」

「・・・へいへい。」




兄、エドワード・エルリック 17歳。高校2年生。
弟、アルフォンス・エルリック 15歳。高校1年生。

校内でも評判の、天才兄弟。兄は生徒会長、弟は副会長の任についている。
会長といっても、周りに押し上げられるように立候補したエドワードには活動に対する意欲が無い。
その分、まじめな性格のアルフォンスがそのフォローにまわらなければならなかった。

生徒会室の一番奥、会長席で机に脚を上げ、本を読んだり昼寝をしたりして過ごすエドワードと、
生徒会室はもちろん、校内を慌ただしく駆け回るアルフォンスの姿はもはやおなじみのものとなっていた。


そしておなじみがもう一つ・・・。


「エドっっ!!!!!」


ドアを壊すのではないかという勢いで大きな音を立てて、一人の少女が生徒会室に入ってきた。

窓から差し込む夕日を受けて光る、金色の柔らかい髪。
少し高めの位置で結い上げたそれは、歩くたびにさらさらと揺れる。


ウインリィ・ロックベル 16歳。エルリック兄弟とは家が近く、親同士の仲もいいため、
物心ついた頃から一緒にいる、“幼なじみ”というやつだ。


「なんなのよこの予算案!!うちの部に来年は活動するなって言いたいわけ!?」

「はあ?今度は何だよ。」

「あたしはこの額を請求したはずよ!」


ばんっ、と音を立てて机にメモ用紙をたたきつける。
面倒くさそうにそのメモを開いたエドワードは目を見開き、椅子からずり落ちた。


「・・・ばっ、バカ言え!お前ケタ一個まちがってんじゃねえの!?」

「何いってんのよ。あんた機械部がどれだけお金かかるかわかってないの!?」

「わかるか!!!!」

ガタガタと体制を立て直し、エドワードはどっかりと椅子に座った。
それと同時に、アルフォンスは椅子を一つ、さっとウインリィの足下に運ぶ。
ありがと、とだけ言ってウインリィはそれに腰掛けた。


「じゃあ兄さん、僕ロイ先生のところに行ってくるからね?」

「ああ。じゃあそのファイルもってけ。」

「ファイル?・・・あ!!
 ・・・兄さん資料の作成終わってるなら先に言ってよ。また無駄に大声出しちゃったじゃないか。」

「おう。終わったこと忘れてた。」

「まあいいや。それじゃついでに印刷もしてくるから。
 ・・・ウインリィ、机とか椅子、壊さないでね?」

「何であたしだけなのよ!!」

「行ってきま〜〜〜す。」

アルフォンスは早々に生徒会室を後にした。早い話が、逃げたのだ。

エドワードとウインリィは言い合いになると周りのものを破壊する。
その主な原因はウインリィがその場にあるものや愛用のスパナを手当たり次第に投げつけるからで、
標的にかわされた飛び道具は、そのまま何の罪もない家具や人(!)に当たるのである。


(ウインリィも兄さんも、頭に血が上るタチだからなあ・・・。)


資料のファイルを抱え、アルフォンスは職員室へと向かった。
途中、背後から何かがぶつかるような鈍い音と、短い悲鳴が聞こえたような気がする。








職務を放棄して行方不明になったという生徒会顧問を副顧問が(半ば脅すように)職員室に連れ帰り
ようやくサインを貰ってから他の仕事をこなすと、
生徒会室に戻るまでには一時間以上かかってしまった。


(ウインリィまだいるかな?)


思ったより時間がかかってしまったため彼女は部活に行ってしまったかもしれない。
少なくとも兄との口論は終えた頃だろう。

そろりと覗き込んだ生徒会室にウインリィの姿はなく、
代わりにさっきよりも明らかに傷が増えたりへこんだりした机や本棚、そして
それら以上にダメージを受けたであろう兄の変わり果てた姿を見た。



・・・Fin★










人生初の鋼作品は、なぜか学生パラレルですた。
カプもへったくれもなくてすみません・・・。





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