「最近あんまり聞かないけどさー。」


あたしのよりだいぶ色の濃い金髪を櫛でとかしながら、ふと、思い出したので言ってみた。




ここはセントラルの軍事病院。
珍しく電話をくれたエドが『機械鎧をぶっ壊した』とか言うから修理のために来たんだけど、
実際に会ってみると、機械鎧の故障より、エドのケガの方が重傷だった。
今回の機械鎧の故障はあたしが原因・・・だし。そのせいでこんな大ケガ。

まあ、その他にもケガした理由は色々あるみたいだけど、
相変わらず危ない事件に首つっこんでるらしい。
・・・少しは心配する方の身にもなって欲しいんだけど。


ケガは酷いし、機械鎧は動かないしで、エドはそれなりに長期の入院をすることになったわけで、
あたしは機械鎧のメンテとエドの看病をするためにここに残っている。



機械鎧のメンテも一段落付いた頃、『ずっといじってないから』と、エドに髪を切るように頼まれた。
リゼンブールにいた頃、おばさまが亡くなって以来は兄弟の髪を切るのはあたしの役目だったし、
エドの髪って意外と柔らかいから、いじっていて楽しい。
断る理由もないから、あたしはあっさりその依頼を受けた。

そういうことで現在、病室のベッドの回りに新聞紙を引いて作った即席の散髪台にエドが座っている。
おろした髪は結っていた跡がほとんど残らないような直毛で、女としてはちょっとだけ、悔しい。





「最近あんまり聞かないけどさー。」


作業をしている手は休めずに、エドに声をかける。


「昔はよく『失恋すると髪を切る』って言ったじゃない?」

「は?」

「あたしずっとそれが何でなのかわからなくて、考えてたんだけど」

「おう。」

「『髪を切る』って昔の人からしたらかなり思い切ったことだよね。」

「まあ、特に女は髪が命の次に大事だったりしたしな。」

「だからさ、髪を切るのは思い切って『想いを切る』って事なんじゃないかなーって。」

「・・・だじゃれかよ。」

「駄洒落じゃなくて掛詞よ!!!」

「はいはい。」

「だから、髪を切って終わった恋を忘れようとするのよ、きっと。」

「・・・」

「あたしが勝手に考えたんだけどねー。けど、それっぽいでしょ?」


言ってから自分でも恥ずかしくなって、ぎこちない笑顔でエドの顔を覗き込む。
エドはしばらく何か考えてるみたいだった。


「・・・ウィンは髪切るなよ。」

「・・・はい?」


それはなんだか話が違う気がする、とツッコミを入れようとすると、エドの言葉に遮られてしまった。


「俺、お前のその長い髪好きだし。」

「・・・」

「お前の恋は絶対に終わらないしな。」



『すき』だなんて今まで言われたこともないし、
あたしの気持ちなんて知らないはずなのに、さも知っているかのような口ぶりで向けられた
自信ありげな笑顔に、不覚にも、真っ赤になってしまって何も言い返せなかった。








_____悔しいけど、たった一言の「すき」があんまり嬉し過ぎて、
     たった一つ向けられたあいつの確信は、あたしにとっての事実だったから。










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