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何気なく手と手が触れた瞬間に、全身に電流が走ったような感覚に襲われた。まるで強力なスタンガンを喰らったような――実際に喰らったことはないのだけれど、指先からバチバチと電流が流れ込んできて、心臓も頭も何もかもいかれてしまいそうだ――。仕事帰りに万事屋に雨宿りに来た妙と、単なる馬鹿話をしていただけ、ただそれだけだった――なのに。互いに少しばかり酒が入っていた所為もあるのかもしれない。アルコールが互いの気分を昂ぶらせ、またその匂いが一層の酔趣観を纏う。互いの吐息に混じって放たれるアルコールのそれは醒め逝く事を知らず、ただその身体を熱に浮かすばかり。とは言え、全てを酒の所為と決め付けることが出来たか?答えはノーだった。無意識の中の意識で、いつかはこうなることに気づいていたのかもしれない。気が付けば次の刹那、男と女は唇を重ね合っていた。表面で致すだけの啄ばむような口付けを繰り返したあと、妙の小さく柔らかな唇の稜線を撫ぜてから自らの舌を侵入させた。本能的にか、思わず引っ込められた妙の舌を捕らえては絡めとり、深く吸えば糖分以上に甘い唾液。その唇はあまりにも甘美な響きで、目を閉じるのも息をするのも忘れていた。間断なく与えられる悦楽に翻弄されつつも必死に応えようとする妙の舌が、銀時の舌を優しく愛撫する。そのいじらしい動きがこの上ない媚態を現しているということに、妙は気づいていなかった。妙は雨の香りを纏っていた。湿っていて、何処かにほの暗さを感じさせるような、水の香り。その香に包まれた身体はいざ触れればひどく冷たくて、その華奢な身体を大きく包み込んだ。人肌の温かさに惹かれるように、妙も寄り添ってくるのが分かった。柔らかな稜線を描く身体が触れてくる。その度にまた、電流が流れるような感覚が自分の、そして妙の体中を強く駆け巡って。そして妙は切なげで苦しそうな、それでいてひどく扇情的な表情を見せてくるもの、だから。――自身を大きく煽られると同時に、走りかけた情欲に拍車をかけられることになった。触れるたび、揺れるたび、溶け合うたびに一層その感覚は増して、やがては二人を支配していく。このままこの行為を続ければ、きっと流れる電流は高圧になっていって、いつかそのまま、それこそ逝ってしまうかもしれない。昔外国の映画で見た、電気椅子の処刑のように。しかしながら、妙の身体はとうに穏やかな雨の雫に包まれてしまっている訳なのだから、二人はもうとっくに感電してしまっていても決しておかしくは無い筈。いや寧ろ、疾うに感電してしまっているだろう。――じゃあ、アレですか、アレ。神様仏様そんでもってキリスト様は俺らに感電死じゃなくて腹上死しろと仰ってる訳?物事を考えている余裕など無くなって来ているのに、こういう事ばかりは直ぐ頭に浮かんでくる。妙には何一つ考える暇も与えさせないのに。身体中に走るこの感覚は治まることを知らず、ただただ力を増して二人の中を駆け巡るばかり。このまま死んでも良い、などとは決して思わないのだけれど。たまにはこうして、感電したみたいに本能に溺れる、というのも良いのかもしれない―甘い甘い電流の海を抱いて、そんなことを考えていた。 (ああなんて、都合のいい) 戻る |