轟々と鳴り響く機械の渦の中、ハイデリヒ、とハンカチを渡されて初めて頬を伝う異物の存在を認識した。
決して冷たくは無い、寧ろ生温かい、人肌を感じさせるそれ。ああとだけ答える僕。白のハンカチは行き場を失う。出来るだけ背筋を伸ばして僕は言った。
「やっぱり駄目だね、猫がいると埃が増えちゃって」
埃が目に染みる、と続ける僕の唇に。猫?と尋ねられたのでああ猫だよと返した。
気紛れで、何時も心此処に在らずで。
僕には決して懐いて来ない。
金色の毛並みに鳶色の瞳の小さな猫。
綺麗な、きれいな猫。
埃は増える。
だからこそ、目に染みる。

「ああ、ほこりだよ」

消えやしない。