寝物語をしようにも、戯れ合う為の寝台は存在しません。
タイル張りの床はこの上無く固く凍れ、昂った肉体も精神も冷え氷り逝くばかり。長椅子なんて豪勢なものは此処には在りません。
在るのは物が散乱しきった小汚い机に脚輪付きの古びた鉄椅子。
安っぽいパイプと緩んだ螺子とが破壊の前奏と思える程の音を奏で、それでも決して壊れ逝くと言う事は無い小さな椅子。
逆に此の音が淫猥な音を掻き消してくれるから、私は時に一種の安定にも似たものをを感じているのです。
理性と快落とのボーダーラインで。
ぎしりぎしり、
貴方が私を突き動かす度に生まれる声。
職員室の貴方の椅子。
寝物語の変わりに、貴方は乱れきった私の一見の構成分子を元に戻してくれます。
舞い疲れた黒髪をさららと梳いては無骨な指で結い上げて、下着の留金を肌蹴た胸元を合わせてはひとつまたひとつと釦を掛けて。
赤いスカーフは自分で巻きます。
貴方の巻き方では只の緩んだネクタイにしか成り得ませんから。
制服の第三釦迄を掛け合わせたところで、貴方が一言。
「今度なぁ、職員室の机と椅子一斉に新品に取替えられるんだと。いい加減にボロくなって来たから」
へぇ、とさも興味無いわと言わんばかりの生返事で、私は応えます。
「俺的には万万歳なんだけどね。コイツ、固ぇし油臭ぇし、何よりうるせぇし」
アラ私は好きよ先生の椅子、と呟けば、
そうかと喉だけで返事をする貴方。
―だって
憧れるのよ。
と言葉を続ければ、
何を訳の判らぬことを言うのか!と思われたのでしょうか。
貴方のその瞳が一瞬収縮したかのように映りました。
服従する者、させる者。
私と貴方の繋がりなど何時壊れてしまっても可笑しくは無いのに、此の椅子は私の身体を貴方の激しいリズムを抱えるのです。
壊れ逝くこと等露知らず。
私は態と、椅子に大きく体重を掛けてはぎしり騒がしい音を立てました。
どれだけ乱したら此の椅子は壊れるのかしらと囁いて。
そうして貴方はその唇に不敵さを浮かべ、まるで掻き乱すかのように釦を外し始めます。
貴方が私に重なった刹那、ぎしりとまた、大きな声が生まれました。
乱暴に扱っても壊れることを知らない、小さな椅子。
思春期という名を借りた発情期の雌が腰掛けるには此の上無い贅沢だと思うのです。












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