四文字熟語行政書士物語 VOL.07

天下泰平

  器用貧乏法令オフィスの紹介をしよう、
所長の
石部金吉、補助者に石部銅吉曖昧模糊一望千里順風満帆白川夜船に営業の大器晩成
を加え全員で7名である。

 9月も中間を過ぎた頃、初老と感ずる男(
天下泰平)が入ってきた。

 「代表の方いらっしゃいますか?」大きな声である、
金吉は(ナンダぁ、クレームかな?)思うと
同時にベテラン
模糊が「どうぞ此方へ」応接に入れてしまい、なにやら話をした後、金吉のそばにき
模糊は「ハローワークに頼んでいた面接です。」履歴書と共に印象を聞き面接に向かった。

「どうしてここに来られたのですか?」
「はい、募集要項の各資格は持っていませんが、同等の内容の仕事が出来るつもりなので応募致しま
した。部長以上の役職で働かせていただきたいと思ってますが、給料の3倍は働きまス。…………」

 59歳、過去の経験はピッタリなのだが…・・、
金吉は皆とうまく行くのかどうか葛藤したが、自
分を売り込む術を買いたかった。

 「是非一緒にやりたいと思っていますが、労働条件等再考して明日、電話戴きたい。よろしくお願
いします。」

 過去に色々な年齢の部下を持った
金吉だが事業主としてでなく経営者としての勉強をしたかったの
かもしれない(年齢的に凝り固まった性格を変えられるのか?)。

 
天下泰平59歳、金吉との面接の時「先生は余りニコニコしないで面接するのですね。初めて会う
人に必要以上に愛想する事無いし、その方が信用できますね!」との言葉に同じ匂いを感じた。

 営業職を増やすのは
金吉の目標でもあった、この時期に攻めの経営をするリスクは大きいが、器用
貧乏
法令オフィスを躍進させるチャンスにしたかった。

 元々
金吉は不動産会社の営業マンである、過去営業部係長になって初めて後輩と呼ばない部下を持
ったのが27歳の時だ、その後32歳で部長になるまで、一歩ずつ階段を昇るように、課長代理―課
長―次長―部長―統括部長と毎年の昇進だった。

 その時の名残なのか組織を支えているのは営業力であり、全社員営業員がお題目になっているよう
だ。たしかに行政書士開業時は(仕事は顧客の確保であり、書類の作成は色々な他の先生に聞けば出
来る)と言うような余り深い考えなど無かった…・・。

 
他力本願金吉にピッタリの言葉である、本能的な感なのか、その仕事を最も良く知る人間と仲良
くなれる特技を持っている。

 例えば「銃刀法許可の更新どうすれば」の顧客の質問に対し、少し時間を貰い、警察関係退職のい
わゆる6号の先生に電話して調べて貰う。「風俗営業関係」であれば、公安委員会経験者と、色々経
験をしている人に教えて貰う、これすべて
他力本願である、もともとあまり深く物事を考えず、直感
とスピーディーな行動に任せている節がある。

 朝のミーティングが始まり。
「この問題は、
速戦即決で一挙に処理してしまいたい。どうですか?」
「それは、大先生が
率先垂範して事に当たらなければならないのでは?」
秋霜烈日のごとく、厳然とした態度で対処する方がいいだろ?」

「それは、
主客転倒です」

「しかし、この事に付いては
熟慮断行するべきじゃないのでは?」

「色々な意見から
取捨選択してみてからでも…・」

空理空論をもてあそんでもしょうがないべ」

「わたしは、
局外中立です」

「それでも
一蓮托生ですよね」侃侃諤諤の議論をたたかわす情景は珍しい。

 議論百出して、とうとう結論を出せずにいるところに電話が鳴り、強制的にミーティングが終わっ
てしまった。

 電話の相手は、
速戦即決 有限会社−代表取締役 一蓮托生氏からであった。

「昨日、電話を受けたとき留守をしていたが、建設業の更新をして貰いたい」との電話であった。そ
の電話は
天下泰平が掛けたものであった。

「大先生、チョットいいですか?」
天下泰平が所長室に入ってきた。建設業許可更新の手数料を聞き
に来たものだが、条件等(業種数、役員の人数、建設業決算報告の有無)聞いてもよく分からない。

「もう少し内容を把握しないと、幾ら幾らと云えないね〜。たまに一緒に行きますか?」
金吉の言葉
に安堵した様子の
泰平は、(色々質問できるな)と内心ほくそ笑んでいた。

 いったい札幌に資格者は何人ぐらい居るのか?との質問に
金吉はカバンの中から資料を出して説明
しだした。

 「平成13年9月1日付けの人数だが、行政書士会札幌支部会員は569人です。資格者の中では
2番目に多いね。一番少ないのは、弁理士の9名、公認会計士は100名、続いて土地家屋調査士は
231名と結構居るね、少ない順番でいくと第4位は、司法書士の265名、思ったより多いのが弁
護士が320名、社会保険労務士443名、最後に一番多い税理士1345名と云ったところだよ。
金吉の話しに、感心して泰平はブレーキのタイミングが少し遅れた(ヒヤ!ヒャ)。

 話し始めると、結構長い
金吉は、今月のテ−マ「提案型のほうれんそうを心がけよう」の説明を話
した。

 「そもそも、報告、連絡、相談(ほうれんそう)の報告とは、指示された人に返すこと。連絡とは
情報の共有であり、相談というのは、決済を受けることで、AかBで迷っているが、Bでよろしいか
?とゆうことだよ。」

 
速戦即決(有)の建設業許可更新は結果、決算報告を4年分まとめて提出することになり、締めて
金271,640円也。

 3年前以前の納税証明書は請求できないため「証明願」を提出して、この案件は処理された。

 

  天下泰平(てんかたいへい)        速戦即決(そくせんそっけつ)

  率先垂範(そっせんすいはん)
  人に先だって積極的に実行し、みんなに模範を示すこと。

  秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)
  刑罰・権威などが、きわめて厳しいことのたとえ。

  主客転倒(しゅかくてんとう)         熟慮断行(じゅくりょだんこう)

  取捨選択(しゅしゃせんたく)        空理空論(くうりくうろん)

  局外中立(きょくがいちゅうりつ)      一蓮托生(いちれんたくしょう)

  侃侃諤諤(かんかんがくがく)        議論百出(ぎろんひゃくしゅつ)