四文字熟語行政書士物語 VOL.05

才気煥発

 器用貧乏法令オフィスの補助者順風満帆、3年目のアシスタントチーフ(主任)である。

 満帆がオフィスの面接のとき、年齢を3ヶ月さばを読み入ってきた兵である、故に非常に
仕事に対しての意地があり、アシスタントディレクター(部長職)には事有る事に報告、連
絡、相談を徹底している。


 その華奢な体格からは似つかない行動をし、
建設業許可申請におけるプロフェッショナル
である(ちなみにアマチュアとプロフェッショナルの違いは、法律、根拠法令等をよく知っ
ているか否かであろうか)。


 建設業法、建設業施工法令、許可の手引きを、暇があると眺めている勉強家。

 器用貧乏法令オフィスの役職は、大先生、先生、ディレクター(部長職)、マネージャー
(課長職)、インストラクター(係長職)、チーフ(主任)、アシスタントとなっている。
金吉
の企業に対しての憧れであろうか?、このように組織風にしてあった(もし法人にする
なら株式会社を)。

 ()融通無碍、代表取締役暗中模索が法令オフィスに電話を入れたとき金吉は出かけてい
た。

「はい、器用貧乏法令オフィスで御座います」満帆が電話に出た。

「ハガキを見て電話しているのだが、石部さんは居るのかね」

「はい、どちら様でしょうか?」(居る、居ないの前に相手を確認する)

融通無碍暗中だが石部さんは?」

「はい、大先生は一寸席を外していますが、折り返し電話させて頂きますのでお電話番号をお
願い致します、どのような事でしたでしょうか?」

この様に返事は全て、質問話法をしている、満帆が一番得意としているところである、たとえ
金吉が出掛けて居るにもかかわらず相手の会社名と名前、電話番号を聞き出してしまう(いか
にも連絡が直できるような言い方)。

 満帆はパソコンの前にいる千里に「電話番号361の××××番検索お願い致します」(ハ
ガキが行っているのは必ずパソコンに入っているはず)

「大先生、反響です!事務所に電話下さい」直に、金吉の携帯電話に電話をいれる。

 金吉が顧客宅を出てオフィスに電話を入れると弾んだ声の満帆

「大先生、建設業の事で反響が入りました、361−××××です、
携帯は000番です、今年
の7月のDM(ダイレクトメール)です、
()融通無碍で住所は北区になってますがアンチュウ
様、男性です」

電報のような話し方は小気味良く、要点が良く把握できる。

 40分後に訪問する旨の電話を金吉から受けた千里は、住宅地図をコピーし夜船に届けると、
再びパソコン操作に戻った。

いつもの事であるが、案の定30分もすると迷子の金吉から夜船に電話がきた

「酒池肉林スナックの前だけど近いかな?」

「50メートル先に旧態依然銀行が有ります、
右に曲がり左に支離滅裂証券の前の道を左に入り
3軒目です」

 辿りついた金吉は一戸建の前に愛車BMWを停車した。(株式会社と言っても本店を自宅に置
き営業している会社が本当に多いナ〜)

 株式会社融通無碍・代表取締役暗中模索・59歳・社歴は15年になる、屋外看板製作の建設
業だが、社員は居なくて1人でやっていた。

「免許とか無くても建設業許可取得出来ますか?」

「できますよ!資料が有ればですけども・・」

 なんとこの会社は2年前に税務署が入り、必要書類は全て保管されていた、ダンボ−ル箱2つの
書類の山を持ち帰った金吉満帆はやる気十分の目で迎えた(ウッシャ〜)。

 早速、満帆は建設業許可申請に向けてスタートをきった、手始めにする作業は今回申請の実務経
験に基づく 注文書 契約書の抽出作業である、山のような書類の中から工期順に揃えていかなけ
ればならない時間の掛かる作業である、6ヶ月の余裕を持って126ヶ月分!(さあヤルゾ!!)

書類の年代が古くなるにつれ御茶の跡や染み、現場で直接渡されたものなのか泥の付着等5年ほ
ども遡った時点で手が真っ黒になってしまった。

10年くらいも前の書類になると、管理の悪さか原型を留めない契約書に閉口する満帆であった
が油断大敵、小さなミスが後々大変な事に為ることを良く知っているため、手落ちの無いよう注意
深く整理していく。

自分の仕事を終えた千里満帆の所に来た「何かするか〜い?」

「あ、そしたらプランニングお願いします」

「プランニング?、(プランニングとは器用貧乏法令オフィスにおける依頼業者の要約書で内容が
一目で解かるようにしたもの)あッ、わかりました、その前に役員の住民票と会社の履歴事項全部
証明を取らないとダメですよネ?」
「大丈夫、手配したヨ〜」

なかなかチームワークの良いコンビネーションである。

更に千里満帆に質問した、
「常勤は暗中模索氏一人なら経管(経営業務管理責任者)も専任(専任技術者)も模索氏でよろしい
ですよね、ところで業種(全28業種)は何業ですか?」

「あッ、屋外看板なので鋼構造物工事業です。」

 金吉が書類を預かった3日後に満帆は、書類を抱えて所長室に入ってきた。

「大先生、これが顧客から印鑑を押印していただく書類です」

「おゥ、もう出来たの早いね!」上機嫌の金吉
「それじゃ今日書類を貰って来るから、明日提出できるかィ?」

「はい、大丈夫です」

 今日出来る事は、今日終わらせる、スローガンである。

 用意周到な準備のもと書類が完成し、無事に受理票を持ってオフィスに帰る足取りは軽かった(2週
間前に提出した建設業許可申請は、財務諸表の転記ミスで午後に再び提出し直して通した時は、鉛の入
った靴を履いたようであった)。

「只今〜、終わりました!」

 拍手で迎えられた順風満帆は、小さな舌を出し明るく事務所に入ってきた(これで明日の朝礼の主役
は・ワ・タ・シ)、さらに2日前からひいていた風邪もすっかり治りパワー全開、仕事が旨く行くと体
調まで回復するようだ。

 

 

 才気煥発(さいきかんぱつ)    頭の回転が早く、才知がひらめいていること。

 融通無碍(ゆうずうむげ)    行動、考え方が自由で伸び伸びとしたさま。 

 暗中模索(あんちゅうもさく)     酒池肉林(しゅちにくりん)

 旧態依然(きゅうたいいぜん)     支離滅裂(しりめつれつ)

 油断大敵(ゆだんたいてき)      用意周到(よういしゅうとう)