第五話〜「DIARY」〜
 
 
 
 
 
「もう、駅ですね。 先輩。」
「ああ。」
 
いつもこの駅前に来ると俺達は無言になる。
それは彼女とここで別れなくちゃいけないからだ。
学校から駅までほんの十数分。
だけど彼女と一緒にいられるこの短い時間が凄く楽しみで嬉しかった。
でも、楽しい時はすぐ去っていく。
 
”今日はもう一緒にいられないんだ。”
そう思うと何も言えなくなってしまう。
 
 
同時に彼女も少し寂しそうにうつむく。
 
 
それが俺達の毎日の一コマ。
 
 
「それじゃあ先輩、また明日。」
彼女が少し寂しそうな顔で挨拶をしてくれる。
「あ、ああ…。」
だめだ。何やってるんだよ、俺!!
何か、何か言ってやらないと!!
 
 
 
 
「あ、あのさ!」
「はい?」
俺の声に改札を通り過ぎた彼女が振り返る。
 
 
 
「い、いや…、何でもない…。おやすみ。」
しっかり時間をかけた末、言えたことはこれだけだった。
 
 
「おやすみなさい。」
でも、そんな俺に彼女は微笑んでくれた。
 
 
”ちくしょう、何やってるんだよ。”
俺は一人愚痴りながら駅から離れていく。
でも、今の気持ちはほんのちょっとだけ
あの時より楽な気がした。
 
 
 
〜Fin〜
 
 
 
 
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