第二十三話「声」
ある晴れた日、人混みの中ふとあの声が聞きたくなった。
理由は分からない。というより無い。
なんだかんだ言いながらいつも笑顔を絶やさないあいつの声が無性に聞きたい。
ただそれだけだった。
携帯を手に取り、ワンプッシュでコールする。
トゥルルル。
トゥルルル。
トゥルルル。
トゥルルル。
トゥルルル。
トゥルルル。
トゥルルル。
ピッ。
「はい、もしもし。」
携帯を通して聞き慣れたあいつの声が入ってくる。
別に当たり前のことだが、何故か安心する。
「あ、俺だけど今、忙しいか?」
「まあ、少しならいいわよ。」
「そうか。」
「で、何?」
「ん、用って事はないんだがお前の声が聞きたくなった。」
「…。」
ん、どうした?
「バカ、恥ずかしいこと言わないでよ。」
「俺は恥ずかしくないぞ。」
「私は恥ずかしい…。」
「そうか。」
「うん…。」
「…。」
「お「あのさ、」」
「なんだ?」
「今日、夕方空いてる?」
「空いてるぞ。」
「だったらさ、久しぶりにデートしない?」
「ああ、いいな。」
「じゃあ6時に駅前のいつもの場所でどう?」
「例の店か。最近行ってなかったからいいな。」
「うん。じゃあまた後でね。」
ピッ。
携帯を切り、画面の時計を見るとまだ少し時間がある。
「電話するの少し早すぎたかもな。」
一人呟いた後、空を見上げる。
この時期特有の透き通った高い空は何となく俺の気持ちを表している感じがした。
〜Fin〜