ほんのりと、薔薇の香りがするほどに
唇が、アリスの肌を這い、徐々に服が脱がされて行く。
「駄目・・・・・」
その、ブラッドのマントの留め金に、アリスは手を伸ばした。
「ん?」
「駄目・・・・・貴方も・・・・・」
「それは失礼した」
アリスの指先が、ブラッドのそれをはずし、肩からマントが滑り落ちる。彼女の指先は、それから男のタイを外し、シャツのボタンをはずし、着ていたベストを脱がせようとする。
温かな肌に、彼女の華奢な指先が触れ、うっとりと見上げる彼女の目許に、口付けを落とした。
「それ以上はいいのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいの」
それ以上。
自分のスラックスは脱がせないのかと、言外に言われて、アリスは首まで赤くなった。困ったように視線を泳がせる彼女が堪らなく可愛くて、彼女のスカートの裾に、そっと手を忍ばせた。
「んっ」
乾いた掌が、太ももの、際どい所を撫でる。きゅっとブラッドのシャツを握りしめるアリスに伏せって、男は彼女の着ていた魔女の衣装を引き下ろして、零れる白い膨らみに唇を寄せた。
こくん、とアリスの喉が動く。手を伸ばし、彼女はブラッドの背中に触れる。身を離して、シャツ脱いでやると、アリスはきゅっとブラッドに抱きついた。
素肌に触れる彼女は柔らかくて温かい。
滑らかな肌が、心地よくて、ブラッドはしばらく、温度を確かめるように彼女を抱きしめた。
「アリス・・・・・」
身体に響く声が、気持ち良い。
じわり、と身体の中心が満たされたくて、熱を求めて濡れて溢れるのが判り、アリスはぎゅっと目を閉じた。
「アリス」
酷く甘い声が名前を呼んで、吐息が肌を掠めていく。アリスの肌を這う指が、そこここを浚い、濡れた舌が、柔らかな膨らみの頂きを掠める。
「んっ」
びくん、と身体を震わせ、アリスはしがみ付くブラッドの肩に爪を立てた。笑いながら、男は舌で唇で、アリスの肌を溶かしていった。
腰の辺りが疼く。耐えられない熱が、零れていく。
「はっ・・・・・あっ」
漏れる声は艶っぽく、脱がされた服が、ブラッドによってベッドの下に落とされるのが見えた。
「・・・・・私は運が良かったのかな?」
「え・・・・・?」
「君と付き合った男が能なしで」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「こんなに綺麗で、可愛らしい花を散らす特権を得られたんだから、な?」
頬が熱くて、瞳が潤んで、アリスは言葉が出ない。
素直に、抱かれて嬉しいと思う。
触れて欲しいと思う。
この人になら、全部を捧げても、構わない。
「ブラッド・・・・・」
必死に名前を呼べば、優しすぎる口付で声を飲み込まれた。
捕まえていて。
この手を離さないで。
お願いだから、傍に居て。
頑ななアリスを溶かす手が、彼女の身体の中心に忍び込み、柔らかく愛して行く。
指先も、唇も、重ねた肌の温度も、全部が同じ方向を向いているようで、アリスの胸が一杯になった。
愛されていると、思っていいのだろうか。
この人が、ただ唯一求める人間が自分だと、自負しても大丈夫だろうか。
「んっ・・・・・あっあ」
溶けてどろどろになる、アリスの身体。ただ夢中でブラッドに手を伸ばせば、重ねた手が、答えるように握り返してくれる。
膝を割られ、ゆっくりと押し入ってくる来る熱に、眩暈がした。
「ふあ・・・・・あっ・・・・・ああ」
ずくん、と身体の奥が熱を帯びて震え、掠れた吐息がアリスの耳に届く。
「ひゃあ」
微かに触れただけなのに、それがきっかけで、飲み込む物を締め上げてしまう。
「・・・・・耳が弱い、か?」
ぽそっと囁かれた低音に、更に身体が震える。
「・・・・・面白いな」
くく、と笑われて「イヂワル言わないで」とアリスは必死にブラッドの手を握る。
「動いても?」
「っ・・・・・ああっ・・・・・ふっ・・・・・」
「アリス?」
「だ、から・・・・・耳っ」
ちろ、と舌先で弄ばれて、アリスは涙目でブラッドを見やる。顔を離した男が、緩やかに腰を動かした。
「ふあ」
「可愛い魔女さん?」
私を誘惑した代償を、払ってもらうよ?
緩やかで、じれったい挿送。
「ああっ・・・・・やああ」
酷くゆっくりと身体を嬲られる感触に、じわりじわりと身体が侵されていく。
理性が焼き切れて、もっとと、求めるようにアリスが身体を動かすから、笑みを敷いたブラッドがアリスの腰を高く持ち上げた。
「っ!?」
「そう、煽られると我慢できなくなる」
柔らかく堪能していた男が、今度は急激にアリスを求めて動かすから、高くて甘い嬌声がアリスの唇から零れた。
「あっあっあっあ」
その声が、更にブラッドを煽って行く。
あられもない格好で、組み敷かれたアリスが必死にブラッドの行為に応えようとする。
それが、堪らなく可愛くて、ブラッドはそっと手を伸ばすと柔らかな膨らみの先端を撫でた。
「っ!?」
「・・・・・・・・・・気持ちいい?」
更に、濡れて音を立てる秘所の、花芽を撫で擦れば、びくんと身体が強張るのが判った。
「やあっ・・・・・あっ・・・・・んぅ」
持ち上げられた脚の、つま先まで震える。
ぐちゅぐちゅと音が立つほど、膣内を掻きまわされ、応えるように濡れて温かな蜜が溢れてくる。
追いかけて、追い詰めて。涙の滲む彼女の目尻に口付ければ、きゅっと自身が締め上げられるのを感じた。
「っ」
「ブラッド・・・・・駄目っ・・・・・」
「それはこっちの台詞だな、お嬢さんっ」
こみ上げてくる、逃げられない波。はふ、と息をもらし、声を上げるのが精一杯の彼女が、縋るようにブラッドの手を握りしめた。
「あっあっ・・・・・ブラッド・・・・・も・・・・・イっちゃ・・・・・んっ」
「・・・・・・・・・・アリス」
ちかちかと目蓋の奥が点滅するのを感じ、アリスは溶けていく身体が、快楽の波に放り出されるのを感じた。
落ちていく。
目蓋の裏が白い。
その中で、たった一人の、あいしているひとに支えられて、繋がって、ようやくここに存在しているような気がして、眩暈と動悸の中で、解放されるアリスはほうっと安心したように、震える溜息を零すのだった。