ケース 進さん
 
  加筆訂正  2024年05月05日 2020年09月03日 2019年09月21日
  公開  2019年06月23日
 
 今から35年から45年以前は、脳性麻痺となった子どもを療育施設に修養して、1年から数年に渡り療育指導を継続して施していました。
 進さんは真子さんとは違った療育施設で療育指導を受けました。
 進さんは子どもとは異なり、変化は乏しく、加筆訂正することは少ないかも知れませんが、変化が有れば書き込んで参ります。
 今は幼い子どもであっても、いずれは成人となります。その時をイメージされて見ていただければ幸いです。
☆ 私と知り合ったきっかけは…?
 車椅子陸上アスリートを行うサークルに、訓練会参加児が加入されて、その先輩として進さんを知りました。
 進さんがある療育施設で療育指導を受けていたと伺い、その時期の運動機能などを聞いても、私にはずいぶんともったいない人生を送って来たように想えたのです。
 クラッチを使って歩けていた!
 四つ這いはできていたが、車椅子生活が多かったので、家庭内では腹這いで過ごしていた?
 ベットに寝ていて、ベットの柵くの枠を持ち、起き上がり、ベットの縁に座り、立ち上がって車椅子に乗り、それで施設内で生活していたと言われるのです。
 確かにこれでは、四つ這いをする必要も無くなり、現在の運動機能となっているのかと納得したのです。
 でも、身体が痛いと訴え、診れば円背となり、車椅子に乗っていても足台から足は外れ、とても悪い姿勢で車椅子に乗っていました。
 治療を施すことによって、身体の痛みが軽減するのか? 車椅子に乗っていての姿勢が改善できるのか? 過去のようにクラッチで歩くことが再び可能となるのか? 幾つもの課題を抱えて訓練を始めることとなりました。
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∞ LS-CC松葉杖訓練を開始→46歳
・ 臥位から座位まで可能。
 身体の右側面を床に向け、左手で床を押すようにして腹筋を使いながら起き上がる。
・ 坐位は長坐位で、両手を後ろに着いて、後方の手で身体を押すようにしていざり這いを行う。
・ 仰臥位となると、両足が膝部でクロスする。
・ 両足母子が、屈曲している。
・腹臥位となると、腰が痛いと訴える。
・ 腹臥位で、胸部を床から離すことは腰痛を増すこととなりできない。
・ 股・膝・足・肩・肘・手関節が関節可動域が狭まり、他の関節の動きも制限されている。
 全身のストレッチ後には、少しは全身が和らぐのかも知れない?
→ 訓練開始2週間
 2週間以前よりも身体を動かしやすくなり、ストレッチの際にも痛みを訴えることが減っている。
→ 訓練開始1ヶ月
 側臥位からの起き上がりはできるが、腹臥位から起きることは難しい。
 難しい原因は、股関節を曲げることができないから…
 股関節を曲げる練習と、立位を兼ねて松葉杖訓練に入る。
 松葉進度1。
→→ その2週間後
 松葉進度2となる。
 松葉杖訓練で、股関節と膝関節を曲げて、足を出すことができない。下肢の支持性も弱いのだが…
→ 訓練開始6ヶ月
 松葉杖訓練では、進歩が診られない。若干の立位保持時間が長くなった程度か…
 クラッチ歩行ができていたと言うのは、どの様な意味なのか…
 四つ這いも少しはできるが、距離やスピードに変化がない。
→ 訓練開始9ヶ月
 私の都合で2ヶ月ほどの期間訓練を休止した。
 たかが2ヶ月の訓練休止だが、関節可動域は狭まり、関節を動かされることによって痛みを訴える。
 腰が痛くて肘立て位となれない。
 丁寧に全身のストレッチを行う。
 松葉杖訓練や立位訓練は行わなかった。
→→ その1週間後
 1週間以前よりかは関節を動かしても痛みは訴えない。
 肘立て位が少しだができるようになる。
 成人脳性麻痺者に対して、ストレッチの効果は偉大なのでは…
※ 松葉杖を使っての訓練は、それ程の成果を上げられないようなので止める事とする。
→ 訓練開始1年8カ月
 コロナの影響で会う事もできず、5カ月ぶりにお会いした。
 全身が固くなり、ほとんどお会いした時のように戻っている?
 全身にストレッチを施すと、身体が和らいでいくことを触覚的に感じる。
→ 訓練開始4年
 ストレッチを施しているが体調に影響され、効果が出やすい時と出ない時とがある。
→ 訓練開始5年4か月
 ストレッチを施しても、数年前よりも効果が出ない。
 年齢のせいなのか?
 ストレッチで動かされる事は、気分は良いとの事。
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○ 進さんの動きや姿勢を診て、考えさせられる点は…
 何しろ昔のこと、本人は幼い時期のことなので覚えているはずもないし、保護者も高齢と昔のことなので、記憶が曖昧…
 いろんな話を合わせて推測しかできないのだが…
□ 床での起き上がり指導で…
 進さんは側臥位から起き上がることができます。床から一人で起き上がることは、起き上がれないことと比較すればどんな方法でもできたのが良いに決まっています。
 しかしどんな方法でも床から起き上がれば良いのではないのです。起き上がってからの発達に影響があるからなのです。
 運動発達として、床に座るようになり→四つ這いを始め→つかまり立ちを始める…!
 この順で発達することが、つかまり立ちや伝い歩きにつながっていくのですが、側臥位からの起き上がりでは四つ這いに結びつきにくく、いざり這いを行うこととなり、つかまり立ちが難しい姿勢となって、椅子からの立ち上がりなどを練習することに結びついていくのでは…
□ 四つ這いを何故に行わせないのか?
 四つ這いができるようになっても、ベットから車椅子、車椅子から他の椅子に、再び車椅子からベットに…、この様な生活では四つ這いを行うことが無くなります。
 四つ這いは単に移動手段の一つではないのです。
 四つ這い移動を行うことによって、股関節や膝関節を屈伸させることを学習し、四つ這いでのバランス確保を学んでいるのです。
 四つ這いができるならば、是非にも多く行わって欲しいです。
□ クラッチ歩行ができていた?
 本人も保護者も、当時指導していた者も、クラッチ歩行ができていたと考えているようなのです。
 膝は曲がることが無く、腰は伸びることも無い、そしてクラッチを持って変形高這いをすることがクラッチ歩行…???
 進さんの松葉杖訓練を通じて、股関節と膝関節を同時に動かした事が無いことを知りました。それは本人が言っているのです。
 立位の様な姿勢で、動けば歩行?? それは間違っています。
 歩行というのは、左右の足に体重移動を行い、足を前に運ぶ際には股関節と膝関節を曲げる、そして片足が地面から離れている間は他の足で身体を支える。これが歩行の基本の形です。
 この際に、不安定なバランスを補うために杖やステッキを使っていてもかまわないのです。
 この様な指導が行われていないために、二次障害となった時に、とことん基本のできていない所まで落ちてしまうのでは…
・ わずか2ヶ月の訓練休止、しかし関節可動域は狭まり、身体を動かせば痛みを生じる。
 成人脳性麻痺者にとって、二次障害を予防し、楽な生活を保証するためにはせめてストレッチを施す治療が医療機関で行えるように勧めたいです。
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◎ 指導する者からの期待と希望
 真子さんの様には二次障害を改善できませんが、痛みと変形は予防したいです。
 その為には、正しく丁寧なストレッチが効果を現すのでは…!
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@ さんぽ道 その3
 
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  製作 LS-CC松葉杖訓練法 湯澤廣美