瑞稀(みずき)ちゃんの場合
公開 2021年08月07日
突発性周期性失調症2型と診断を受けるが、指導に当たってその様には思えない?
3歳2か月からのLS-CC松葉杖訓練
☆ 生育歴
在胎40週で吸引分娩となり、頭に外傷を負っていました。脳の中に損傷はないとの説明を受けました。3526gで出産。
首がすわったのは・・4カ月か5カ月。4カ月になったすぐに乳児検診に行くと再診となり、その2週間後も再診となりました。その後5カ月になったその日に検診に行った際に、「首がすわった」と言われました。
発達の遅れが顕著となり、10ヶ月の頃より地元の市立病院の小児神経医師の診察を受ける事になりました。初診の際に眼振が診られた為、要精密検査となり、MRIや血液検査、髄液検査等を行いましたが、いずれも問題はありませんでした。その後1歳半、3歳でもMRI検査を行っていますが、いずれも問題は出てきません。
訓練を開始したのは11カ月。
寝返りを始めたのは・・1歳頃。動きを何度も何度も練習して「やっとできた! といった感じでした。
自分でお座りを始めたのは・・1歳頃に→お座りの姿勢に持ち込むと両手を離して姿勢を数分は保持していましたが、何かの拍子にバランスを崩して勢いよく後方に倒れるという状態でした。自力でお座りの姿勢になるようになったのは、1歳4カ月頃。バランスが悪く、いつも大人が後ろで見守っているという状態が続きました。「目を離しても安心」と思えるようになったのは、2歳を過ぎてからです。
初語は1歳半頃に、「ネンネ」・「マンマ」等を話し始めましたが、その後も言葉は増えており、二語文なども時々でるのですが、基本は単語でした。その際も発音が不明瞭だったり、音の一部のみを言うこと(例:お母さん→「カー」等)が多く、親だけが言っている言葉がわかる程度という状態でした。発達検査等では、言語理解だけを取り出してみると「年齢相応」との結果が出ているのですが、手先も不器用、全体的に動きがゆっくりで反応も鈍いため心配していました。知的障害が有るかどうかは、今後の発達を見ていかないと判断できないと担当医師にも言われています。
当初は、全体的な発達の遅れ(精神運動発達遅滞)ということで経過を診ていましたが、1歳11ヶ月に理学療法士より「動揺」が診られるとの指摘を受けました。また同時期におこなった発達検査で、「知的発達に比べて運動発達の遅れが著しい」との結果を受け、これまでの経過を総合して、2歳0ヶ月に担当医師より「先天性の失調型脳性麻痺」との診断を受けました。同時に身体障害者手帳(1級)を申請し、公布されました。
つかまり立ちを始めたのは・・1歳6カ月。1歳10カ月から蟹歩き様の伝い歩きができるようになりましたが、バランスが悪く、現在も安定した伝い歩きが獲得できずにいます。
歩行練習に入ったのは・・2歳1カ月頃。インソール付きのハイカットシューズを造り、その靴を履いて、療法士が手、肩、肘、腰等を手で支えながら歩かせる。腹筋に力が入らず歩幅が安定しないと言うことで、2歳5カ月に腰を支えるコルセットのような物を制作し、それを着けて歩行訓練することもあります。2歳10カ月頃からは平行棒でも歩行訓練しています。ゆっくりではありますが、手足を交互に運び、平行棒内を自力で動けるようになっています。ただ、なかなかバランスが取れず、スムーズな動きができていません。正直な所この一年間はあまり成長を感じることは出来ていません。
四這いを始めたのは・・2歳2カ月。動きはとてもゆっくりです。
この一年ほどでPTの体調不良等によるキャンセルが頻繁にみられます。なるべく多く訓練の機会を確保できるよう仕事など様々な調整をして臨んでいるので、当日に電話一本で簡単にキャンセルされてしまうことに不信感を抱いています。
選択肢が限られた中で、娘により良い療育の場を提供できないか、と日々不安を抱え、悩んでいるところで、この訓練法を知り受ける事としました。
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∞ LS-CC松葉杖訓練を開始→3歳2か月
臥位から座位まで問題なし。割座となり円背。
移動はゆっくりとした四つ這い。
立位に持ち込むと、骨盤介助で可能だが立位の際に、重心が後方に有る。
関節可動域には、特に問題なさそう。
訓練内容・・全身のストレッチ、立位、松葉杖歩行訓練。
言葉を発している様だが、私には理解できない。
→ 訓練開始から2カ月まで
松葉杖歩行訓練に入る。松葉進度1〜2
松葉杖訓練は泣いていて行えない。
歩行器を貸しだす。歩行器でも泣いている。
→ 2か月後
松葉杖でも歩行器でも泣いていたが、松葉杖で泣かずに行えた。
アンパンマンの音楽を流して…
→ 3カ月後
松葉進度3となる。
→→ その2週間後
松葉進度4となる。
→ 10カ月後
お母さんと良く松葉杖で歩くようになってきている。
階段昇降の練習を始める。練習方法は教本の応用歩行を参考にして欲しいです。
私が理解できる言葉の数が増えている。発語に私が慣れて来たのか?
→ 1年5カ月後
突発性周期性失調症2型と診断を受ける。
→ 1年7カ月後
突発性周期性失調症2型の治療薬として、アセタゾラミドの服用を開始。
以前は歩行器での歩行はバランスが保てずにできなかったが、屋内で歩行器歩行が可能となる!
→ 1年8か月後
なかなか歩行距離も速度もアップしなかったが、松葉杖歩行が400mから500m程可能となる!
階段昇降も介助は必要だが、うまく昇降するようになっている!
両親と共に、家の周囲や駅まで、郵便局やコンビニまで行く事を繰り返していたとの事。服用する薬が何らかの影響を及ぼしているのか?
発語の単語数が格段に増えている。
→ 2年2か月後
松葉杖歩行で何処でも歩くようになる!
立位バランスは悪く、独歩は難しいのか? 松葉杖と並行してロクストランドクラッチ歩行を開始。
→ 2年4カ月後
日常生活が訓練中心となっている。(この時期から半年後には、訓練中心で運動機能が改善した事を喜ぶ半面、子どもの意思を尊重できなかった点で反省しています。)
→ 3年後
瑞稀ちゃんのお宅は、共働きでご両親共に忙しい。そんな多忙の中で、我が子の訓練をどの様に指導しているのか?
お母様が寄せてくださいました。
→ 3年2カ月後
ロクストランドクラッチでの歩行が、安定した!
床から一人で立ち上がり、そのまま立位保持が数分間可能となる!
→ 3年4カ月後
特別支援学校に入学。特に地域の学校と同様の教育が受けられるように配慮を求めて
→ 3年8カ月後
ロクストランドクラッチ歩行も安定し、訓練での片足立ちも安定した。
対話がきちんと成立するように言葉が出ている! 失調型の発語だが、充分に聞き取れる発語だと思う。
独歩練習を試みたが、調子が良ければ数メートルの独歩が可能か? このまま独歩が可能となってくれると嬉しいのだが・・・
→ 4年1カ月後
ひょっとしたならば独歩が可能となるのか!
本格的に独歩練習を指導の中に加える。
課題は、バランス確保・歩行スピード。
→ 4年7か月後
クラッチ歩行のバランスは良くスピードも有るが、独歩のスピードが欠け、やはりクラッチ歩行での日常生活を勧める。
→ 訓練開始5年2か月
松葉杖歩行ができるようになってすでに4年が経過している。
今までの症例では松葉杖歩行ができるようになって、3年前後でもって独歩に至る子どもが多く、この時期を逃すと生涯を松葉杖やクラッチでの歩行で過ごす児者が多かったので、瑞稀ちゃんもその例と考えたが、お母さんとお父さんの努力に瑞稀ちゃんも加わり、思わない結果を得られた!
床から一人で立ち上がり、30mから40m程の独歩ができるようになった!
→ 訓練開始5年4か月
床から一人で立ち上がり、150mから200mを歩くようになる! 途中2から3回の転倒もあるが…
→ 訓練開始後6年5か月
保護者の噂で、独歩を始めたと聞いたので、尋ねた結果…?
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瑞稀も四年生、高学年の仲間入りです。早いものですね。
独歩は最近、水野のお母さんたちからも、「上手に歩けるようになってきたね!」と声をかけていただくようになりました。
今は、大型のショッピングセンターに遊びに行っても、室内はタスキもつけず、見守りだけで1人で歩いています。軽く一時間は歩きますので、1キロ以上は歩いていると思いますが、疲れることなく楽しく歩いています。
トイレも、身障者用、健常者用問わず、1人で入って出てくることもできます。
この間、主人と瑞稀が2人で買い物に行き、主人がトイレに行っている間に、約束した場所から離れて迷子になりかけたそうです、笑…瑞稀が迷子になるなんて
信じられないエピソードです。
室内での独歩は、この一年間でずいぶん上達してきたように思います。もちろんよく転倒もしますが、手をついたり尻もちをついたり、怪我をするような転び方はしていません。
一方で外は、まだ危なっかしくてタスキをつけて歩いています。
ただ、以前は全く歩けませんでしたので、徐々にバランスが取れるようになってきてはいると思います。
坂道や段差はまだまだです。
努力するための正しい方法をこの訓練で教えていただきました。
今までの人生の中で、こんなに一生懸命に努力を続けたことはありませんでした。
“継続は力なり…。”
瑞稀の成長を通して、改めて実感することができました。
↓・↓・↓・
◎ これまでの経過を振り返って・・・
保護者の感想
いただいたならば公表させていただきます。
指導者の感想。
失調型の麻痺児は、発達の予測が立てにくい。
だが、松葉杖歩行やクラッチ歩行までは四つ這い移動ができればほぼ可能になるのだが・・
独歩となると麻痺の状態だけでなく、知的や視角の能力も影響してくるので発達の予測が難しい。
・ 訓練開始4カ月ほどで松葉進度4となるのはとても速い!
・ 松葉進度4となっても、時々倒れる事が有るので保護者は怖がる。怖いと感じる保護者は子どもを松葉進度5として見守る事ができない。
この親子しての恐怖感が、何時になっても運動機能を改善させるための妨げとなっているのでは? 訓練開始2年を過ぎてから、保護者が恐怖感を抑えて子どもを見守る事ができるようになってから、運動機能は更に改善したのでは・・!
・ 松葉杖進度4となってからおよそ3年が経過、他の麻痺の子どもと同じ様に、独歩を獲得するための練習ができるようになっている! 独歩を獲得できるのか?
・ 独歩もできるがスピードに欠けるために、独歩は限られた所で、クラッチ歩行を日常生活の場で…
私がこの様に迷う事は、良いとは思えないが、保護者と子どもが独歩を目指しているのは喜ばしく感じる。
・ 30mから40mの独歩可能を得たが、今後も可能性を拡大できれば、私の新たな知識として他に応用したいです。
・ 私の考えた以上に、運動機能が伸びた子どもです。
伸びたのには、私の考えよりもずっとずっと親子での努力が有ったようです。
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製作 LS-CC松葉杖訓練法 湯澤廣美