真優美ちゃんの場合
 
 公開 2019年01月21日
 脳症の後遺症として肢体不自由
 7歳0か月からのLS-CC松葉杖訓練による取り組み

☆ 生育歴
 41週0日で出産。体重3386g。
 1歳2か月時に高熱、その後に脳症となる。
 首がすわったのは→1歳4ヶ月(発病後2か月)
 1歳6か月(発病後4か月)から訓練開始。
 寝返りを始めたのは→1歳6ヶ月
 自分でお座りを始めたのは→2歳(発病後10か月)
 四這いを始めたのは→3歳(発病後1年10か月)
 つかまり立ちを始めたのは→3歳8ヶ月(発病後2年6か月)
 歩行練習に入ったのは→3歳、足関節に可動性の無いSLB着用で平行棒やPCWでの練習。
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∞ 7歳0か月で訓練会に参加されました。
 すでに7歳、この年齢からの指導で歩行が獲得できるか疑問を持って子どもを診たが、ずいぶんと状態は良いようなので試みることとしました。
 臥位から座位まで問題なし。四つ這い可能。
 立位→物につかまって立つことはできるが、床からは立ち上がれない。立ち上がる際に、足の力で立ち上がらずに手で身体を引き上げたり押し上げている。
 歩行:後方から身体を支えると歩くように見えるが、重心は後方で足を運んでいるだけである。
 関節可動域:特に問題となる箇所は少ないが、足部が外反扁平尖足位である。
 歩行器を使って歩行を試みたが、数bは歩くことができる。壁などに衝突する。
※ 歩行器=ここで言う歩行器は、通常から見れば特殊な歩行器です。ハンドル型で、押して使用します。前輪は何の抵抗も無い固定輪。後輪は、方向が自由に向くことのできるキャスター。クロコダイル(歩行器の一種)を使用すれば、同じ様な使い方が可能です。クロコダイルをPCWと同じように使用している時、後方の車輪の抵抗を外して自由に動くようにする。前輪は動きを抑制している装置を外し、キャスター用の動きが可能とする。押し部の高さは、子どもの乳頭部とする。
※ 麻痺のために歩行ができていないのではなく、知的にボーダーラインであり、誤学習の結果で独歩に至っていないと考えました。
→ 訓練初回
 SLBと歩行器を貸し出す。
 階段の昇り練習に入る。
※ 階段の昇り練習は=片手で手すりをつかみ、他の手を介助する。手すりを持った側の足を一段上の階段に乗せる。上の段にある足を伸ばすことによって、階段を昇るように指導する。手すりを持つ手で引き上げないように…。
 手すりの高さは、子どもの臍から乳頭当たりが良い。
 真優美チャンの昇り方は、一段上に上げた足で身体を上げることができないためなのか、下にある足を急ぎ上に上げて、両足で段を昇るように見える。
→ 2週間後
 床からの立ち上がり方が良くなっている。立ち上がってから、身体の重心が垂直から若干の前方となっている。
 独歩を数歩行うが、立ち止まることもできないので、後方に倒れる。
 歩行器を押して歩くことがうまくなっている。それでも、歩行器の操作がうまくいかずに、方向転換ができていない。
 階段の昇りで、上に上げた足でもって昇るようになっている。下の足を急いで上げるようなことが無くなっている。
→ 1か月後
 持ち込み立位から、5m程独歩を行うようになる。
 歩行器の扱いがうまくなり、平坦な所では歩行器を操作して物に当たらずに歩いている。
→→ その2週間後
 今まで通っていた療育施設でPT訓練を受けに行った際、独歩が可能となっているので喜んでもらえたが、机を並べた所を机を抜けるように歩くことを支持され、机を避けて歩いていたが転倒することとなり、転倒した際に顔を机にぶつける結果となりました。
 転倒で怖くなったのか、独歩ができなくなりました。
 こんな状況で訓練を開始しましたが、歩行器で歩いてもらい、その後に介助にて独歩の練習に入りました。
 介助ながらも、独歩が10m程できました。
 療育施設での運動療法の施し方については、疑問と内容を疑いたくなります。
→ 3ヶ月後
 独歩で10m程歩けるが、下肢筋の耐久性が劣るために歩行距離が延びない。
 下肢筋の強化と耐久性アップのために、階段昇降の量を増やす。
→ 4ヶ月後
 床から立ち上がり、ゆっくりと左右に足下がふらつきながらも20m程歩くようになる。
 階段の昇りで、片手手すり使用、他の手を軽く介助して交互に段を昇るようになる。右手で手すりを持つ方が登りやすい。
 下肢の支持性をアップするためと、立位と歩行のバランスを改善するために、左手で手すりを使用して、右手をあまり介助しないで、階段の昇り練習に入る。
→ 8か月後
 独歩練習を継続してきていたが、歩行時の重心位置が前方に行かないのか…? 重心の位置が後方のために、歩幅が広がらず、補用も安定しないのか…?
 独歩練習と歩行器歩行を行って来ていたが、松葉杖歩行に切り替えるのが重心を変えるには都合よいと…
 立位や歩行の際に、重心が後方のご学習は訂正しにくい実例の一つとなってしまった。
→ 1年1カ月後
 松葉杖歩行練習を行ってきたが、歩幅も広がり歩行バランスも改善している!
 階段昇降も改善しており、片手手すり使用で交互に登れるようになっている! 降りは片手手すり使用で交互に降りられるが、時にはバランスを崩している。
→ 1年3か月後
 体力がついてきているのか、歩行距離が伸びた!
 歩行や軽いジョギングが行えるようになる!
 残りは応用歩行・・。
→ 1年5カ月後
 コロナのために会う事もできずに、メールでの連絡ですが・・・
 物に掴まって立ち上がる事もありますが、家庭内では立ち・歩いての生活となりました!
 素足で歩くので、外反偏平足が気になります。
 外反偏平足を考え、家庭内で履く下肢装具の作成を考える。
# コロナ騒動で2カ月ほどお会いしていないが、家庭で親子して頑張っていたもよう!
→ 1年11カ月後
 外反扁平足が気になるだけで、他の点については応用歩行を含みほとんど問題が無くなった!
 訓練を卒業して、今後は身体の状態を診るだけとする。
→→ その1週間後
 来春に外反扁平足の手術をすることに決まる。左右の足を順番に行う。春休みと、夏休みを予定。
→ 2年3カ月後
 右足の外反扁平を修正する手術を受ける。
→→ その16日後
 ぎぶす固定のまま退院。
 下肢筋の衰えを予防するために、膝立ちと膝歩きを行うように指示する。独歩が可能となっているので、指示できた。
→ 2年4カ月後(術後6週間)
 ギブスカットを終えて、下肢に加重負荷可能となる。
 独歩はできないとの事なので、介助歩行から入る。
 子どもの右側に介助者が位置し、子どもの右手をつないで介助に当たり、子どもの右側を子どもの歩きに合わせて歩く。子どもが右足で体重を支える時に、支えられないので介助者に負担が多くかかるが、それを徐々に少なくしていく。
→ 2年7カ月後
 前回の術後の運動機能もずいぶん回復したので、左偏平足改善のために手術を受ける。
→ 3年後
 2度の手術後の訓練もほぼ終えて、歩容は改善し、歩行距離もずいぶんと伸びた!
 応用歩行と、実践での歩行練習を期待したい。
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◎ 指導する者からの期待と希望
 発病後1年10か月(3歳)頃までの発達は順調のようですが、四つ這いを開始してからの発達が遅いのでは…
 1歳2か月での脳症、歩行を開始していたかも知れませんが、発病後に運動療法によってリハビリテーションではなく、ハビリテーションを行うことを怠ったのでは…?
 平行棒やPCWでの歩行練習、この指導法に何かの間違いがあったのでは…
 発病後から年数を経ていますが、この子どもならば運動機能が改善できるかと考え、訓練を開始しました。
・ 訓練開始2週間で、立位や歩行のバランスが大きく変化している。
・ 訓練開始の1か月で、少しだが独歩が可能となりました。
・ 筋の耐久性が乏しく、杖歩行や独歩の距離が延びない子どもは多々見られます。年齢が高くなっているときなどでは、耐久性を上げることができずに歩行距離が延びないことも起きています。
・ 訓練開始1年3か月で、車椅子の生活から二足歩行の生活になる事ができたのか?!!
 どんな段差でも・階段でも、どんな悪路でも二足歩行ができるようになって欲しい。
・ 発病後1年10カ月頃から運動機能が停滞していたのでは? それから4年の停滞時期を挟んで、新たな訓練に取り組み2年を待たずにほぼ訓練を終了!
 3歳からの停滞時期が無ければ、就学以前に独歩を獲得していたのでは?
・ 両足の偏平足によって、歩行能力が上がるに従い足部の疼痛を訴える様になり、整形外科での手術となった。
 術後の回復の様子を早く見たいものです。
・ 術後の経過も良く、応用歩行を含む実践での体験と経験を積んで欲しい。

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  製作 LS-CC松葉杖訓練法 湯澤廣美